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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第四部 迷宮エア編 三層

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第129話「見失った背中、開いていた箱」

マランの世界、連日投稿中です。

当面、毎日2話投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

「追うぞ」


カインの声に、迷いはなかった。


「「「了解」」」


六人は六つの背中が消えた角へ一斉に駆け出した。


---


通路は思いのほか入り組んでいた。


「こっち」


ネリスが、先頭を切る。


耳が忙しなく動いていた。


「足音、聞こえる?」


ノリアが、息を切らしながら聞く。


「さっきまでは。今は……」


ネリスの声が次第に小さくなっていく。


「消えた」


短く、そう告げた。


---


青の点まで、あと少しという場所で六人は立ち止まった。


道が三つに分かれている。


「どっちだ」


ダダが、周囲を見回す。


「わからない。足跡も、途中で消えてる」


ネリスが、悔しそうに地面を睨んだ。


「板は」


ミラが、カインを見る。


カインが、板を取り出す。


丸い印は六人自身の位置を示すだけだった。


「役に立たないでござるな、こういう時は」


ワングが、静かに言う。


「俺たちの位置しか、わからないもんな、これ」


カインが、板をしまいながら、肩を落とした。


「見失った、か」


「見失った」


六人の声が力なく揃った。


---


「とりあえず、青の点、目指そう」


カインが、気を取り直すように言う。


「賛成。ここで、立ち止まっててもしょうがない」


ダダが、頷いた。


慎重に、青の光の方へと歩みを進める。


---


その先で、六人は思わぬ相手と鉢合わせた。


剣を提げた人型が二体、杖を持った人型が一体。


冒険者を模したような編成に、六人は一瞬身構える。


「また、あのタイプか」


ワングが、氷姫の柄に手をかける。


「違う。前とは、装備が違う」


ミラが、油断なく目を細めた。


「今のうちに、決める」


カインの声に、六人がそれぞれ動き出した。


---


剣士型の二体をワングとダダが引き受ける。


「参る」


「合わせるぞ」


盾で受け、刀で斬る。


息の合った連携が確実に相手の体力を削っていく。


魔法使い型が、杖を掲げた、その瞬間。


「させない」


ノリアの業火弾が詠唱の途中を正確に撃ち抜いた。


「今」


ネリスが跳び、爪を振るう。


三体とも、さほど時間をかけずに、崩れ落ちていった。


「意外と、あっさりだったな」


カインが、剣を鞘に収めながら言う。


「連携、慣れてきたのかもね」


ミラが、静かに微笑んだ。


---


跡地に、木箱が一つ置かれていた。


「宝箱……?」


ノリアが、駆け寄る。


蓋がすでにわずかに開いていた。


「これ……」


ネリスが、蓋の隙間をじっと覗き込む。


「開いてる。誰かが、もう」


「先を越された、ってことか」


ダダが、眉をひそめた。


「中、空でござるか」


ワングが、慎重に蓋を持ち上げる。


---


箱の中に、銀色に近い光沢を持つ小さな塊が一つだけ残っていた。


「金塊……?」


カインが、目を見開く。


「空じゃ、ない」


ミラが、そっとそれを取り上げる。


「開けられたのに、中身が残ってる、って」


ノリアが、首を傾げた。


「盗っていく気が、なかったのか。それとも」


ダダが、言葉を濁す。


「それとも、何?」


ネリスが、続きを促す。


「わからん」


ダダが、正直に首を振った。


---


「訳、わかんない」


ネリスが、爪を握ったまま、呟く。


「僕らが今、倒したやつらは、確かに、初めて見る敵だった」


カインが、皆を見渡す。


「でも、この箱は、もう、開けられてた」


「あの、六人が……?」


ミラが、静かに言葉にする。


誰も、頷けなかった。


誰も、否定もできなかった。


「今日は、戻ろう」


カインが、静かに、そう告げた。


「「「了解」」」


いつもより、力のない声だった。


---


アプレイザルの鑑定台に、金塊が置かれた。


鑑定士がそれを手に取り、天秤に乗せる。


しばらくして、鑑定士の眉がわずかに動いた。


「これ……」


「どうしたんですか」


カインが、身を乗り出す。


「重さも、純度も……前回、お持ちいただいたものと、寸分違わないんです」


「前回の……?」


ノリアが、目を見開く。


「はい。数字まで、完全に一致しています」


鑑定士が、記録紙を二枚並べて見せた。


そこには、同じ数字が並んでいた。


六人は、しばらくその紙を無言のまま見つめていた。

いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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