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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第四部 迷宮エア編 三層

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第131話「測り直した力、重なる手」

三層の通路を進みながら、六人は小さな敵の群れと行き会った。


「試す、なら今でござるな」


ワングが、刀ではなく、指先を敵へ向ける。


「魂縛」


淡い光の輪が、敵の一体を縛った。


動きが、ぴたりと止まる。


「効いてる、効いてる」


カインが、頷きながら前へ出た。


「雷殺」


指の先から放たれた雷が、もう一体を貫く。


崩れ落ちるまで、瞬きふたつ分もかからなかった。


---


「残りは、私が」


ノリアが、気だるげに手をかざす。


「火花炎」


その一言だけだった。


放たれた炎が、残る敵をまとめて呑み込む。


轟音が通路に響き、土煙が収まるまで、誰も口をきかなかった。


「……今の、第一階梯だよな?」


カインが、恐る恐る確認する。


「そう。ファイア」


ノリアが、事も無げに答えた。


---


「拙者の魂縛、七階梯でこれでござるぞ」


ワングが、苦笑いを浮かべる。


「俺の雷殺も、四階梯だし……」


カインが、自分の手のひらを見つめた。


「別格ってこと、だよね」


ミラが、静かに言葉にする。


「ノリアの呪文は、階梯とか関係ないんでござるな」


「昔から、そうだったよ」


ダダが、腕を組んで頷いた。


「だから、いつも取っておくんだ」


ネリスが、爪の先で虚空をなぞる。


「切り札、として」


「そういうこと」


カインが、六人を見渡した。


「普段は俺たちの手数で片づける。ノリアは、ここぞって時だけ」


「「「了解」」」


改めて、そう確かめ合った。


---


次のポイントに近づいたところで、通路の奥に気配が動いた。


牙を持つ獣型の魔物が、四体。


「カイザー、頼む」


カインが、印を組む。


光の中から、無言の鎧の魔物が現れた。


「前衛、三人で」


ダダの声に、ワングとカイザーが同時に踏み込む。


「合わせるでござる」


三方向からの攻撃が、獣の動きを封じ込めた。


「今」


ネリスが、隙間を縫って爪を突き立てる。


「浄光」


ミラの光が、削られた傷をすぐに塞いだ。


息の合った連携で、四体はあっという間に崩れ落ちていった。


---


跡地に、木箱がひとつ残っていた。


「待って」


ネリスが、蓋に手を伸ばしかけたカインを止める。


「罠、ある」


指先で、蓋の縁をなぞる。


「細い糸……ここと、ここ」


慎重に、二本の糸を順に切っていく。


小さく、金具の外れる音がした。


「よし。開ける」


蓋を持ち上げると、中には見たことのない意匠の短剣と、小さな金塊がひとつ収まっていた。


「これは……アプレイザル行きだな」


カインが、短剣を手に取り、光にかざす。


「金塊も、また例のやつか」


ダダが、眉を寄せた。


---


戦利品を懐にしまい、六人は元来た道を戻り始めた。


しばらく歩いたところで、カインはふと足を止め、後ろを振り返った。


通路の奥、さっきの跡地のあたりに、六つの人影がいた。


自分たちと、よく似た六人組だった。


何かを囲んで、騒いでいる。


「空じゃん、これ」


「本当に、何も入ってない」


くぐもった声が、遠く響いてくる。


やがて、そのうちの一人がしゃがみ込み、箱の底から何かをつまみ上げた。


小さく、鈍い金色に光るもの。


「……嘘、だろ」


カインの声が、かすれた。


隣で、ミラが息を呑む音がした。


誰も、それ以上は言葉にできなかった。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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