第14話「レベルの差」
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当面、数話を連続投稿の予定です。
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翌日も、五人で三層に潜った。
ミラが加わってから、パーティの動き方が明らかに変わっていた。
「右奥、動きあり。二体」
ミラの声が、戦闘の合間に短く飛ぶ。
「了解」
カインが、迷わず頷く。
以前は気配に気づくのがネリス頼みだったが、ミラが加わってからは、状況を言葉にして共有する係が増えた分、動きに迷いがなくなっていた。
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「ダダ、左肩下がってる。無理しないで」
ミラが、戦闘中でも細かく声をかける。
「まだいける」
「まだいけるのと、大丈夫は違う」
短いやり取りだったが、ダダの構えが、わずかに立て直された。
「ミラ、地味に効くな、その一言」
カインが、感心したように言う。
「地味な仕事だから」
ミラが、あっさり答えた。
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分岐廊下の奥、今日はさらに深い区画まで進んだ。
甲殻型に加えて、絡みつく蔓を伸ばす植物型のモンスターが現れ始めた。
「あれ、動きが遅いから楽そう」
ネリスが、油断気味に言う。
「油断するな」
ダダが、短く釘を刺す。
その直後、蔓が地面から突き出し、ネリスの足首に絡みついた。
「うわ!」
「言ったそばから」
ダダが、盾でネリスをかばいながら蔓を斬り払う。
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「毒、ある?」
ミラが、すぐに確認する。
「ないと思う、たぶん」
ネリスが、足首をさすりながら答える。
「たぶんじゃ困る。見せて」
ミラが、有無を言わさず膝をつく。
淡い光が、足首を包んだ。
「大丈夫。痺れが残る程度」
「ミラの判断、早いな」
カインが言う。
「早くないと、間に合わないこともあるから」
短い返事の奥に、何か重みのある経験がにじんでいた。
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進むほどに、敵の密度が上がっていった。
甲殻型二体と植物型一体が同時に現れた場面では、五人の連携がぎりぎりまで試された。
「ダダ、正面。ネリス、右から回って。ノリア、真ん中に一発」
ミラが、戦況を見ながら短く指示を出す。
「指示、慣れてるな」
カインが、驚いた声を上げる。
「前のパーティでも、似たようなことしてたから」
答える声が、一瞬だけ硬くなった。
だが、それ以上は誰も踏み込まなかった。
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「ファイア」
ノリアの一撃が、群れの中心を吹き飛ばす。
爆風の余波で、植物型の蔓ごと甲殻が焼け落ちた。
「今の、ますます範囲広がってないか」
カインが言う。
「広がってる。感覚で調整できるようになってきた」
ノリアが、淡々と答える。
短いやり取りの裏で、確かな変化が積み重なっていた。
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戦いが続くうちに、疲労が目に見える形で表れ始めた。
ダダの盾を受ける腕が、わずかに遅れるようになっていた。
カインの太刀筋にも、いつもよりキレがなくなっていた。
「今日、そろそろきついな」
カインが、息を切らしながら言う。
「きつい」
ダダも、素直に認めた。
「無理は禁物」
ミラが、すぐに割って入る。
「戻ろう。今日はここまで」
誰も反対しなかった。
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ヘクサインへの帰り道、五人の足取りは重かったが、表情は悪くなかった。
「今日、結構進んだよな」
カインが言う。
「進んだ」
ダダが頷く。
「ミラが状況、逐一教えてくれるから、余計な混乱がない」
「余計な混乱、って前はあったんだ」
ミラが、少し面白そうに聞く。
「あった。ネリスが突っ込みすぎるやつとか」
「人のせいにするな」
ネリスが、すぐに言い返した。
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翌朝、朝食を終えたところで、ダダが切り出した。
「そろそろ、レベルの確認、しないか」
「確認?」
カインが聞き返す。
「三層、結構潜った。反映されてるはずだ」
「そうだな」
カインも、頷いた。
五人は、アプレイザルへ向かった。
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窓口には、以前と同じ鑑定士がいた。
「また、皆さんで」
「また皆さんで、です」
カインが、苦笑しながら答える。
一人ずつ、鑑定具に触れていく。
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「盾役、レベル3ですね」
ダダの番で、鑑定士が言う。
「3、上がったか」
ダダが、静かに頷く。
顔には出さなかったが、肩の力の抜け方に、満足がにじんでいた。
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「斥候、レベル3」
ネリスの番でも、同じ結果が出た。
「私も!」
ネリスが、飛び跳ねそうな声を上げる。
「跳ねなくていい」
ダダが、すかさず釘を刺した。
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「魔術師、レベル3」
ノリアの番になると、鑑定士が続けて紙を確認する。
「習得呪文の状況ですが」
「第一階梯、火花炎。使用回数、4回」
「4回?」
カインが、思わず声を上げる。
「3回から、また増えたのか」
「増えた」
ノリアが、短く答える。
その声には、以前の「それだけ」というような曇りはなかった。
淡々としていたが、確かな手応えが滲んでいるように聞こえた。
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「第二階梯の兆しは、まだですね」
鑑定士が、付け加える。
「まだ、いいの」
ノリアが、あっさり返す。
「回数が増えるだけでも、十分すぎる」
その言葉に、以前のような無理をした響きはなかった。
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「便利屋さん、どうぞ」
呼ばれて、カインが台の前に立つ。
手を乗せると、光が灯る。
しばらくして、鑑定士が顔を上げた。
「レベル2のままですね」
「……2」
カインの声が、一瞬だけ低くなった。
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「変わってない、ってことですか」
カインが、確認するように聞く。
「変わっていません。前回の数値と、同じです」
淡々とした答えに、カインは何も言い返せなかった。
「そういうことも、あります。積み上げ方に、個人差が出るので」
鑑定士の言葉は、慰めにはなったが、疑問を消しはしなかった。
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窓口を離れて、外に出る。
「カイン、大丈夫?」
ネリスが、様子を窺うように聞く。
「大丈夫、大丈夫」
カインが、いつもの調子で答える。
だが、その声は、いつもより一段階、軽さを装っているように聞こえた。
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「便利屋のレベルって、何に効くんだ、そもそも」
カインが、独り言のように呟く。
「未選択のままだから、伸びにくいのかもしれない」
ダダが、慎重に言葉を選ぶ。
「かもな」
カインが、あっさり流したが、その視線は、しばらく地面から離れなかった。
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「みんなが上がってくのは、いいことだろ」
カインが、努めて明るく言う。
「俺が足を引っ張るわけにはいかないし」
「引っ張ってない」
ダダが、すぐに否定する。
「引っ張ってないよ」
ネリスも続く。
「わかってる」
カインが、笑って返した。
その笑い方が、いつもより少しだけ、無理をしているように見えた。
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ミラだけが、少し離れたところで、カインの様子を静かに見ていた。
何かを言いかけて、やめる。
今はまだ、その時ではないと判断したようだった。
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その日は、三層には潜らず、フォージタウンでダダの盾を修理に出すことになった。
「今日は、休みってことで」
カインが言う。
「休み、って言うわりに、元気なさそうだけど」
ネリスが、軽くつつく。
「元気だよ」
カインが、繰り返した。
繰り返すことで、自分に言い聞かせているようにも見えた。
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レベルの差は、まだ小さい。
けれど、確かにそこにあった。
三層はまだ奥へと続いている。
そして、五人の足並みには、初めてわずかな不揃いが生まれていた。
いかがでしょうか?
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