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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第38話「六人、正式に」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


ワング、正式なパーティメンバーになります!!

おめでとう!!


お楽しみいただけましたら幸いです。

六層前室の篝火を背に、カインが、皆を見回した。


「今日は、ここまでにしよう」


「賛成」


ダダが、頷く。


石板に触れ、視界が白く染まる。


気づけば、一層の隠し部屋だった。


---


門をくぐり、ギルド本部へと向かう道すがら、カインが、ふと切り出した。


「そろそろ、正式に、頼まないか」


「正式に、というと」


ワングが、聞き返す。


「六人目として。ちゃんと、手続きも含めて」


---


「拙者で、よろしいのか」


ワングの声に、まだ、迷いが残っていた。


「今日の戦いぶり、見ただろ」


ダダが、静かに言う。


「もう、十分すぎるくらいだ」


「まだ、片手での動きに、慣れきったとは言えぬ」


ワングが、慎重に言う。


「慣れながらでいいんです」


ネリスが、横から言う。


「私たちだって、最初から、うまくできてたわけじゃない」


---


「片腕でも」


ワングが、なおも言いかける。


「片腕でも、じゃない」


ミラが、遮るように言う。


「片腕の、あなたが、今日、私たちを何度も助けてくれた。それだけです」


「グラヴォルの一撃も、女王の止めも、あんたの一手だった」


ダダが、続ける。


「戦力として、疑う余地はない」


---


ワングが、しばらく、黙っていた。


夕暮れの道を、しばらく無言で歩く。


「かたじけない」


やがて、深く、頭を下げた。


「あらためて、よろしく頼む」


「よろしく」


六人が、順に、頷き合った。


「もう一つ、聞いてもいいか」


ワングが、顔を上げる。


「何かある?」


カインが、笑いながら言う。


「なぜ、拙者を、選んだ?」


「強いから、ってだけじゃない」


カインが、少し考えてから答える。


「申し訳なさそうにしてるのに、それでも来てくれた。その姿勢が、良かった」


その言葉に、ワングは、それ以上、何も聞かなかった。


---


クロスロードの窓口に、リゼットが座っていた。


「今日は、何の御用です?」


「パーティ登録の、変更をお願いしたくて」


カインが、書類を差し出す。


---


「六人目、決まったんですね」


リゼットが、書類に目を通しながら言う。


「ワングさん・・・、と。ご本人の署名は?」


「ここに」


ワングが、慣れない様子で、羽根ペンを持つ。


左手だけで、丁寧に、名前を書き込んだ。


「見事な字ですね」


リゼットが、素直に言う。


「利き手ではないのに」


「以前から、両利きになるよう、鍛えていた」


ワングが、静かに答える。


「まさか、こんな形で、役に立つとは思わなかったが」


---


「登録、完了しました」


リゼットが、判を押す。


「カイン一行、正式に六人パーティです」


その一言に、六人の間に、静かな高揚が広がった。


「六人か」


ダダが、噛みしめるように呟く。


「六人の壁、って言葉、これで少し、違う意味に聞こえるな」


カインが、笑いながら言った。


「上限まで、埋まったわけですね」


リゼットが、書類を片付けながら言う。


「これで、七人目は、いないってことですか」


ネリスが、聞く。


「規則上は、そうなります」


リゼットが、答える。


「六人が、上限です」


---


「せっかくなので」


ミラが、提案する。


「アプレイザルで、みんなのレベル、確認しませんか。ワングさんも、一緒に」


「賛成」


ノリアが、頷く。


---


アプレイザルの窓口には、いつもの鑑定士がいた。


「また皆さんで……お?今日は、お一人、増えてますね」


鑑定士が、ワングを見て、目を細める。


「六人目です」


カインが、答える。


---


まず、ダダから。


台に手を乗せると、光が灯る。


「盾役、レベル7ですね」


「7、か」


ダダが、静かに頷く。


「深廊、効いてるみたいだな」


---


次、ネリス。


「斥候、レベル7」


「7!」


ネリスが、軽く跳ねる。


「跳ねなくていい」


ダダが、すかさず釘を刺す。


「跳ねたくもなる、これくらいは」


いつものやり取りに、六人の口元が緩んだ。


---


「魔術師、ノリアさん」


呼ばれて、ノリアが台の前に立つ。


「レベル6ですね」


「6、上がった」


ノリアが、静かに頷く。


「習得呪文の使用回数も、全体的に増えています」


鑑定士が、続ける。


「新しい階梯には、まだ届いていませんが、着実に、積み上がっています」


「着実で、十分」


ノリアが、短く答えた。


---


「次、カインさん」


呼ばれて、カインが台の前に立つ。


しばらくして、鑑定士が、顔を上げた。


「レベル5ですね」


「5……上がったのか」


カインが、少し驚いたように言う。


「万能士にしては、良いペースだと思います」


「アルカナ・ノストス、両系統の呪文の使用回数も、それぞれ増えていますが、新しい階梯には、まだ届いていません」


鑑定士が、続ける。


「侍や君主のような、前衛と魔法を兼ねる職業は、純粋な魔法職より、階梯の進みがずっと遅いんです。次の階梯は、レベル6か7あたりが目安になるかと」


「侍と、同じ道か」


カインが、ワングをちらりと見て、笑う。


「悪くない」


「着実に、だな」


カインが、満足そうに頷いた。


---


「次、ミラさん」


呼ばれて、ミラが台に手を乗せる。


「レベル9ですね」


「9……また、上がった」


ミラが、静かに驚く。


---


「それと」


鑑定士が、紙を見つめたまま、言葉を続ける。


「第四階梯に、到達しています」


「第四階梯……」


ミラが、思わず自分の手を見つめる。


「本当に、ですか」


「本当です。習得呪文は、蘇生の祈り」


---


その名前に、卓の空気が、一瞬、変わった。


「蘇生の……」


ミラが、声を詰まらせる。


「使用回数は、まだ1回きりです」


鑑定士が、静かに付け加える。


「成功率も、高くはありません。過信は、しないでください」


「わかって、います」


ミラが、静かに頷く。


その表情には、喜びと、それだけでは片付かない何かが、同時に浮かんでいた。


---


「大丈夫か、ミラ」


カインが、そっと聞く。


「大丈夫。ただ……」


ミラが、言葉を選ぶ。


「持っているだけで、安心できるものじゃない、というのは、わかっているので」


その一言に、誰も、それ以上は踏み込まなかった。


---


「最後に」


鑑定士が、ワングを見る。


「あなたのことも、確認させてください」


「よろしく頼む」


ワングが、台に手を乗せる。


光が、これまでとは違う、深い色で灯った。


---


「侍、レベル13ですね」


鑑定士が、静かに言う。


「アルカナ系、第四階梯まで。使用回数、2回。習得呪文、4つ」


「変わらず、でござるな」


ワングが、静かに言う。


「レベルが上がってから久しいなら、間もなく上がっても不思議じゃありません」


鑑定士が、付け加えた。


---


窓口を離れ、外に出る。


夕暮れの光が、六人の影を、長く伸ばしていた。


「六人分、揃ったな」


カインが、皆を見回す。


「揃った」


ダダが、頷く。


「揃いました」


ミラが、微笑む。


「揃った、でござる」


ワングの言葉に、初めて、確かな笑みが混じっていた。


---


「今日は、フラグメンツで、乾杯といこう」


カインが、提案する。


「賛成」


六人の声が、揃った。


夕暮れの通りを、六つの影が、並んで歩いていった。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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