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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第三部 迷宮エア編 二層

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第111話「名を持つ金属、託す腕」

マランの世界、連日投稿中です。

当面、毎日2話投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

クロスロードへ戻ると、六人は、まず、アプレイザルへ向かった。


門をくぐる頃には、すでに、日が、傾き始めていた。


窓口には、見慣れた鑑定士が、座っている。


「今日は、また、たくさんですね」


鑑定士が、袋を受け取りながら、目を丸くした。


「二層で、拾い集めたやつです」


カインが、袋を、机の上に、広げる。


赤みを帯びたもの、鈍く黒いもの、白く輝くもの、そして、あの淡い銀色のものが、いくつも、転がった。


机の上に並んだ金属の数に、鑑定士も、しばし言葉を失っていた。


「今回は、いつもより量が多いでござるな」


ワングが、並べられた塊を見渡しながら、言う。


「ポイント、五つ分回ったからね」


ミラが、答えた。


「その分、モンスターも多かったけど」


ダダが、肩を軽く回す。


「この、銀色のやつ、なんですけど」


ダダが、真っ先にその一つを指す。


「もしかして、ミスリルじゃないかと」


---


鑑定士が、その塊を、手に取った。


台座の上に置き、軽く、目を閉じる。


淡い光が、金属の表面を静かに包んだ。


しばらくして、光が、収まる。


「ミスリルですね」


鑑定士が、静かに、頷いた。


「やっぱり……!」


ダダが、思わず、声を上げる。


「本物、だったでござるか」


ワングも、身を乗り出した。


「これだけの、大きさとなると、それなりの値打ちがあるはずです」


鑑定士が、そう付け加えた。


「それ以外も、希少なモノもある、ようです」


鑑定士が、続けて、他の塊を一つずつ台座に乗せていく。


黒みを帯びた塊に、光が、宿った。


「これは、アマダンタイト」


赤く、鈍い光を放つ塊にも、同じように光が伝う。


「こちらは、ヒヒロカネ」


「聞いたことのない、名前でござるな」


ワングが、首を傾げる。


「あまり、出回らないものばかりです」


鑑定士が、記録紙に名前を書き留めながら、言った。


---


「これ、全部、二層で拾ったんですよね」


鑑定士が、少し驚いたように、六人を見渡す。


「はい。ポイントの宝箱から」


ノリアが、答える。


「色ごとに、出てくる素材が、違うみたいで」


「なるほど。それは、貴重な、情報ですね」


鑑定士が、記録紙に、丁寧に書き加えていった。


「二層自体、まだ、報告が少ないので助かります」


「役に、立てたなら、よかったでござる」


ワングが、軽く、頷いた。


「他の冒険者も、ここまで、集められてるんですか」


カインが、ふと、気になって、聞く。


「いいえ、ここまでの量は珍しいですね。危険な場所ばかり、回っている、ということでもあるかもしれません」


鑑定士が、少し、心配そうに、付け加えた。


「無理は、してないつもりです」


ダダが、答える。


「それなら、いいのですが」


「これ、引き取ってもらうこと、できますか」


カインが、机の上の塊を、見渡しながら、聞く。


「引き取りも、可能です」


鑑定士が、頷く。


「相場も、それなりに、いい値がつくと思います」


「おお」


ダダが、少し、目を、輝かせた。


「ただ」


一拍、置いて、鑑定士が、続けた。


「鍛冶が、可能なら、防具や武器を作ってもらう、というのもあるかもしれません」


「防具や、武器……」


ダダが、繰り返す。


「これだけの素材が揃うことは、そう、多くありません。売ってしまうのは、もったいないかもしれませんね」


鑑定士が、そう言って、微笑んだ。


---


「それ、いいでござるな」


ワングが、真っ先に、反応する。


「刀は、氷姫があるでござるから、十分過ぎるほどでござるが」


「防具の方は、まだ、手つかずでござるしな」


「ネリスの装備も、そうだよね」


ミラが、傍らを、見やる。


ネリスは、黙って、頷いた。


「鍛冶に、相談してみるか」


カインが、皆を、見回す。


「賛成」


ダダが、頷いた。


「ブロムさんの、ところ、行こう」


六人は、金属塊を丁寧に袋へ戻し、鑑定士に礼を言って、アプレイザルを後にした。


---


工房へ向かう道すがら、ダダが、袋の中を何度も確かめていた。


夕暮れの通りには、屋台の明かりが、一つ、二つと、灯り始めている。


「ミスリルに、アマダンタイトに、ヒヒロカネ、か」


「そんなに、気になるでござるか」


ワングが、苦笑する。


「盾役だからな。素材がいいと、それだけ頼りになる」


ダダが、真剣な、顔で、答えた。


「私は、武器より、防具の方が、気になる」


ネリスが、静かに、言う。


「私の防具、そろそろ、限界、感じてた」


「みんな、それぞれ、思うところ、あるみたいだね」


ミラが、笑いながら、言った。


「ミラは、どうするの」


カインが、聞く。


「私は、今の装備、まだ、しっくりきてるから。急がなくても、いいかな」


「ブロムさんに、聞けば、何ができるか、わかるはず」


カインが、工房の看板を、指す。


夕暮れ時の通りを、六人は、連れ立って、歩いていった。


---


工房の扉を、押し開けると、鎚の音が規則正しく響いていた。


炉の熱気が、開けた扉から、じんわりと伝わってくる。


「おう、久しぶりだな」


ブロムが、手を止め、顔を上げる。


汗を、腕で、軽く拭いながら、六人を、見渡した。


「今日は、何の用だ」


「実は」


ダダが、袋を、作業台の上に、置いた。


金属塊が、鈍く、光を放つ。


ブロムの目が、その一つに、留まった。


「これは……」


太い指で、塊を、そっと、持ち上げる。


しげしげと、光にかざし、重さを確かめるように、手の中で転がした。


「ミスリルだな、間違いなく」


「アプレイザルでも、そう、言われました」


カインが、頷く。


「他にも、二種類、あるみたいで」


「アマダンタイトと、ヒヒロカネ、だそうです」


ノリアが、付け加えた。


ブロムの眉が、わずかに、上がる。


「そいつは、また、豪勢だな」


「話、聞いてもらえますか」


カインが、切り出した。


ブロムは、しばらく、黙って、塊を、見つめていた。


「聞こう」


短く答えると、作業台の隅に、椅子を、寄せた。


六人は、それぞれに、椅子を借り、腰を下ろした。


「それで、どうしたいんだ。売るのか、それとも」


「作って、もらえないかと、思って」


ダダが、答える。


「アプレイザルでも、売れるとは、言われたんですが」


カインが、補足する。


「これだけの、素材、そうそう、集まらないから、勿体ない、とも」


「まあ、その通りだな」


ブロムが、腕を組みながら、頷いた。


「ミスリルは、軽くて頑丈だ。武器にも防具にも、向いてる」


「アマダンタイトと、ヒヒロカネは、どうですか」


ノリアが、興味深そうに、聞く。


「アマダンタイトは、熱に、めっぽう強い。ヒヒロカネは……正直、俺も、扱ったことは少ない」


ブロムが、少し、考え込むように、腕を組んだ。


「珍しい部類だ。腕が、試される」


「難しい、ですか」


カインが、聞く。


「難しいさ。だが、その分、仕上がればいい仕事になる」


ブロムの目に、少し、光が、宿った。


「拙者は、防具を、頼みたいでござる」


ワングが、すぐに、続いた。


「私も、防具」


ネリスも、短く、言う。


「盾も、頼めるなら、頼みたいですね」


ミラが、控えめに、付け加えた。


「わたしは、まだ、決めてない」


ノリアが、ぽつりと、言った。


「みんな、それぞれ、思うところが、あるんだな」


ブロムが、苦笑しながら、塊を、作業台に、並べ直す。


「一度に、全部は、無理だぞ。順番も、考えないとな」


「それも、含めて、相談したいでござる」


ワングが、真剣な、顔で、頷いた。


「まずは、優先度、決めるか」


カインが、皆を、見回しながら言う。


「一つずつ、聞かせてもらおうか」


ブロムが、腕を組み直し、六人を見渡した。


六人は、それぞれ、腰を下ろし、鍛冶師との相談を始めた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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