第51話「鑑定の結果」
マランの世界、毎日投稿中です。
当面、数話を連続投稿の予定です。
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翌朝、六人は、アプレイザルの窓口に向かった。
「あの爪、見てもらうか」
カインが言うと、誰も反対しなかった。
「ブロムさんに、見てもらう案もあったけど」
ダダが、思い出したように言う。
「装備品としての効果なら、こっちが専門だろうしな」
カインが、答えた。
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窓口に、爪の装具を差し出す。
鑑定士が、それを手に取り、じっと見つめた。
「これは……珍しいものを、持ち込まれましたね」
鑑定士が、静かに言う。
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「珍しい、というと」
カインが、身を乗り出す。
「少々、お待ちを」
鑑定士が、装具を、専用の台座に置く。
淡い光が、装具全体を包み込んだ。
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しばらくして、光が収まる。
「結果、出ました」
鑑定士が、記録紙を、皆に見せる。
「特殊効果と、強化効果、両方、確認されています」
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「特殊効果?」
ネリスが、聞き返す。
「はい。それに、装備できる条件が、かなり限定されています」
鑑定士が、記録紙を、指でなぞりながら続けた。
「斥候の職に就いている、獣人族の方限定、と出ています」
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六人の視線が、自然と、ネリスに集まった。
「私、じゃないか」
ネリスが、少し驚いたように言う。
「斥候で、獣人族。ぴったりだな」
ダダが、感心したように言った。
「他に、条件に合う人、いないもんな」
ノリアが、頷きながら言う。
「私しか、使えない、ってことか」
ネリスが、装具を、じっと見つめる。
その声には、少しの戸惑いが、混じっていた。
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「効果の詳細、もう少し、聞けますか」
カインが、鑑定士に聞く。
「今、確認できているのは、ここまでです」
鑑定士が、静かに答える。
「実際に装備して、使ってみないと、わからない部分もあります」
「わかる範囲だけで、十分です」
カインが、頷いた。
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「強化効果については、通常の鋼の爪より、切れ味と耐久が、両方とも上がっています」
鑑定士が、記録紙を、指で示しながら言う。
「特殊効果の方は、断定はできませんが、何らかの探知系の能力が、付与されている可能性があります」
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「探知系?」
ネリスが、聞き返す。
「はっきりとは、言えません」
鑑定士が、慎重に言葉を選ぶ。
「装具から、微弱ながら、アルカナ系の魔力反応が、検出されています。ただ、どういう形で発動するかは、実際に試していただくしかありません」
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「わかりました。ありがとうございます」
カインが、頭を下げる。
「ネリス、つけてみるか」
「つけてみる」
ネリスが、静かに頷いた。
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アプレイザルを出て、六層へと向かう。
門をくぐり、慣れた通路を進んでいく。
「早く、試したいな」
ノリアが、少し弾んだ声で言う。
「焦らない。まずは、安全な場所で」
ネリスが、静かに答えた。
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六層前室に着くと、ネリスが、装具を、そっと自分の手にはめる。
冷たい金属の感触が、指先に伝わった。
「重さ、ちょうどいい」
ネリスが、指を、何度か曲げ伸ばしする。
「馴染む、な」
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「試してみるか」
カインが、周囲を見回す。
近くの通路の壁を、ネリスが、爪の先で、軽く叩いてみた。
かつん、という、乾いた音が響く。
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その瞬間、ネリスの視界に、うっすらとした光の線が、浮かび上がった。
「……見える」
ネリスが、目を見開く。
「何が?」
カインが、聞く。
「壁の向こう。細い、糸みたいな線が、光って見える」
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「罠の、糸か?」
ダダが、身を乗り出す。
「たぶん。今まで、指先の感触だけで探ってたのが、目で見えるようになってる」
ネリスが、驚いたように、壁を見つめ続けた。
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「もう一回、試してみるか」
カインが言う。
ネリスが、少し離れた場所の、床を、爪の先で叩く。
同じように、光の線が、うっすらと浮かび上がった。
「見える」
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「宝箱でも、試してみたいな」
ダダが、言う。
「ちょうど、前に見つけた、古い宝箱の跡地、近くにあったよな」
カインが、思い出したように言う。
以前、罠を確かめるのに苦労した、あの小さな空き部屋へと向かう。
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新しく見つけた、別の宝箱を前に、ネリスが、爪の先で、そっと蓋を叩いた。
かつん、という音とともに、蓋の縁に沿って、うっすらとした光の線が浮かび上がる。
「これも、見える」
ネリスが、静かに言う。
「今までなら、指先の感触だけが頼りだったのに」
「壁だけじゃなくて、宝箱にも、使えるんだな」
カインが、感心したように言った。
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「これ、透視の魔法じゃないか」
ミラが、静かに言う。
「アルカナ系の、第二階梯」
「透視?」
ネリスが、聞き返す。
「見えないものを、見えるようにする呪文。私は使えないけど、名前だけは知ってる」
ミラが、答えた。
「かなり、上位の呪文だって聞いたことがある」
カインが、驚いたように付け加える。
「僧侶系のノストスにも、似たような効果の階梯があるけど、こっちはアルカナ系独自の呪文だったはず」
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「爪が、その呪文を、代わりに発動させてる、ってことか」
カインが、腕を組む。
「たぶん、そういうことだと思う」
ミラが、頷いた。
「私、呪文なんて、使ったことないのに」
ネリスが、自分の手を、じっと見つめる。
「装具の力、ってことなんだろうな」
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「便利すぎないか、これ」
ノリアが、少し興奮した声で言う。
「罠、全部、目で見えるようになるってことだろ」
「たぶん、そう都合よくは、いかないと思う」
ネリスが、冷静に言う。
「試してみないと、わからないけど」
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しばらく、通路のあちこちを、爪で叩いて回る。
三度目までは、同じように光の線が見えた。
一度目は、天井近くの、細い糸。
二度目は、床の継ぎ目に隠れた、小さな金具。
三度目は、壁の奥に仕込まれた、圧力式の仕掛け。
いずれも、これまでなら、じっくり時間をかけて探らないと、見つけられなかったものだった。
だが、四度目、爪を壁に当てても、何も起こらなかった。
「あれ」
ネリスが、首をかしげる。
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「見えない」
「回数、制限あるのかもな」
ダダが、静かに言う。
「たぶん、そう。三回までは、使えた」
ネリスが、爪を見つめながら言う。
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「時間が経てば、また使えるようになるのか、それとも一日ごとなのか」
カインが、聞く。
「わからない。今日は、もう使えないかもしれない」
ネリスが、正直に答えた。
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「無制限じゃない、ってわかっただけでも、収穫だな」
ダダが、静かに言う。
「収穫。使いどころ、考えないとな」
ネリスが、頷いた。
「本当に危ない場所を見極める時に、取っておく感じか」
カインが、答える。
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「アーカイブに、また、報告しに行くか」
ダダが、聞く。
「行こう。回数制限のことも、含めて」
ネリスが、頷いた。
「ティリーさん、喜びそうだな」
カインが、笑いながら言った。
「窪みの謎に続いて、また新しい記録が増えるな」
ミラが、静かに微笑んだ。
「私の爪のこと、少しずつ、わかってきた気がする」
ネリスが、装具を、そっと撫でながら言う。
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「今日は、この爪の使い方、覚えるだけで、十分な収穫だな」
カインが、皆を見回す。
「十分な収穫」
六人の声が、揃った。
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夕暮れの光が、六層前室に、差し込んでいた。
ネリスは、自分の手にはまった、見慣れない爪を、もう一度、そっと見つめた。
「私だけが、使える力、か」
その呟きには、戸惑いと、わずかな誇らしさが、同居していた。
新しい力の使い道は、これから、少しずつ、見つけていくことになりそうだった。
いかがでしょうか?
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