表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fortune-teller  作者: marimo
ため息
93/266

ため息3

「なんだか、変なんだよ」東条さんの友達の若田さんは本を読んでいて、東条さんをチラッと見ただけだった。

「なんだか、おかしいんだ」

「どうかしたの?」

「耳鳴りが聞こえる」

「耳鼻科に行ってきたら?」

「そうじゃない。あの言葉が耳に残っていて」

「それは耳じゃなくて頭に残ってるんだろう?」

「あいつに言われたことが聞こえる」

「あいつって?」

「真珠」

「ああ、占い師のお嬢さんだったっけ?」

「おかしいんだ。何度も聞こえるんだよ」

「それは重症だね」

「それに、何だか、こう、この辺りが」と、東条さんが胸の辺りに手を置いていて、

「ふーん、胸焼け?」と聞かれて、

「そうじゃなくて、酒じゃなくて、気分が何だか落ち着かないんだよ」

「珍しいな。お前はいつも明るく気にしない性質だったのに」

「分からない。何だか、この辺りに空洞があって」と手で円を作って見せていた。

「空洞?」若田さんが聞き返した。

「おかしい、どうしたんだろうな、俺」と東条さんが言ったら、若田さんが笑った。

「笑い事じゃないよ。こんなこと今までなかったのに」

「誰でも一度は経験することだと思うけど」

「誰でも?」

「そう。でも、珍しいね。尚毅はとっくの昔に経験していたと思ったよ。あれだけ女の子と付き合ってきたのにね」

「どういう意味だよ? 大体、俺はその辺のやつらが経験したと思えることはしてきている。そんなことは言うなよ」

「自信満々だね」と若田さんが笑った。

「でも、そうだね。多分、付き合う相手が変わってきたから、分かるようになったのかもしれないね」

「どういう意味だ?」

「そこにあるのが何なのか、尚毅なら分かると思うけど、あれだけ占いをしてきたんだし」

「見えないんだ。自分のことなのに占いもできない。どこか空虚で乾いた感覚が残って、相手の立場になって占えなくなってる」

「重症だな。でも、それに効く薬はたった一つしかないよ」

「薬?」

「そう、彼女に会ってくればいいんだよ」若田さんが笑ったら、東条さんが、

「もう、会ってくれそうもないよ」と寂しそうに言った。

「自分でも分かってるはずだよ。そこの当てはまるパズルのピースはたった一つしかないんだよ。彼女しかね」若田さんに言われて、東条さんが考えるようにしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ