第129話「見失った背中、開いていた箱」
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「追うぞ」
カインの声に、迷いはなかった。
「「「了解」」」
六人は六つの背中が消えた角へ一斉に駆け出した。
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通路は思いのほか入り組んでいた。
「こっち」
ネリスが、先頭を切る。
耳が忙しなく動いていた。
「足音、聞こえる?」
ノリアが、息を切らしながら聞く。
「さっきまでは。今は……」
ネリスの声が次第に小さくなっていく。
「消えた」
短く、そう告げた。
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青の点まで、あと少しという場所で六人は立ち止まった。
道が三つに分かれている。
「どっちだ」
ダダが、周囲を見回す。
「わからない。足跡も、途中で消えてる」
ネリスが、悔しそうに地面を睨んだ。
「板は」
ミラが、カインを見る。
カインが、板を取り出す。
丸い印は六人自身の位置を示すだけだった。
「役に立たないでござるな、こういう時は」
ワングが、静かに言う。
「俺たちの位置しか、わからないもんな、これ」
カインが、板をしまいながら、肩を落とした。
「見失った、か」
「見失った」
六人の声が力なく揃った。
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「とりあえず、青の点、目指そう」
カインが、気を取り直すように言う。
「賛成。ここで、立ち止まっててもしょうがない」
ダダが、頷いた。
慎重に、青の光の方へと歩みを進める。
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その先で、六人は思わぬ相手と鉢合わせた。
剣を提げた人型が二体、杖を持った人型が一体。
冒険者を模したような編成に、六人は一瞬身構える。
「また、あのタイプか」
ワングが、氷姫の柄に手をかける。
「違う。前とは、装備が違う」
ミラが、油断なく目を細めた。
「今のうちに、決める」
カインの声に、六人がそれぞれ動き出した。
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剣士型の二体をワングとダダが引き受ける。
「参る」
「合わせるぞ」
盾で受け、刀で斬る。
息の合った連携が確実に相手の体力を削っていく。
魔法使い型が、杖を掲げた、その瞬間。
「させない」
ノリアの業火弾が詠唱の途中を正確に撃ち抜いた。
「今」
ネリスが跳び、爪を振るう。
三体とも、さほど時間をかけずに、崩れ落ちていった。
「意外と、あっさりだったな」
カインが、剣を鞘に収めながら言う。
「連携、慣れてきたのかもね」
ミラが、静かに微笑んだ。
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跡地に、木箱が一つ置かれていた。
「宝箱……?」
ノリアが、駆け寄る。
蓋がすでにわずかに開いていた。
「これ……」
ネリスが、蓋の隙間をじっと覗き込む。
「開いてる。誰かが、もう」
「先を越された、ってことか」
ダダが、眉をひそめた。
「中、空でござるか」
ワングが、慎重に蓋を持ち上げる。
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箱の中に、銀色に近い光沢を持つ小さな塊が一つだけ残っていた。
「金塊……?」
カインが、目を見開く。
「空じゃ、ない」
ミラが、そっとそれを取り上げる。
「開けられたのに、中身が残ってる、って」
ノリアが、首を傾げた。
「盗っていく気が、なかったのか。それとも」
ダダが、言葉を濁す。
「それとも、何?」
ネリスが、続きを促す。
「わからん」
ダダが、正直に首を振った。
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「訳、わかんない」
ネリスが、爪を握ったまま、呟く。
「僕らが今、倒したやつらは、確かに、初めて見る敵だった」
カインが、皆を見渡す。
「でも、この箱は、もう、開けられてた」
「あの、六人が……?」
ミラが、静かに言葉にする。
誰も、頷けなかった。
誰も、否定もできなかった。
「今日は、戻ろう」
カインが、静かに、そう告げた。
「「「了解」」」
いつもより、力のない声だった。
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アプレイザルの鑑定台に、金塊が置かれた。
鑑定士がそれを手に取り、天秤に乗せる。
しばらくして、鑑定士の眉がわずかに動いた。
「これ……」
「どうしたんですか」
カインが、身を乗り出す。
「重さも、純度も……前回、お持ちいただいたものと、寸分違わないんです」
「前回の……?」
ノリアが、目を見開く。
「はい。数字まで、完全に一致しています」
鑑定士が、記録紙を二枚並べて見せた。
そこには、同じ数字が並んでいた。
六人は、しばらくその紙を無言のまま見つめていた。
いかがでしょうか?
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