デジャヴ1
東条さんから電話があって、
「なに?」と聞いた。
「声が聞きたくなって」と言ったので、つくづくマメだなと思った。
「ちょうどいいや、聞きたいことがあって」
「なんだよ」とうれしそうだったけれど、ブルーオアシスさんの話をしたら、機嫌が悪くなり、
「近づかないほうが良かったな。そいつ、評判が悪いぞ。何人か引っかかってしまったらしくて、俺にまでぼやいてた。お守りが効かなかったってさ。だから、そのうちいなくなるパターンだ」
「どうして?」
「いつか、客だって気づくさ。多分、前の職業は違うだろうな、その人」
「なにしてたんだろうね」
「知らない。ビルのテナント料も格安のところみたいだし、でも、維持費も考えたら、それほどは儲からないと思うけどな」
「あなたのところは高そうだね。維持費が」
「それなりだよ。母親所有だから」
「でも、大変なんじゃないの?」
「善波さんが、仕切ってるからな」
「善波さん?」
「俺のところで経理を担当してる。時々、食事を作って一緒に食べるよ」
「家族ぐるみなんだ?」と聞いたら、しばらく黙った後、
「親父の女だから」と言われてむせてしまった。
「そうじゃないと、経理なんて任さないだろ」と簡単に言い切られて、複雑そうだなと思った。
「あなたは湿度が低そうだね」
「なにが?」
「ブルーオアシスさんは、心と裏腹に表面が優しげだった。心は冷たくて寒すぎて、風邪を引きそうになるぐらいで、湿度が高い感じで、気分が悪くなって」
「湿度って、そういう意味か? どうせ、俺は明るいよ。だから、モテるし」
「はいはい。女性もいっぱい寄ってきそうだね」でも、ブルーオアシスさんは明るくて前向きな女性は一人も寄っていかなさそうに見えた。むしろ、ちょっと陰のある寂しい女性がそばにいそうだった。
「正反対の性格かもしれないね」
「俺とか? 一緒にするな。俺はそういうのは嫌いだよ。女子高生をだましてお守り買わせて、聖水とか売りつけるのはちょっとなあ。信じて買った子がかわいそうだろ」
「あなたにもてあそばれた子の方がかわいそう」
「あいかわらずかわいくない言い草。それだから、恋愛できない」
「雪人さんと仲良くなるもの」
「どこがだよ」
「だって、話をしたから」
「話? もしかして、あいつの家に行ったのか?」と聞かれて、しまったと思い黙ったら、
「図星だな」と呆れた声を出していた。
「だって、理系大学の就職先の職業事情をリサーチしたくて」
「お前にしてはうまく口実作ったよな。でも、色気がないな」
「うるさいの。今度もまた教えてくれるって言ってるからね」
「ふーん、でも進展はしないだろうな。あの人は親切で教えただけ。お前は年下のかわいい子止まりだな」
「うるさいの」
「お前の場合はゆっくりすぎるね」
「いいでしょ。じゃあね」と切ったら、
「いきなり切るなよ」とぼやいていたけれど切った後なので、私知らなかった。




