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第2話

教室でのおトキさんは、誰とでも気さくに話をする明るい女の子だった。頭もよく、誰からも一目おかれる存在だったが、特にリーダーシップを発揮するわけでもなく、静かに、しかし力強く咲く、一輪の花を連想させる存在だった。

一方、僕の存在はこの真逆と言えるようなものだった。まあ、意地悪く言えば、いわゆる暗くて地味なやつだ。僕と、おトキさんが話をする姿を想像できる奴は、このクラスの中には一人もいないはずだ。


なんとなく、気まぐれで、おトキさんに声をかけたことがあった。

「いつも、どんな本を読んでいるの?」

おトキさんからすれば、よけいなお世話だっただろう。もしかしたら、怒られるか、無視されるかと思ったのだが、意外にも、彼女はにっこり笑ってこう答えた。

「天文とか、星とか、そんな感じ」

そう言いながら、今読んでいる本を見せてくれた。

本の表紙には

『日食、オーロラ、南十字星』

そう書いてあった。おトキさんによると、科学の本というよりは、旅行記らしい。作者は、日食とオーロラと南十字星を求めて、世界中を旅するのだそうだ。これらの趣味にはお金がかかる。大金持ちというわけではない筆者は、東奔西走してお金を集め、時には、ヒッチハイクのようなことをしながら世界中を駆け回り、三つの天文現象を見ることに人生の全てをかけている。


「私ね。いつか、皆既日食と、オーロラと南十字星を見たいんだ」

おトキさんが言った。

「南十字星は、すぐに見られそうだよね。南半球でも、毎日、夜は来るだろうし。オーロラは、がんばれば見られそうだ。皆既日食は、もっとがんばらないと難しそうだよね」

僕は、そんなつまらないアドバイスをした。それでも、おトキさんはちょっとうれしそうな顔をしてくれた。


『日食、オーロラ、南十字星』

この日から、この三つは僕の夢にもなった。


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