男の目1
川尻さんの事件が良く分からなくて、神宮寺に聞いた。
「ああいうのって、どうなるの?」
「そうだな。結構、ダメージを受けると思う。政治家はイメージも大事だし」
「会社のほうは?」と聞いたら、
「それも同じだよ」と言われて、占いのとおりになりそうだなと思った。
「あの事件で、森さんって言う人はいたのかな?」
「森? さあ、知らないな。そういう情報は出てきてないぞ」と言われて、やっぱり偶然なんだろうなと思った。林ってどこにでもいる名前だし、森って言うのも偶然だろう。母はそう言って流していた。
「どうかしたのか? そういう話題を出してきて」と言われて、
「その人の子供が、東条さんと同じ大学で、ちょっと顔見知りだから」とだけ答えた。いくら、強引に占わされたとはいえ、一応、あれでも、客ってことになるだろうからと思って言えなかった。
「ふーん、何かあったら言えよ」元木さんと友達であの事件のときにいた人とは教えられなくて、
「ちょっと元気が出てきたところなのに、色々ある」
「焦らなくてもいいぞ。占いができなくたって、いいだろ。それで」
「気分が安定している人がうらやましい」
「動じない人はいるかもしれないけど、訓練でそうしてるのなら別だけど、それ以外だと鈍感なだけかもしれないぞ」と言われてむせた。
「鈍感だと占いできないだろうから、それも困るだろ」そう言われたら、そうかも。
「程よく鈍感ってことがベストかなあ?」
「自分が考えたくないことは流す。重要なことだけピックアップ」
「都合がいいね」
「そうしないとやってられないだろ」と言い切られ、たしかに、川尻さんといい東条さんといい、そういう人かもしれないなと考えていた。
雪人さんのことでの落ち込みが減り、徐々に占いができるようになった。いくら相手がいても好きだからしょうがないと開き直ったからだろう。神宮寺は何かと心配して、一緒にいてくれることが多くなったためか、付き合っているという偽情報が出回っていて、訂正しても、相手が邪推することが多かったために、そのうちにほっといた。
「私なんて、いくら言われたか分からないぐらいだからねえ」怜奈ちゃんが淡々と言って、
「そうなの?」と聞き返した。
「ちょっと話したぐらいで、気があるだの、勝手に言ってくれる男子がいるからね」
「かわいいと、そういうのもあるんだね。男子って、どうして、そういうことを言いふらすんだろ」
「自慢したいだけでしょ。『あの子は俺に気がある』って何度か聞いたよ。でも、ほとんどが勘違いなんだよね。言いふらす人に限って、そうだと思う」
「大村君は違うって聞いたけど」
「でも、最近は学校内では人気が下がってるよ。ああいうのって、そのうち、性格がバレちゃうから長続きしないもの。いくら、顔が良くても自分中心の男って、つまらなくなる」そばに人がいなかったから、怜奈ちゃんがそう言っていたけれど、一部には根強い人気がある。
「自慢する人って、よほど自信があるんだろうね」
「ああ、それね。それって、逆パターンもあるって」
「逆?」
「そう。自信があるなら、自分で言わなくてもいいものじゃない? ただ、言いたいだけの無邪気な男が言っているパターンもあるけど、自分でそこが気になっているけど、少し自信が足りない場合は、自分で言って補うんだって」
「はあ?」としか言えなかった。
「意味不明」
「だからさあ、そういう人って、ものすごくできて、自他共に認めていて、ほっといても誰かがほめてくれるレベルの人じゃないってことみたいだよ。それより少し落ちるランクで、あと少しの部分を自分でほめて補ってるらしいから」
「良く分からないんだけど」
「と、鴻上さんの解説ね」
「納得。彼女ならそういうことも分かるだろうね。私は分からない。いまいち、東条さんが分からないんだよね。行動が意味不明すぎて」かわいいと言ったり、魅力がないと言ったり、家まで運んでくれたり、でも利用したり、自己中に見えたり、でも、優しかったり。分からない、つくづく分からない。
「そう? あの人の場合は本質を見せてないというか、演じてるパターンかもしれないよ」
「演じるって?」
「だって、占い師でしょ」と言い切られて、
「何の関係が?」と驚いた。




