湿度の高い男2
帰ろうと思ったら、学校のところで誰かがいるのが見えて、急に背筋が寒くなり立ち止まったら、
「どうした?」そばにいた神宮寺に聞かれて、
「怖い」と言ったら、
「なんだよ」と驚いていたら、
「あ、あの子です」と言う声がして、そちらから人が歩いてきた。私のそばに来てから、
「ホワイトローズムーンさん」と呼ばれて気分が悪くなりそうで、ブルーオアシスさんの顔を見たくなかったけれど、
「なんですか?」とかろうじて聞いた。
「君を探していたんだよ」と言われてしまい、
「来ないでくださいとお願いしたはずです」
「いや、君は来てほしかったはずだ」と言い出して、その言葉の言い方が、ゆっくりとしていながらも湿り気があった。そばにいると寒気がする。
「誰だ?」神宮寺に聞かれて、
「謎の占い師もどき」と答えたら、相手が笑っていた。でも、心では笑っていないと感じてしまった。怖い。この人、駄目だなと思った。
「月野真珠さん、すぐに分かったよ。この学校の人に聞いたら、君の名前がすぐに出てきた。かなり有名みたいだね、君は。高校生占い師として、この近辺では有名みたいだね」
「いえ、無名です」と反論したら、相手が声に出さずに笑っていて、
「よく当たると聞いたよ」
「いいえ、当たりません。偶然です」
「面白いことを言う人だね。普通は逆を言いたがる。『当たります』と言うものだろう?」
「あなたはそう言うのですか?」と聞き返したら、
「君に会いたくなってね」とはぐらかしていた。
「会いたくなかったです。お帰りください」
「どうして?」
「風邪を引きそう」と正直に言ったら、
「風邪とは穏やかじゃないね」と笑っていた。陰気な笑い方で、クールではなく限りなくコールドに近い寒さがあった。
「君にどうしても会いたかった。段差のことはどうして分かったのか聞きたくて」
「だから、偶然です」
「そうじゃないな。君は『段』と自分で言い出した。しかも手で高さまで示した。普通の占い師にはできないだろう」
「いや、それも偶然です。あのビルのそばにあった段差だと思っただけで」
「じゃあ、帰るときに気をつけてと言った理由は?」
「それは自分が、転んだから」と嘘をついた。相手がじっと私を見ていて、怖かった。
「帰ってくれませんか。二度と来ないでください」
「いや、君は僕に会いたくなる。絶対に」また、暗示効果を使った。気の弱い人、こういう断定言葉に弱い人には効果があるかもしれないなと思った。ただ、私はこの人の湿り気がどうしても駄目で、
「会いたくない、今、この時点で、無理です」と断った。相手はじっと私を見ていて、その時間が長く感じられたけれど、
「悪いけれど、帰ってもらえますか。これ以上付きまとうなら、学校に連絡をして」と神宮寺が言い出して、
「それは困るな。ここの生徒はお客が多いから、出入り禁止にでもさせられたら困る。じゃあ、また、来ます。君の家に」と言われて、
「絶対に来ないで」とすぐに言った。
「どうして?」相手が悲しそうな寂しそうな顔を作っていたけれど、「気」は反対だと思えた。
「やめてください。表面と中身を変えるのは」と言ったら、ちょっと戸惑っていたけれど、
「そう、やっぱりね」と言ってから、戻っていった。彼は歩いて来たようだった。
「あれ、なんだよ?」と聞かれて説明した。
「ふーん、それはちょっと困ったやつだな」と言われて、
「寒い」とだけ言った。
「それほど寒くはないぞ」と言われたけれど、
「風邪を引きそうだから、帰ろう」と促した。
「さっきの男も東条とか言うやつのライバルか?」と聞かれて、
「さあ、名前しか知らないと思う。あの人とは違うと思うから」とだけ答えた。東条さんと比べたらあまりに違いすぎる。服装は黒と青が基調だったけれど、それほど高く見えない。彼はお金を持っているようには見えなくて、お互いに知らなさそうだなと思った。
「正反対のタイプかもしれない」
「正反対?」と、聞かれたけれど、何だか嫌だった。




