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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第三部 迷宮エア編 二層

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第108話「色めく森、拾う証」

マランの世界、連日投稿中です。

当面、毎日2話投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

二層の門をくぐった瞬間、ネリスの足が止まった。


「多い」


「多いな」


カインも、同じものを見て、息を呑んでいた。


懐から取り出した板の上、これまでの六色の四角とは、まるで違う光景が広がっている。


赤、青、緑、黄、白、黒。


その六色に加えて、細かな光の粒が、板の全面に無数に散らばっていた。


「これ、全部、ポイントか」


ダダが、板を覗き込みながら、唸る。


「多分」


ネリスが、短く答える。


「一層は、六つだけだったでござるが」


ワングが、顎に手を当てる。


「階層が進むと、密度も、上がるんだと思う」


ノリアが、素っ気なく言った。


「全部回るのは、無理そうだね」


ミラが、苦笑いする。


「今日は、近い方から、確かめる」


ネリスが、板を懐にしまい、先に立った。


---


門の先に広がっていたのは、鬱蒼とした森だった。


太い木の幹が、視界を遮るように、いくつも連なっている。


石造りの通路とは違い、足元は、柔らかい土と根に覆われていた。


「道、あるにはあるでござるな」


ワングが、木々の間に続く、獣道のような筋を指す。


「外れると、多分、まずい」


ネリスが、鼻を、かすかに動かした。


「魔物の匂い、そこら中にある」


葉のざわめきに紛れて、遠くから獣の唸りが聞こえてくる。


「じゃあ、道なりに行こう」


カインが、先頭をネリスに任せる。


しばらく進むと、木々の切れ間に淡く光る場所が見えた。


近づくと、地面に青い光の粒が、円を描くように集まっている。


「あれが、ポイントか」


ダダが、盾を、構え直した。


円の中心から、大きな影が、ゆっくりと立ち上がる。


熊のような体躯に、樹の皮を思わせる硬い装甲。


四肢の先には、鋭い爪が鈍く光っていた。


「硬そうでござるな」


「見た目通りなら、な」


カインが、剣を抜きながら答える。


---


魔物が、地を蹴った。


太い前足が、ダダの盾へ、まっすぐ振り下ろされる。


「くっ……!」


受け止めた瞬間、ダダの足が、じりっと後ろへ滑った。


「重いぞ、こいつ!」


「下がって!」


ミラが、丸盾を構え、横から割り込む。


二人がかりで、ようやく押し返した。


「装甲、硬いでござるな」


ワングが、刀を軽く振ってみせる。


先ほどの一撃で、刃筋にわずかな違和感が残っていた。


「関節、狙う」


ネリスが、低く言って魔物の側面へ回り込む。


爪が、装甲の継ぎ目を正確に狙った。


魔物が、初めて低く呻く。


「そこか」


カインが、すかさず踏み込み同じ箇所へ剣を突き入れた。


だが、装甲の下から、新たな殻がせり上がるように現れる。


「まだ、硬いぞ……!」


「なら」


カインが、手のひらを前へ向ける。


「頼む」


光の紋様とともに、あの巨躯が姿を現した。


ゴーレムが正面から、魔物の突進を真っ向から受け止める。


「今だ!」


その隙に、ワングとネリスが、左右から、装甲の継ぎ目へ、同時に刃を通した。


「業火獄!」


ノリアの炎が、怯んだ魔物を、大きく包み込む。


崩れ落ちる巨体が、やがて、光の粒となって、消えていった。


---


戦いの熱が、まだ体に残っていた。


「今の、結構、危なかったでござるな」


ワングが、額の汗を拭う。


「一層より、確実に強い」


ネリスが、爪をしまいながら頷いた。


光の粒が消えた場所に、青いコインがいくつか残っている。


「ポイントの色と、同じ色のコイン、か」


カインが、拾い上げながら呟いた。


コインは、ひんやりと、青く光っている。


少し先、木の根元に、小さな箱が半ば埋もれるように置かれていた。


「宝箱、あった」


ネリスが、鍵の有無を慎重に確かめる。


鍵は、かかっていなかった。


蓋を開けると、中には、艶のある金属の塊と、見慣れない繊維状の素材がいくつか収まっていた。


「これ、何に使えるんだろうね」


ミラが、興味深そうに、覗き込む。


「鍛冶に、聞いてみないと分からないでござるな」


ワングが、そのまま、箱ごと持ち上げた。


「ポイントごとに、コインの色と、中身が変わりそうだ」


カインが、板を取り出し、進んだ場所に印をつける。


板の上、青い光の粒が、少しだけ色を濃くしていた。


「一つ、確かめた」


ネリスが、周囲に視線を巡らせる。


森の奥、まだ見ぬ色の光が、遠くにいくつも瞬いていた。


「まだまだ、あるでござるな」


ワングが、少し楽しそうに言った。


「今日中に、いくつ回れるか」


ダダが、腕を鳴らす。


「無理は、しない」


ネリスが、釘を刺しながらも、すでに次の光へ視線を向けていた。


六人は、色とりどりの光が瞬く森の奥へ、再び足を踏み入れた。


---


木々の隙間を縫うように進むと、今度は、赤い光が地面を染めていた。


青のときより、光の粒が明らかに密集している。


「濃いな、これ」


カインが、目を細める。


「濃い方が、強いのかもしれない」


ノリアが、警戒するように、杖を構え直した。


円の中心の地面が、突然、割れる。


土煙とともに、飛び出してきたのは、複数本の触手を持つ赤黒い塊だった。


中心に、ぎょろりとした目が、一つだけ覗いている。


「気持ち悪いでござるな……!」


ワングが、思わず、後ずさった。


触手が、四方八方から六人へ、一斉に伸びてくる。


「散開!」


カインの声に、六人がそれぞれ跳んだ。


一本の触手が、ミラの足首をかすめる。


「っ……!」


「大丈夫か!」


ダダが、割り込み、盾で次の一撃を弾いた。


「毒、ではなさそう。でも、痺れる感じがする」


ミラが、足を軽く振りながら答える。


「近づかない方が、いいのかもしれない」


ノリアが、遠くから業火弾を放つ。


炎が、触手の一本を根元から焼き切った。


だが、切られた場所から、新しい触手がすぐに生えてくる。


「再生するのか……!」


「面倒でござるな、こいつは」


ワングが、間合いを取りながら舌打ちする。


「目、だ」


ネリスが、低く言った。


「中心の目、たぶん、そこが弱点」


「近づけば、届くか」


カインが、剣を握り直す。


「囮、頼めるか」


「任せろ」


短く答えると、カインが、手のひらを前へ向けた。


「頼む」


光とともに、あの巨躯が、姿を現す。


ゴーレムが、正面から、伸びてきた触手の束を両腕で受け止めた。


太い腕に、幾重にも触手が絡みつく。


「今の隙に!」


ダダが、叫ぶ。


ネリスが、地を這うように、塊の懐へ一気に踏み込んだ。


爪が、中心の目を正確に捉える。


塊が、けたたましい耳障りな声を上げた。


「もう一撃!」


ワングが、続けて間合いを詰める。


だが、塊が身をよじり、触手の壁で視界を遮った。


「見えない……!」


「真贋の瞳!」


カインが、迷わず唱える。


視界が、一変した。


無数の触手の奥、揺らぐ本体の輪郭がはっきりと浮かび上がる。


「そこだ、まっすぐ!」


「承知!」


ワングの刀が、まっすぐに、目の中心を貫いた。


塊が、大きく痙攣し動きを止める。


「終わらせる」


ネリスが、とどめの一撃を、叩き込んだ。


赤黒い塊がしぼむように縮み、やがて、光の粒となって消えていった。


---


ゴーレムに絡みついていた触手も、跡形もなく消えている。


「危なかったな」


ダダが、大きく息を吐く。


「目、見えてなかったら、まずかったでござるな」


ワングが、汗を、袖で拭った。


「真贋の瞳、こういう時にも使えるんだな」


カインが、少し驚いたように、自分の手を見つめる。


「大活躍、だったね」


ミラが、ほっとしたように笑いかけた。


足元には、赤いコインがいくつも散らばっている。


先ほどの青いコインとは、明らかに輝き方が違っていた。


「色によって、価値が違う、のかもしれない」


ノリアが、コインを一枚拾い上げながら言う。


少し離れた場所に、また、小さな箱が見つかった。


開けると、赤みを帯びた金属の欠片と、見たことのない繊維が収まっている。


「さっきの箱と、中身が、違う」


ネリスが、素材を、じっと見比べる。


「色ごとに、出るものが、決まってるのかもね」


ミラが、感心したように頷いた。


板を取り出すと、赤い光の粒も、先ほどより色を濃くしている。


「二つ、確かめた」


カインが、板をしまいながら、六人を見渡す。


森の奥には、まだ、緑や、黄や、見たこともない色の光が無数に瞬いていた。


「先は、長いでござるな」


ワングが、少し疲れた声で、それでも、笑いながら言った。


「長いくらいが、ちょうどいい」


ネリスが、短く返し、また、次の光へ足を向けた。


六人は、色とりどりの光が瞬く森の奥へ、再び歩き出した。

いかがでしょうか?


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よろしくお願いいたします。

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