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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第51話「鑑定の結果」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、アプレイザルの窓口に向かった。


「あの爪、見てもらうか」


カインが言うと、誰も反対しなかった。


「ブロムさんに、見てもらう案もあったけど」


ダダが、思い出したように言う。


「装備品としての効果なら、こっちが専門だろうしな」


カインが、答えた。


---


窓口に、爪の装具を差し出す。


鑑定士が、それを手に取り、じっと見つめた。


「これは……珍しいものを、持ち込まれましたね」


鑑定士が、静かに言う。


---


「珍しい、というと」


カインが、身を乗り出す。


「少々、お待ちを」


鑑定士が、装具を、専用の台座に置く。


淡い光が、装具全体を包み込んだ。


---


しばらくして、光が収まる。


「結果、出ました」


鑑定士が、記録紙を、皆に見せる。


「特殊効果と、強化効果、両方、確認されています」


---


「特殊効果?」


ネリスが、聞き返す。


「はい。それに、装備できる条件が、かなり限定されています」


鑑定士が、記録紙を、指でなぞりながら続けた。


「斥候の職に就いている、獣人族の方限定、と出ています」


---


六人の視線が、自然と、ネリスに集まった。


「私、じゃないか」


ネリスが、少し驚いたように言う。


「斥候で、獣人族。ぴったりだな」


ダダが、感心したように言った。


「他に、条件に合う人、いないもんな」


ノリアが、頷きながら言う。


「私しか、使えない、ってことか」


ネリスが、装具を、じっと見つめる。


その声には、少しの戸惑いが、混じっていた。


---


「効果の詳細、もう少し、聞けますか」


カインが、鑑定士に聞く。


「今、確認できているのは、ここまでです」


鑑定士が、静かに答える。


「実際に装備して、使ってみないと、わからない部分もあります」


「わかる範囲だけで、十分です」


カインが、頷いた。


---


「強化効果については、通常の鋼の爪より、切れ味と耐久が、両方とも上がっています」


鑑定士が、記録紙を、指で示しながら言う。


「特殊効果の方は、断定はできませんが、何らかの探知系の能力が、付与されている可能性があります」


---


「探知系?」


ネリスが、聞き返す。


「はっきりとは、言えません」


鑑定士が、慎重に言葉を選ぶ。


「装具から、微弱ながら、アルカナ系の魔力反応が、検出されています。ただ、どういう形で発動するかは、実際に試していただくしかありません」


---


「わかりました。ありがとうございます」


カインが、頭を下げる。


「ネリス、つけてみるか」


「つけてみる」


ネリスが、静かに頷いた。


---


アプレイザルを出て、六層へと向かう。


門をくぐり、慣れた通路を進んでいく。


「早く、試したいな」


ノリアが、少し弾んだ声で言う。


「焦らない。まずは、安全な場所で」


ネリスが、静かに答えた。


---


六層前室に着くと、ネリスが、装具を、そっと自分の手にはめる。


冷たい金属の感触が、指先に伝わった。


「重さ、ちょうどいい」


ネリスが、指を、何度か曲げ伸ばしする。


「馴染む、な」


---


「試してみるか」


カインが、周囲を見回す。


近くの通路の壁を、ネリスが、爪の先で、軽く叩いてみた。


かつん、という、乾いた音が響く。


---


その瞬間、ネリスの視界に、うっすらとした光の線が、浮かび上がった。


「……見える」


ネリスが、目を見開く。


「何が?」


カインが、聞く。


「壁の向こう。細い、糸みたいな線が、光って見える」


---


「罠の、糸か?」


ダダが、身を乗り出す。


「たぶん。今まで、指先の感触だけで探ってたのが、目で見えるようになってる」


ネリスが、驚いたように、壁を見つめ続けた。


---


「もう一回、試してみるか」


カインが言う。


ネリスが、少し離れた場所の、床を、爪の先で叩く。


同じように、光の線が、うっすらと浮かび上がった。


「見える」


---


「宝箱でも、試してみたいな」


ダダが、言う。


「ちょうど、前に見つけた、古い宝箱の跡地、近くにあったよな」


カインが、思い出したように言う。


以前、罠を確かめるのに苦労した、あの小さな空き部屋へと向かう。


---


新しく見つけた、別の宝箱を前に、ネリスが、爪の先で、そっと蓋を叩いた。


かつん、という音とともに、蓋の縁に沿って、うっすらとした光の線が浮かび上がる。


「これも、見える」


ネリスが、静かに言う。


「今までなら、指先の感触だけが頼りだったのに」


「壁だけじゃなくて、宝箱にも、使えるんだな」


カインが、感心したように言った。


---


「これ、透視の魔法じゃないか」


ミラが、静かに言う。


「アルカナ系の、第二階梯」


「透視?」


ネリスが、聞き返す。


「見えないものを、見えるようにする呪文。私は使えないけど、名前だけは知ってる」


ミラが、答えた。


「かなり、上位の呪文だって聞いたことがある」


カインが、驚いたように付け加える。


「僧侶系のノストスにも、似たような効果の階梯があるけど、こっちはアルカナ系独自の呪文だったはず」


---


「爪が、その呪文を、代わりに発動させてる、ってことか」


カインが、腕を組む。


「たぶん、そういうことだと思う」


ミラが、頷いた。


「私、呪文なんて、使ったことないのに」


ネリスが、自分の手を、じっと見つめる。


「装具の力、ってことなんだろうな」


---


「便利すぎないか、これ」


ノリアが、少し興奮した声で言う。


「罠、全部、目で見えるようになるってことだろ」


「たぶん、そう都合よくは、いかないと思う」


ネリスが、冷静に言う。


「試してみないと、わからないけど」


---


しばらく、通路のあちこちを、爪で叩いて回る。


三度目までは、同じように光の線が見えた。


一度目は、天井近くの、細い糸。


二度目は、床の継ぎ目に隠れた、小さな金具。


三度目は、壁の奥に仕込まれた、圧力式の仕掛け。


いずれも、これまでなら、じっくり時間をかけて探らないと、見つけられなかったものだった。


だが、四度目、爪を壁に当てても、何も起こらなかった。


「あれ」


ネリスが、首をかしげる。


---


「見えない」


「回数、制限あるのかもな」


ダダが、静かに言う。


「たぶん、そう。三回までは、使えた」


ネリスが、爪を見つめながら言う。


---


「時間が経てば、また使えるようになるのか、それとも一日ごとなのか」


カインが、聞く。


「わからない。今日は、もう使えないかもしれない」


ネリスが、正直に答えた。


---


「無制限じゃない、ってわかっただけでも、収穫だな」


ダダが、静かに言う。


「収穫。使いどころ、考えないとな」


ネリスが、頷いた。


「本当に危ない場所を見極める時に、取っておく感じか」


カインが、答える。


---


「アーカイブに、また、報告しに行くか」


ダダが、聞く。


「行こう。回数制限のことも、含めて」


ネリスが、頷いた。


「ティリーさん、喜びそうだな」


カインが、笑いながら言った。


「窪みの謎に続いて、また新しい記録が増えるな」


ミラが、静かに微笑んだ。


「私の爪のこと、少しずつ、わかってきた気がする」


ネリスが、装具を、そっと撫でながら言う。


---


「今日は、この爪の使い方、覚えるだけで、十分な収穫だな」


カインが、皆を見回す。


「十分な収穫」


六人の声が、揃った。


---


夕暮れの光が、六層前室に、差し込んでいた。


ネリスは、自分の手にはまった、見慣れない爪を、もう一度、そっと見つめた。


「私だけが、使える力、か」


その呟きには、戸惑いと、わずかな誇らしさが、同居していた。


新しい力の使い道は、これから、少しずつ、見つけていくことになりそうだった。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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