ブルーオアシス1
東条さんが学校にやってきた。
「なに? また、突然やってくる」
「電話したら、お前は逃げそうで」
「だからって、直接来ないでよ」
「こうやって、マメに顔を見せておくと、相手に誠意が伝わるかと思ってね。親近感も沸くだろうし」
「知らない」とそっぽを向いた。
「お前は全然進歩が無いな。『うれしいわ、会いたかったの』と言えないか?」
「言えない」と言い切ったら、
「それじゃあ、恋は進展しそうも無いな」と呆れていて、
「ちゃんと言ったもの」と言い返してしまった。そうしたら、
「ふーん、それで?」と聞かれてにらんだ。
「お前の場合は一番駄目ケースだな。恋愛初心者」雪人さんとのやり取りを、言葉巧みに誘導されて聞かれてしまい、そういわれてにらんだ。
「どこが駄目よ」
「その場合は『デートしてください』じゃなくて、『何が好きですか?』と、さりげなく聞いておけよ。映画、絵画鑑賞、音楽鑑賞などだろうな、あの人の場合は」
「なに、それ?」
「デートに誘う前の下調べ。それで、そういう情報を仕入れておいて、『○○と言う映画、もしくは展覧会があるので、良かったら行きませんか』と誘う。もちろん、日時を付けて」
「日時?」
「そう、『今度の土曜日に』と付けたら、相手が、それで考えるだろう。『土曜日はちょっと』と言われたら、『じゃあ、いつならいいでしょう?』と聞いて、何とか約束を取り付けるものなんだよ」
「へえ、なるほど」
「困ったやつ。これから、そうしろ」
「え、だって」
「一度断った後だから、今度は相手はお前に悪いと罪悪感を持っているから、付き合ってくれる可能性は高くなったからな。だから、誘え。何度か誘って駄目だったら、脈なしとして諦めろ」
「ふーん、いつもそうやってるんだ?」
「俺はめったに誘わない。誘われることばかりだから」
「はいはい。占い関係で誘ったんでしょ」
「占い? ああ、インスピレーションではデートしてないぞ」
「え、だって、私には」
「お前は特別だって言ったろ。大概、すぐに駄目になるから、デートまで進展してない」
「学校に何人か連れて行ってたんでしょ?」
「逆。勝手に来たケースが何回かあり。全部、お客。一人か二人ぐらいだけだな。学校に連れて行ったケースは。一人は小学生で、生意気でませた子だった。疲れたから、すぐやめた。もう一人は、俺より年上だったけれど、ちょっと暗くて、波長が合わなくてやめたし」
「ふーん、波長って?」
「だから、俺の場合は相手との相性があるんだよ。波長が合う子じゃないと無理。全部そろってるのがお前なんだよ」
「全部って?」
「インスピレーションも見た目も波長もそれから性格も」
「嘘ばっかり。見た目は駄目だししてたじゃない」
「違う。お前は見た目に気を使わないから注意しただけ。絶対にかわいくなるだろうなと思ってた。でも、予想以上に綺麗になったから驚いただけ。お母さんに似てるよな、お前。化粧したら、きっとお姉さんよりは声を掛けられるだろうな」
「まさか」と笑った。




