男の目2
「だって、テレビでパフォーマンスする占い師は演出してるじゃない。それと一緒」
「どういう意味?」
「占い師として、そういう人を演じてるってことでしょう? 女性客相手だから、それに合わせている。でも、真珠と接しているときは素ってことなんじゃないの。時々いるよ。本音と建前の落差が激しい人」
「そうなの?」
「すごく勉強ができる人なのに、裏の顔は子供っぽかったとか、変な趣味を持ってたとか。大人っぽく見せておきながら、甘えんぼなところがあったとか、マザコン気味で引いたとか」
「えー、そうなの?」
「真珠は裏表がないからねえ。私はあるでしょ」
「自分で言い切らないでよ」
「でも、女の子でも多いと思うけど。男性の前だと甘えて、普段はそれほどでもない。女の子同士だと、面倒くさがりなのに、男にはつくすとか」
「はあ、良く分からないかも」
「真珠はそういう部分がないからね。男に尽くさないでしょ。恋愛して、のめり込まないだろうし」
「そう言われても」
「のめりこみの子は他のことがどうでもよくなるほど、その人しか見えなくなるらしいの。ただ、冷めるのも早いからついていけないって」
「誰が?」
「友達の友達の話」
「なるほどね。熱しやすく冷めやすいんだ」
「すごいよ。昨日まで好きだ好きだとわめいて、次の日にはもう冷めたって言うらしいから」
「相手がかわいそうじゃない」
「そういうことには気が回らないの。自分だけの世界で恋してるんでしょ。相手のことを思っていたら、できないだろうね」そうかもしれない。
「相手のことを思うのが愛、自分だけでもできるのが恋だって、誰かが言ってた」
「そうかな?」
「いいんじゃないの? 時期が来たら分かるよ」
「雪人さんとデートしろって言われた」
「誰に?」
「東条さん」
「へえ、自信があるんだ?」
「自信?」
「無ければ、ライバルと付き合えとは言わないよ。そっちにずっと行かれたら困るから。自分のほうに戻ってくると分かってるから言ってるんでしょ。東条さんって、かなり慣れていそうだね」
「そうかもしれない」
「じゃあ、がんばって誘ってみたら」
「そうだね。農工系の大学の人がなる職業ってなにかあるかなあ?」
「なに、それ?」
「職業事情の調べもしたいから」
「真珠って、意外とそういうタイプだよね」と笑われてしまった。
「農工系大学の職業ねえ。色々ありすぎるだろ」神宮寺に聞いたら、考えてはいてくれたけれど、
「メーカーで研究したりが多いかもしれないなあ。あとはそうだな、そのまま大学に残って研究とか、あとはどうだろうな?」
「そういう人の悩みって何?」
「研究がうまくいかないってことぐらいしか、あとはそうだな、出会いが少ない」
「え、そうなの?」
「男が多い職場だと少なくなるぞ。だから、二次元に走る場合もあるし」
「二次元?」
「アニメ、漫画など」
「ああ、そっちね」
「アニメの女の子は理想的だからな。かわいいしスタイルはいいし口答えしないし、男好みに作られているし」
「はあ、そうなんだ? アニメーターって、もうかるの?」
「無理。忙しい割には、そこまでは無理だろうな」
「声優は?」
「そっちも一部の人気のある人以外はそれほどは無理だと思うけど、よくは知らない」
「私って世間知らずもいいところだね。あいつは知りすぎてるぐらいなのになあ」
「東条さんか?」とにらまれて、話をはぐらかすように、
「そう言えば、武道じゃなくて護身術を習ってたって聞いたよ」と教えた。
「へえ、そうなんだ。なるほどな。俺も習おうかな」
「なんで?」
「やられたらやり返す」
「武士だ」
「なんだよ、それ?」
「東条さんが神宮寺は武士だって。色が黒いだけの見た目のイメージでしょ」
「武士ねえ。あの人は武士にはなれないかもな。軟弱そうな金持ちの息子としか見えない」そう言われたら、そうかも。
「神宮寺からはどう見えるの?」
「さあな、あいつのことは話したくない」
「そう。ごめん。男から見たらどうなのかと思っただけ。女の人には受けはいいみたいだけど、男だと逆なのかと思って」
「それはそうだろ。男はモテたいと思って努力してる場合が多いぞ。だから、モテるやつは鼻につく。上昇志向が強ければ強いほど嫌だろうな、ああいうタイプ」
「なんで?」
「要領が良さそうで、それほど努力しなくても、いい思いができるだろうからな。女はいくらでも寄って来るだろうから」
「そう?」
「顔が良くて背も高い、乗ってる車もいい、しかも占い師」
「いや、占い師だからってモテないでしょ」中年のおじさんの占い師も多いし、見た目に気を使ってない占い師もいくらでもいた。
「若い女性は占いに興味があるから、今のうちはモテるに決まってるだろ。兄貴の友達、合コン用にわざわざ手相を勉強してるってさ」
「手相?」
「それだともれなく女性に近づけて、手もさりげなく触れるってさ」
「動機が不純すぎる」
「でも、そういう努力をしてしまうもんだってさ。男はモテたい願望は強いから」
「女だって同じだよ」
「いや、一部の女性はそうでもないだろ。男子に駄目だしばかりしてるし」と言われて考えてしまった。




