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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第50話「鍵穴のない扉、開く」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、ペンダントを手に、七層のあの扉へと向かった。


「今日こそ、決着つけような」


カインの声に、これまでにない張りがあった。


「つけよう」


ダダが、短く応じる。


---


深廊の通路を、慣れた足取りで進む。


七層への階段を降り、見慣れた分岐を、迷いなく越えていく。


「もうすぐだ」


ネリスが、耳を澄ませながら言う。


---


大きな扉の前に立つと、六人の間に、自然と緊張が走った。


「これで、開かなかったら、また振り出しだな」


ノリアが、少し不安げに言う。


「開く。絶対、開く」


ダダが、静かに、だが確かな口調で答えた。


「俺が!」


ダダが、そっと、ペンダントを受け取る。


窪みの前に、ペンダントの先端を、慎重にかざした。


---


「合わせて、みる」


ダダが、いびつな形の飾りを、窪みへと、ゆっくり近づけていく。


六人の視線が、その一点に、集まっていた。


かちり、と、小さな音がした。


「入った」


ダダの声が、掠れる。


---


窪みに、ペンダントの先端が、ぴたりと収まっていた。


「回すのか、押すのか」


カインが、聞く。


「わからない。とりあえず、押してみる」


ダダが、そっと、力を込めた。


---


低い、地鳴りのような音が、扉の奥から響いてくる。


石の扉が、少しずつ、ゆっくりと、横に動き始めた。


「開いた!」


ノリアが、思わず、声を上げる。


「開いた……本当に、開いた」


ネリスが、扉を見つめたまま、呟いた。


---


「やったな」


カインが、笑顔で、皆を見回す。


「やった!」


六人の声が、揃った。


その声には、これまでにない、確かな達成感があった。


---


扉の奥には、下りの階段が続いていた。


「あれが……八層への、階段か」


カインが、階段を覗き込みながら言う。


「ずいぶん、待たされたな」


ダダが、感慨深そうに言った。


---


「今日は、まず、様子見でいいと思う」


ミラが、慎重な口調で言う。


「賛成。無理はしない」


カインが、頷いた。


「行くぞ」


六人は、慎重に、階段を降り始めた。


---


八層は、これまでのどの階層よりも、空気が違っていた。


肌に感じる冷たさが、一段と増している。


「寒い、な」


ノリアが、腕をさすりながら言う。


「気配、変わった」


ネリスが、耳を伏せながら、周囲を確かめる。


壁の石組みも、これまでとは、色合いが違って見えた。


灰色がかった石に、薄っすらと、青みがかった模様が浮かんでいる。


「壁の色まで、違うんだな」


ダダが、壁に触れながら、呟いた。


「本当に、新しい階層に、来たんだな」


カインが、実感を噛み締めるように言った。


---


「一体ずつ、確実に進む」


カインが、指示を出す。


「今日は、無理しない」


ダダが、頷く。


「無理しない。でも、様子は、しっかり見る」


その言葉に、六人が、揃って頷いた。


---


しばらく進むと、通路の先に、複数の気配が感じられた。


「来る」


ネリスの声に、六人が身構える。


暗がりの奥から、鎧のような外皮を持つ、二足歩行の魔物が、数体、姿を現した。


「あれは、初めて見る型だな」


カインが、目を細めながら言う。


「動き、読めるか」


「まだ、わからない。慎重に」


ネリスが、静かに答えた。


---


「型、いつも通りで」


カインが、短く指示を出す。


「ダダ、前へ」


「了解!」


ダダが、盾を構えて踏み込む。


---


魔物の一撃を、盾で受け止める。


「重いが、耐えられる範囲だ」


ダダが、静かに言う。


「ワング、右!」


「承知!」


ワングが、素早く回り込み、刀を振るう。


---


「硬さは、そこまでじゃない」


ワングが、刃を返しながら言う。


「これまでの、七層の敵と、同じくらいか」


カインが、剣を構えて、踏み込んだ。


一体を、正面から、斬り伏せる。


「案外、いける」


カインが、少し安堵したように言った。


---


ネリスとミラが、左右から、残る魔物へと回り込む。


爪と鎖が、それぞれの間合いで、正確に急所を捉えた。


「終わった」


カインが、剣を納めながら言う。


「今日も、大きな怪我、なし」


ミラが、素早く皆を見回しながら、頷いた。


---


「八層、思ったより、戦える相手だな」


ダダが、盾を担ぎ直しながら言う。


「窪みの扉を、越えたご褒美、かもな」


カインが、笑いながら答えた。


---


魔石を回収しながら、さらに奥へと進む。


通路の先に、小さな窪んだ空間があり、その中に、木箱が一つ、静かに置かれていた。


「宝箱、か」


カインが、目を見開く。


「罠、確かめる」


ネリスが、慎重に、箱の周囲を調べていく。


---


「罠、なさそう」


ネリスが、静かに言う。


「開けるぞ」


カインが、蓋に手をかける。


ゆっくりと、持ち上げた。


---


中から、鈍い光を放つ魔石と、鋭い爪の形をした、金属の装具が、姿を現した。


「これ……」


ネリスが、身を乗り出す。


「爪、みたいなやつだな」


ダダが、覗き込みながら言う。


---


ネリスが、自分の手にはめた鋼の爪と、箱の中の装具を、並べて見比べる。


「似てる、けど、違う」


ネリスが、静かに言う。


「どこが」


カインが、聞く。


「刃の反り方が、違う。それに、こっちの方が、少し、重そう」


---


「同じ武器種、でも、別物ってことか」


ダダが、腕を組む。


「私のとは、作りが、明らかに違う」


ネリスが、装具を、そっと手に取る。


冷たい金属の感触が、指先に伝わった。


「柄の部分の、模様も、少し違う気がする」


ネリスが、目を細めながら、装具を、光にかざす。


「私のものは、もっと、シンプルな作り。こっちは、細かい細工が、入ってる」


「高級品、ってことか」


ノリアが、覗き込みながら言う。


「それとも、別の系統の、爪なのか」


ネリスが、首をかしげた。


---


「使えそうか」


カインが、聞く。


「わからない。今の私の爪と、相性がいいのか、悪いのか」


ネリスが、正直に答える。


「無理に、今つけてみるのは、危ない」


ミラが、慎重に、口を挟んだ。


---


「持ち帰って、調べるか」


カインが、提案する。


「賛成。ブロムさんか、アーカイブか、どっちかで見てもらおう」


ダダが、頷いた。


「私の爪のこと、詳しく知ってる人に、見てほしい」


ネリスが、静かに言った。


---


「今日は、ここまでにしとくか」


カインが、周囲を見渡しながら言う。


「賛成。初日から、飛ばしすぎるのも、よくない」


ダダが、答えた。


---


装具と魔石を、丁寧に袋にしまい、六人は、来た道を戻り始めた。


八層の階段を登り、七層の通路を抜け、篝火の灯る六層前室に戻ると、ようやく肩の力が抜けた。


「今日は、大きな一日だったな」


カインが、皆を見回す。


「大きな一日」


六人の声が、揃った。


---


「窪みの扉、開いて、八層まで来られて、しかも、こんな拾い物まで」


ノリアが、感慨深そうに言う。


「良い流れだな」


カインが、笑いながら答える。


「良い流れ。でも、油断はしない」


ネリスが、静かに、付け加えた。


「振り返れば、長かったな」


ダダが、しみじみと言う。


「窪み見つけてから、鍵探して、ゴーレム倒して、やっと今日」


「長かった分、開いた時の達成感、すごかった」


ミラが、微笑みながら言った。


「拙者も、あの音、忘れぬでござろう」


ワングが、静かに頷いた。


---


夕暮れの光が、通路の入り口から、差し込んでいた。


六人は、その光に向かって、静かに歩き出した。


手の中の、見慣れない爪の装具が、わずかに、光を反射していた。


一つの謎が解けた日に、また一つ、新しい謎が、静かに加わっていた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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