第42話「万能士の道」
マランの世界、毎日投稿中です。
当面、数話を連続投稿の予定です。
本話はカインのお話。
お楽しみいただけましたら幸いです。
鑑定所からの帰り道、カインは、自分の右手を、じっと見つめていた。
レベル5。
万能士としては、悪くないペースだと言われた。
それでも、ダダやネリスのレベル7に比べれば、まだまだ、見劣りする数字だった。
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ワングが加わってから、カインは、時々、自分の立ち位置を、あらためて考えるようになっていた。
レベル13の侍。
第四階梯の呪文を操り、刺突の一撃で、戦況を決める。
その隣に立つと、自分の数字の小ささが、余計に際立つ気がした。
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(前は、この数字が、ただ悔しかったな)
カインは、静かに思う。
未選択のまま、レベル2で止まっていた頃。
鑑定士に「変わっていません」と言われるたび、何も言い返せなかった、あの頃。
今は、同じ数字を見ても、感じ方が、まるで違っていた。
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「便利屋」
その呼び名を、カインは、ずっと、自分から名乗ってきた。
剣術も、交渉も、罠解除も、荷物整理も、応急手当も、料理も、ひととおりできる。
だが、どれも、特化はしていない。
それが、コンプレックスだった時期もあった。
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万能士という、80年ぶりの希少なクラス。
それが、自分の中から現れた時、カインは、驚きよりも先に、こう思った。
(便利屋、が報われた)
何でもできることを、ずっと武器として使い倒してきた。
その積み重ねの先に、この職業があったのだと、今なら、そう思える。
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夕暮れのヘクサインで、カインは、一人、装備の手入れをしていた。
剣、革鎧、道具袋。
どれも、突出した性能はない。
だが、どれも、自分の手に馴染んでいた。
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「何、一人でにやついてる?」
声をかけてきたのは、ミラだった。
「にやついてないだろ」
「にやついてた」
ミラが、笑いながら、隣に座る。
「万能士として、これから、どうするか、考えてただけだ」
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「考えは、まとまった?」
ミラが、聞く。
「まとまってきた」
カインが、答える。
「俺は、多分、この先も、一つのことに特化することはない」
「それで、いいの?」
「いいと思ってる」
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「アルカナも、ノストスも、両方、少しずつ使える」
カインが、続ける。
「戦闘も、交渉も、道具の扱いも、それなりにできる」
「うん」
「これまでは、それを、中途半端だと思ってた時期もあった」
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「今は?」
ミラが、聞く。
「今は、違う」
カインが、静かに言う。
「六人、それぞれ、得意なことがある。ダダは盾、ネリスは索敵、ノリアは火力、ミラは回復、ワングは決め手」
指を折りながら、数える。
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「俺は、その全部に、少しずつ手が届く」
カインが、続ける。
「誰かが倒れかけた時、盾になれなくても、応急手当はできる。呪文が届かない時、剣で割り込める。誰かと誰かの間を、繋ぐことができる」
「繋ぐ、か」
ミラが、繰り返す。
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「万能士って、多分、そういう役目なんだと思う」
カインが、続ける。
「一番強い一撃を出すことじゃなくて、皆が、それぞれの得意なことをやりやすいように、隙間を埋める」
「それ、前から、やってたことじゃない」
ミラが、指摘する。
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「そうかもな」
カインが、笑う。
「便利屋の頃から、やってたことと、そんなに変わらないのかもしれない」
「じゃあ、何が変わったの」
ミラが、聞く。
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「前は、それしかできないことが、悔しかった」
カインが、少し考えてから、答える。
「今は、それこそが、俺のやり方だって、胸を張って言える」
その違いは、小さいようで、カインにとっては、とても大きかった。
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「レベルが、他の皆より低くても」
カインが、続ける。
「もう、それで、卑屈になったりしない」
「昔は、してた?」
「してた。かなり」
カインが、正直に認める。
その素直さに、ミラが、小さく笑った。
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「万能士として、これから、どう立ち回るか」
カインが、夕暮れの空を見上げながら、続ける。
「戦い方も、装備も、これから、もっと工夫できる余地がある」
「楽しそうだね」
ミラが、言う。
「楽しい」
カインが、即答する。
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「特化した力がないことを、弱点だと思ってた頃には、絶対に出なかった言葉だ」
カインが、静かに続ける。
「今は、これが、俺の武器だって、はっきり言える」
「良い顔してる、今」
ミラが、微笑む。
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「深廊、これからもっと厳しくなる」
カインが、真剣な声で言う。
「その中で、俺にしかできない繋ぎ方を、もっと見つけていきたい」
「見つかると思うよ」
ミラが、静かに言う。
「これまでも、ちゃんと、見つけてきたんだから」
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夕暮れの空が、少しずつ、藍色に変わっていく。
カインは、道具袋の中身を、もう一度、丁寧に確かめた。
剣、包帯、火打石、細々とした道具。
どれも、特別ではない。
だが、どれも、自分の手で選び、使い続けてきたものだった。
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通りがかったワングが、軽く会釈して、隣を通り過ぎようとした。
「ワング」
カインが、呼び止める。
「何でござる」
「あんたのレベル13、正直、羨ましいと思う時もある」
カインが、素直に言う。
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「拙者からすれば、その道具袋の中身の方が、よほど頼もしく見えるがな」
ワングが、静かに言う。
「拙者には、それだけの引き出しはない」
「引き出し、か」
カインが、繰り返す。
その一言が、今日、一番、しっくりときた気がした。
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(万能士は、何でも屋の延長でいい)
カインは、静かに、そう思う。
(一つに絞らないことが、俺の型だ)
その考えに、迷いはなかった。
これから先も、皆の間を繋ぎながら、自分にしかできない立ち回りを、探し続けていくつもりだった。
いかがでしょうか?
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