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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第49話「小部屋の主」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、六層で手に入れた鍵を手に、七層へと向かった。


「今日こそ、開けような」


カインの声に、いつもの落ち着きがあった。


「開けよう」


ダダが、短く応じる。


---


深廊の通路を、慣れた足取りで進む。


七層へ降り、あの狭い脇道を、迷いなく進んでいく。


「もうすぐだ」


ネリスが、耳を澄ませながら言う。


---


小さな扉の前に立つと、六人の間に、自然と緊張が走った。


「やってみるか」


カインが、鍵を取り出す。


「俺が」


ダダが、そっと、鍵を受け取った。


「開けたら、すぐ、中に何かいるかもしれない」


ネリスが、静かに、皆に注意を促す。


「わかってる。慎重に行く」


カインが、剣の柄に、手をかけた。


---


鍵穴に、そっと差し込む。


わずかな抵抗のあと、すっと入る。


「入った」


ダダの声が、掠れる。


「回すぞ」


---


ゆっくりと、鍵が回る。


がちゃり、という、はっきりとした音とともに、扉が、わずかに緩んだ。


「開いた!」


ノリアが、思わず、声を上げる。


「開いた、な」


カインが、静かに、だが確かな声で言った。


---


「気配、確かめる」


ネリスが、扉に耳を寄せる。


「……いる。何か、いる」


「強そうか」


カインが、聞く。


「わからない。でも、動いてない」


ネリスが、静かに答えた。


「他のパーティ、七層まで来てたって話だったけど」


ダダが、扉を見つめながら呟く。


「この部屋、誰にも、開けられてなかったんだな」


「鍵、持ってなかったんだろうか?」


カインが、答える。


「六層まで戻って、あの敵を倒さないと、手に入らない鍵だったし」


「いや、鍵が一つとは限らない」


ノリアが、呟いた。


「まあ、ここまで来たんだ。気を引き締めて行こう」


ネリスが、静かに言った。


---


「慎重に、行くぞ」


カインが、扉に手をかける。


ゆっくりと、押し開いた。


---


部屋の中は、これまでの通路とは違い、石造りの、四角い空間だった。


中央に、人の背丈の倍はある、石の巨像が、静かに佇んでいる。


「あれは」


ダダが、声を潜める。


「ゴーレムか」


カインが、剣の柄に、手をかけた。


---


六人が足を踏み入れた瞬間、石の巨像の、目の部分に、赤い光が灯った。


「動いた!」


ネリスが、叫ぶ。


巨像が、重い音を立てながら、ゆっくりと、体を起こした。


その動きは、これまでのモンスターとは、明らかに違っていた。


一つ一つの動作が重く、そのぶん、力も、桁違いに感じられた。


「守り手、ってやつか」


カインが、剣を構える。


「鍵を、開けさせないための、番人か」


ダダが、盾を構えながら答える。


「もう、開けちゃったけどな」


ノリアが、少し緊張した声で言った。


「今さら、遅い。やるしかない」


カインが、静かに、だが確かな声で答えた。


---


ゴーレムが、太い腕を、大きく振りかぶる。


「来る!」


ダダが、盾で、正面から受け止めた。


「重い! でも、耐えられる!」


ダダの声に、確かな粘りがあった。


---


「ワング、ノリア、右から!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ワングが、素早く回り込み、石の脚に、刀を叩き込む。


刃が、表面を、わずかに削るだけで、弾かれた。


「硬い、な」


---


「石だから、刃じゃ、通りにくいのか」


カインが、顔をしかめる。


「なら、打撃か!」


ミラが、フレイルを構え直す。


「ダダ、引きつけて!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ダダが、盾で、ゴーレムの正面に、回り込む。


大きな腕の一撃を、真正面から、受け止めた。


「重いが、耐えられる!」


---


「ミラ、頼む!」


カインが、叫ぶ。


「任せて!」


ミラが、鎖を伸ばし、フレイルの重みを乗せて、ゴーレムの膝に、叩き込んだ。


石の表面に、大きな亀裂が走る。


「効いてる!」


---


「関節、狙えるか」


カインが、ネリスに聞く。


「見てみる」


ネリスが、ゴーレムの動きを、じっと観察する。


「あそこ。首の付け根、継ぎ目がある」


---


「継ぎ目なら、いける!」


カインが、踏み込み、剣を、その一点に、深く突き刺した。


ゴーレムが、大きく、体を震わせる。


「もう一撃!」


---


「ワング、今!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ワングが、同じ継ぎ目に、刀を叩き込む。


石の破片が、大きく、飛び散った。


---


ゴーレムが、両腕を、大きく振り回す。


「散れ!」


カインの声に、六人が、一斉に散った。


腕が、床を叩き、石畳が、大きく砕けた。


---


「今だ、ミラ!」


カインが、叫ぶ。


「はい!」


ミラのフレイルが、亀裂の入った膝に、再び、叩き込まれる。


膝が、大きく、崩れた。


「膝、いった!」


---


体勢を崩したゴーレムに、六人が、一斉に、畳み掛ける。


「決める!」


カインが、剣を、首の継ぎ目へと、最後の力を込めて、突き刺した。


赤い光が、ふっと、消える。


ゴーレムが、ゆっくりと、崩れ落ちていった。


---


しばらく、誰も動かなかった。


「終わった……のか」


カインが、剣を支えに、呟く。


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、静かに頷いた。


「みんな、怪我は?」


ミラが、すぐに、確認に回る。


「大丈夫」


「大丈夫」


のこりの五人が、口々に答えた。


「石の巨体、初めて相手にしたけど、なんとかなったな」


ダダが、額の汗を拭いながら言う。


「打撃が、効くってわかったのが、大きかった」


ミラが、フレイルを、そっと下ろしながら答えた。


「拙者の刀では、正直、分が悪かったでござるな」


ワングが、苦笑しながら言う。


「刃物より、鈍器向きの相手、ってことか」


カインが、納得したように頷いた。


---


崩れたゴーレムの残骸の奥に、小さな木箱が、静かに置かれていた。


「宝箱、あったのか」


カインが、目を見開く。


「見張り番の、報酬みたいなものかもな」


ダダが、静かに言う。


---


「開けるぞ」


カインが、蓋に手をかける。


ゆっくりと、持ち上げた。


---


中から、細い鎖のついた、小さな金属のペンダントが、姿を現した。


先端には、丸くも四角くもない、いびつな形の飾りが、ついている。


「これ……」


ネリスが、息を呑む。


---


「あの窪みの、形」


ダダが、ペンダントを、そっと手に取る。


「似てる。というか、そのままだ」


「本当か」


カインが、身を乗り出す。


---


ペンダントの先端は、七層の扉の窪みと、驚くほど、よく似た形をしていた。


「地図に描いた形と、比べてみるか」


ダダが、袋から、窪みを写し取った紙を取り出す。


紙の上の輪郭と、ペンダントの飾りを、並べて見比べる。


「……合ってる、と思う」


ネリスが、指で、輪郭をなぞりながら言う。


「溝の位置まで、似てる」


「本当に、これじゃないか」


カインが、思わず、声を弾ませた。


「持って、行ってみるか」


ダダが、皆を見回す。


「行こう。でも、今日は、もう遅い」


カインが、外の光の具合を、確かめながら言う。


「明日、試そう」


---


「やっと、繋がりそうだな」


ネリスが、静かに笑う。


「窪みと、ペンダント」


「合うといいな」


ミラが、静かに言った。


その言葉に、六人は、揃って頷いた。


---


小部屋を出て、来た道を、六人は、ゆっくりと戻り始めた。


篝火の灯る六層前室に戻ると、ようやく肩の力が抜けた。


「今日は、大きな収穫だったな」


カインが、皆を見回す。


「大きな収穫」


六人の声が、揃った。


---


「明日、あの扉、試すか」


ダダが、聞く。


「試そう」


カインが、頷いた。


「今度こそ、開くといいな」


ノリアが、期待を隠さずに言う。


---


夕暮れの光が、通路の入り口から、差し込んでいた。


六人は、その光に向かって、静かに歩き出した。


手の中の、小さなペンダントが、わずかに、光を反射していた。


鍵のかかった小部屋も、石の番人も、もう、過去のことになった。


残るのは、あの窪みだけだった。


答えの一つに、今度こそ、手が届きそうだった。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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