変わったお守り1
雪人さんとは会っても、挨拶程度だったのが、あれから何度か話せるようになってうれしかった。雪人さんは特に前と変わらない態度でいてくれて、それもありがたかった。
川尻さんも元木さんも結局、家には来なくて、
「ああいう人って、ああいうことになっても反省しないのかもね」と母が呆れていたけれど、
「関わりたくないから、いいよ」とため息をついた。
「真珠、どうしても占い師になるつもりなの?」と聞かれて、
「なりたいと思ってるから勉強中」
「霊感が無くなっても?」と母に聞かれて、
「どういう意味?」と聞いた。
「私も昔あったのよ。ひどく傷つくことがあって、しばらく占いができなかった。占えないってことは自分の価値も落ちてしまったように感じてね、自暴自棄になったから。真珠は勘が良くなったり悪くなったりの起伏が激しいでしょう? それにショックなことが起きたら、勘が鈍ったままになってしまう事態もありえるの。だから、堅い職業を選んでくれたほうが、私はうれしいわ」
「うーん、そう言われても。私、何もできないよ」
「今からでもいいから、別の職業も考えてみてほしくてね」
「興味があるからやってみたいし」
「大変なのよ。元木さんのときに気分が悪くなったでしょう? そういうこともありえるわよ。大丈夫?」
「そのときに考える」
「そう言うところは私に似てるわねえ」
「お父さんもそうだったよ」
「そうだったわねえ。おおらかで優しくてね」
「お母さん、辛い?」
「あら、なにが?」
「お父さんのことを私がこだわり続けているから、嫌なのかと思って」
「そんなことはないわ。あの人がいないことは確かに寂しいけれど、私はあの人を信じているから。だから、自分から心配をかけるような人じゃない。訳があると思っているからね」
「そうだね。お父さん、優しい人だものね。何の説明もなしにいなくなってしまうような人じゃない。お姉ちゃんは、貧乏が嫌だから逃げ出したって言ってたけれど」
「それだったら、違う方法を選ぶでしょうね」
「違う方法?」母はそれには答えず、
「自分がやりたいというならやってみなさい。ただ、困ったことがあったら相談しなさいね。自分で対処できないことっていっぱいあるだろうから」
「お母さん、強いね。東条さんが言えないようなことを川尻さんにズバッと言って、驚いた。逆恨みされるかもしれないのに」
「だって、言わないと納得できないのよ。ああいう人に屈したくないの、私。お店をつぶすようなことをしたら、絶対に許さないわ」
「お姉ちゃんとそっくり。強気だ」
「真珠だって、そうじゃない」と言い合ってから、ふと気になって、
「聖水って何?」と聞いた。
「聖なる水のこと?」
「それって、効き目があるの?」
「どういうこと?」と聞かれて、東条さんから聞いた話を教えた。
「ああ、それね。多分、あの人ね」と言ったので、
「なに?」と聞いた。
「ちょっと前から、噂にはなっているわ。割と顔のいい男らしいのよ。それで若い女の子が見た目にだまされるのか、言葉巧みに買わされるのか、ちょっと変わったものを売っているの。聖水は聞いてないわね。私が聞いたのは復縁ができるお守りとか、そういうものかしらね」
「それって、効き目はどうなの?」
「暗示の効果はあるかもしれないけどねえ。そこまでは無理でしょうね。お守りを持っていることで安心感や勇気を与えられて、それで力を発揮するってことはありえると思うの。ただ、それとの関連性は証明できないでしょうから」
「そう」
「どうかしたの?」
「私が動けないとか、訳の分からないことを言っていたから」と、神宮寺にあこがれていた子のことを教えた。
「そう、困ったわね。占いを金儲けにしてしまっているケースでしょうね」
「金儲け?」
「必要以上にお金を稼ぐってことよ。そういうのは困るわね。私たちまで言われてしまうから」
「そうだね。お金貯めないといけないな。また、バイトしないと」
「あら、またなの?」
「ここではバイト代が知れているだろうから、また、どこか別のところで」と言ったら、
「実はお客さんが何人か問い合わせがあったのよ」
「問い合わせ?」
「多分、宝陽の関係者だと思うわ。就職のことで相談したいって、何件か来ていたわよ。今は真珠は受付をしてないからと答えておいたわ」
「へえ、そうなんだ。なんでだろうね」
「あなたの場合はそういう人も増えるかもしれないわね」
「そういう人?」
「林、森の話は他の人にはしてはいけないわ」
「え、どうして?」
「言葉が浮かぶと言うのは珍しいケースだと思うから。私や秋さんはそこまでは浮かばないし」
「偶然でしょう?」
「そうでしょうね。でも、人はそう取らないわ。そういう不思議なことには人は寄ってくるものだからね。学校でも内緒にしてね」
「それは分かってるけれど」
「真珠はもう少し実力をつけてからじゃないとね」
「実力かあ。そう言えば、東条さん、相手の考えていることを、その様子から知ることができるって」と言ったら母が黙った。
「あれ、なに?」
「あの人、父親に似ているのね。だから、真珠にこだわるのかもね」
「どういう意味なの?」と聞いたけれど教えてくれなかった。




