ため息4
東条さんが学校に来てしまい、先生が近くにいたために、仕方なく、東条さんのところに行った。
「来てくれたんだな」
「行こう。ここだと人目があるから」と言ったら、
「そうだな」と言った顔がかなり元気がなかった。
「どうかしたの? 自信満々だった人が変だね」
「占いができない」と言ったので、噴出した。
「ありえないでしょ」
「声が聞こえてくるから」
「声って?」
「『さようなら』って」
「誰が言ったの?」
「お前」と言われて考えてしまった。この人は今まで、そういう言葉を言われたことがないのかもしれない。
「あなたって、自信満々の塊みたいな人だと思ってたけれど、意外と打たれ弱かったね」
「お前にだけは言われたくない」
「こっちも同じよ」とそっぽを向いた。
ケーキセットを奢ってもらいながら、カフェの個室で話をしていた。ここのカフェは区切りがいっぱいあって、個室が多くなっている。
「謝るよ」何度目かのその言葉を、しらけた顔で見たら、
「冷たい目線で見るなよ」
「魅力がないもので」
「完全に根に持ってるだろ」
「当たり前でしょ。好みじゃないとか言われるなら分かるけど、魅力がないって聞き捨てならない。たとえ思っていても口に出さなくてもいいでしょ。こっちだって思っててもそこまで言わないわよ。相手が失礼な人じゃない限りね」
「ごめん」珍しく素直に謝ってきた。
「どうかしたの? 自信満々の服はどこかに脱いできた?」
「俺、無神経だったかもしれないな」
「今更、言わないでしょ」
「浅木に怒られた」
「なんて?」
「気づいてないだけだってさ。俺には何も言わずにそばから離れる人も多いって言ってた。はっきり嫌いな部分を言葉に出してから別れるよりは、そっとしておきたい人もいるから、気づいてないだけらしい」
「浅木さんもそう思ってたんじゃない」
「希恵はそういうところで、言わない女だから」
「呼び捨てにしてるんだ?」
「時々ね。ただ、返事してくれない時があるけど」
「だったら、嫌なんだろうね。未練もなさそうね。他に好きな人がいるだろうし」
「噂を聞かないぞ」
「大学の人に内緒にしてるだけでしょ。社会人かも知れないね。大人っぽい人だし、美人だから、誰かいるに決まってるでしょ。あなたとだけ付き合ったとは、とても思えないからね」
「失礼だな」
「人には散々言っておいて、自分が言われると怒るの?」
「そうだったな。悪かった。謝るよ」
「ふーん」
「けんかしたままは嫌だし、お前がそばにいないと落ち着かないし」
「怒らせておいて、それは無理でしょ。そばになんていたくない」
「無理だったんだよ」
「なにが?」




