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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第36話「六人目の初陣」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

フォージタウンで、ブロムから、完成した装備を受け取った。


「使い心地、報告に来い」


ブロムが、ぶっきらぼうに言う。


「かたじけない」


ワングが、深く頭を下げた。


---


右腕に、新しい重みがあった。


ワングが、革の受け皿に固定された小刀を、静かに確かめる。


「慣れない、でござるな、まだ」


「少しずつでいいですよ」


ミラが、隣で言う。


---


「いきなり深廊は、無茶だと思っておる」


ワングが、皆を見回す。


「一層から、順に、体に馴染ませたい。それが、拙者の望みでござる」


「賛成」


カインが、頷く。


「レベル差の確認や、お互いのすり合わせもあるから潜り直すのも、悪くない」


---


ノアの門をくぐる。


浅瀬、分岐廊下は、拍子抜けするほど、あっさり進んだ。


「昔は、ここで死にかけたんだけどな」


カインが、苦笑いする。


「今は、通り道でござるな」


ワングが、静かに言う。


その一言に、これまでの積み重ねの重みがあった。


---


三層のボス部屋、扉の前に立つ。


「また、いるんですかね、あいつ」


ネリスが、聞く。


「一定期間で、戻ってくるらしいし、メンバーが変わったからな」


ダダが、答える。


「全員で、開けるぞ」


六人が、扉に手をかけた。


---


扉の奥、以前と同じ、巨大な甲殻の影が蹲っていた。


グラヴォルが、頭をもたげる。


「変わらないな、姿は」


カインが、剣を構える。


「変わったのは、俺たちの方だ」


ダダが、静かに言った。


---


グラヴォルが、脚を振り下ろす。


ダダの盾が、正面から受け止めた。


「軽いな、これ」


ダダが、拍子抜けしたように言う。


「軽いって、あれが?」


ネリスが、目を丸くする。


「以前より、明らかに、耐えられる」


---


「ファイア」


ノリアの一撃が、甲殻の継ぎ目を正確に捉える。


爆発とともに、大きな亀裂が走った。


「一発で、そこまで」


カインが、驚いたように言う。


「レベル、上がってるから」


ノリアが、短く答える。


---


グラヴォルが、地面に潜ろうとする。


「潜らせない」


ワングが、初めて前に出た。


「拙者が、押さえる」


---


左の刀を、地面すれすれに構える。


グラヴォルが潜りかけた瞬間、体ごと踏み込んだ。


右腕の刃が、正確に、脚の付け根へ突き込まれた。


「入った」


ワングの声は、静かだった。


だが、確かな手応えがあった。


---


グラヴォルが、大きく仰け反る。


「今だ!」


カインが、剣を構えて踏み込む。


露わになった核へ、刃を深く突き刺した。


グラヴォルの体が、震え、やがて崩れ落ちた。


---


しばらく、誰も何も言わなかった。


「早くないか、今日」


ネリスが、呟く。


「早かった」


ダダが、頷く。


「ワング殿の、あの一手が、大きかった」


「そんな、拙者はまだ」


ワングが、慌てたように首を振る。


「役に立ったのは、事実だろ」


カインが、笑いながら言う。


---


魔石を回収し、四層へと進む。


四層の空気は、以前より、幾分か軽く感じられた。


「四層のボス、名前まだないんだよな」


カインが、思い出したように言う。


「まだ、記録がない」


ダダが、答える。


---


ボス部屋の扉を開けると、女王が、翅を広げて舞い降りてきた。


「変わらず、優雅でござるな」


ワングが、刀を構える。


「優雅で、面倒な相手だよ」


カインが、苦笑いする。


---


光の矢が、降り注ぐ。


「散れ!」


ダダの声に、六人が散開する。


以前より、明らかに、動きに余裕があった。


---


「静黙」


ノリアの声とともに、女王の輝きが、大きく鈍った。


「以前より、効いてる」


カインが、驚く。


「レベル差、そのまま出てる」


---


女王が、舞い上がろうとする。


「拙者に」


ワングが、静かに前へ出た。


刀を鞘に納め、右腕を、静かに掲げる。


「雷殺!」


第四階梯の光が、女王の翅を正確に貫いた。


---


「魔法まで」


ネリスが、目を見開く。


女王が、体勢を崩し、地上近くまで落ちてくる。


「今だ!」


ダダが、盾ごと突進する。


ネリスが跳び、翅の付け根に爪を打ち込んだ。


---


「ワング殿、決めて!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ワングが踏み込み、左の刀で受け、右の刃で、核を正確に突く。


女王の体が、大きく痙攣し、力を失った。


---


しばらく、誰も動かなかった。


「終わった、な」


ダダが、盾を下ろす。


「終わった」


カインが、剣を納めながら頷く。


「以前とは、比べ物にならないな、今日は」


---


「みんな、怪我は」


ミラが、確認に回る。


「無傷」


「無傷」


「かすり傷程度」


口々に答える声に、これまでとは違う、確かな余裕があった。


---


「ワングさん、今日、すごかったですね」


ミラが、素直に言う。


「いや」


ワングが、静かに首を振る。


「皆様の積み上げてきたものに、拙者が、少し乗っただけでござる」


「乗っただけにしては、決め手、全部あんたじゃないか」


ダダが、笑いながら言う。


---


「申し訳ない、と、ずっと思っていたが」


ワングが、右腕を、静かに見つめる。


「今日で、少し、その気持ちが、軽くなった気がする」


「少しじゃなくて、だいぶ、でいいと思いますよ」


ネリスが、素直に言った。


---


魔石を回収し、五層へと続く道を見下ろす。


「今日は、ここまでにしよう」


カインが、皆を見回す。


「賛成」


ダダが、頷く。


「承知いたした」


ワングの声にも、これまでにない、確かな落ち着きがあった。


窓の外、夕暮れが、六人の影を、長く伸ばしていた。


---


フラグメンツに寄ると、ガラントが、すぐに気づいた。


「今日は、見ない顔が、一緒だな」


「ワングと申す」


ワングが、丁寧に頭を下げる。


「三層と、四層のボス、二頭ともやり直してきました」


カインが、付け加える。


「二頭とも?一日で?」


ガラントが、目を見開く。


---


「一人、頼りになる人が、増えたんです」


ミラが、微笑みながら言う。


ガラントが、ワングの右腕に、一瞬、視線をやった。


「そうか」


それだけ言うと、ガラントは、いつも通りの明るさで、酒を運んできた。


「今日は、六人分だな」


「六人分、お願いします」


カインが、笑いながら答えた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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