インフルエンザ2
雪人さんの看病をして、疲れもあって寝てしまい、
「真珠ちゃん、真珠ちゃん」と言う優しい声で目を覚ました。
「風邪を引くよ。僕のがうつってしまうかもしれない。インフルエンザのような気がするからね。熱も高いし」と言われて、雪人さんが起きていて、
「あ、熱は?」と聞いた。
「体温計、体温計」と探していて、
「大丈夫だよ。あとは自分でやるから」
「さっきまですごい熱だったんですよ。心配ですから」と言ったら、
「ありがとう」と優しく言ってくれて、やっぱり好きだなと思った。
「とりあえず、熱を測りましょ」と体温計を見つけて渡した。熱を測って体温計のアラームが鳴って雪人さんが見て、
「大丈夫みたいだね」と言ったのでほっとした。
「お腹空きませんか? 何か食べ物を」
「それより、家に帰ったほうがいいよ。もう、遅いから」と言われて時計を見た。10時は過ぎていた。
「寝ちゃったからですね。大丈夫です。あと少しだけ」
「でも、お母さんが心配するよ」
「お母さんは夜は遅くまで起きてますから。姉は美容に悪いと言いながら長電話はしてますし」と言ったら雪人さんが穏やかに笑っていて、私も笑い返した。
「ごめんね」と言ってくれて、
「そばにいられるだけでうれしいから」とつい言ってしまった。雪人さんがちょっとだけ黙って、
「真珠ちゃん」と私を見ていた。
「いいんです。雪人さんが他の人を好きだとしても、私は雪人さんが好きだから」と言ったら、相手が驚いていて、
「え、でも、……」と困った後に、「他の人?」途中で、驚いていて、考えるようにしていた。
「え、あの、この間、来ていたかわいらしい人は」
「この間? ああ、真澄ちゃんのことだね。彼女は近所に住んでいる子で」
「え、でも許婚だと」
「ああ、違うよ。あれは親がいつかそうなってくれたらっていう口癖でね」
「口癖?」
「そう、ああ、こっちだとないかもしれないね。僕のところでは割とそういう話はするよ。いつか、お嫁さんに来てと言う話。僕以外も何人か言われているらしいから」
「はあ、でも、恋人じゃないんですか?」
「恋人?」と考えていた。
「違うんですか?」うれしくなって、つい、急いで聞いてしまったら、雪人さんが「ケホケホ」むせていて、
「あ、ごめんなさい。寝てください」と慌てて言った。
「大丈夫だよ。彼女は小さいころから一緒に何度か遊んだけれど……、でも、そうだ、勉強は教えていたよ」
「デートは?」
「いや、してないよ。僕は読みたい本があって、休日はそれを読むことも多くて」うーん、真面目だ。
「じゃあ、恋人じゃないんですか?」と改めて聞いたらうなずいていたので、
「そうなんだ、良かった」と思わず言ってしまってから、
「あ、ごめんなさい」とうつむいた。
「真珠ちゃん」雪人さんが言ってから、
「わたし、雪人さんにずっとあこがれていたんです。だから、デートしてください」と、恥ずかしかったけれど勢いで言ってしまった。雪人さんはこちらをじっと見てから、
「ごめん」と謝ってきた。
「色々とやらないといけないことが重なっていて、時間が取れそうもないよ。卒業してからも、ここを引き払わないといけないし」と言われてしまい、落ち込んだ。やっぱり、もっと早く申し込めば良かったかもしれない。見るからに落ち込んでいたのが見えたのか、
「ごめんね」と済まなさそうに謝ってくれて、
「いいんです」と明るく振舞った。
「せっかく言ってくれたのに、ごめん」と言ってくれて、でも、何だか雪人さんにちゃんと言えたことだけで満足だった。
「じゃあ、おかゆを温めてきます。それを食べたら、帰ります」
「ありがとう」と言う言葉だけでとても心が温かくなった。




