森、林1
母から電話で、「林、林って、うるさいのよ」と言ったときは何か分からなかったけれど、とりあえず家に戻ることにした。お店の前に東条さんの車があって驚いた。私が家に入ったら、みんながいっせいに見てきて、
「何とかしろよ。お前が言ったんだろ。『林』に気をつけろって、だから、お前のせいだ」と言い出した人を見て、驚いた。川尻さんだった。ただ、あのときの高飛車で尊大な態度がなくて、焦っているようだった。
「何のこと?」余りに理不尽な言い方で、変わってないなと思っていたら、東条さんがよってきて、
「真珠に近づくな」と私の前に立った。かばうようにしてくれて、ちょっと驚いた。
「それどころじゃない。お前は引っ込んでろ。俺の言うなりのくせに。そうじゃない、親父が親父が」と支離滅裂で、
「ニュースを見たよ。お前の父親は大変そうだな」東条さんが言った言葉の意味が分からず考えていたら、
「そうだよ。林。林のせいだ」『林』のせい? アウトドアでも行ったんだろうか?
「林って、そっちなら早く言えよ。森って言うからてっきり場所のことだと思っただろ」
「林秘書のことか?」と東条さんが聞いていた。「ハヤシヒショ」と言う言葉を聞いて、避暑地に林って言う名前がつくんだろうかと考えていたら、
「あんなこと、絶対に嘘だ、林ってやつが悪いんだ。嘘をついている」と怒りながらにらまれて、なるほど、林って、林さんね……と思った。そう言われて、そう言えば、「林」と「森」という、言葉で浮かんだことを思い出した。場所だったら、その情景が浮かぶはずだ。あの時はなぜか、「林」と「森」と言う言葉として浮かんだから、場所じゃなくて人の名前だったんだなあ……とゆっくり考えていたら、
「おまえのせいだぞ」と理不尽に言い出して、本当に人のせいにする人だなあ。反省しない……とため息をつきたくなった。
相手が言いがかりを付けてきて、東条さんが色々と川尻さんとやりあったけれど、川尻さんは私をにらんで、
「お前があんな占いをするから」と言われても、
「そう言われても、そう出たから」としか言えなくて、
「それは占い内容は関係ないでしょうね」母が淡々としながら口を挟んでいた。
「なんだと?」川尻さんが母をにらんでいたけれど、
「ニュースはチラッとしか見てないけれど、あの場合は占いは何も関係ないと思うわ。真珠の占いが無くても、同じ結果だったと思う」と母が言っても、川尻さんは納得しておらず、
「お前のせいだ」と指を指されたけれど、東条さんがかばうように隠してくれて、
「違うだろうな。時期的にもっと前に探りは入っていたと思うけれど。真珠の占いは予言みたいなもので、お前の父親とは何の関係も無い。帰って確かめたほうがいいんじゃないのか。こんなところに言いがかりを付ける前に」東条さんが川尻さんにそう提案したけれど、
「もう一度占え。それで結果を変えろ。今すぐだ。そうしないと困る」と言い出してびっくりした。さすがにそれは無理だと思うと言いたくても、相手が冷静じゃなさ過ぎて、どうしていいか分からない感じだったけれど、
「お帰りください。真珠に占ってほしいと言う前に、やることがあるでしょう。少なくとも、あなたのお友達を連れて、正式に本人たちが謝ってくれてからの話でしょうね」
「何だと、それは話はついたはずだ。元木がそう言っていた」と怒鳴って、
「いいえ、謝罪をしてきたわけではありません。真珠にあなたたちは直接は謝ってはいない。代理人が謝罪をしてお金を置いていっただけ。誠意があったとはいえないと思います」母にはっきり言われて、にらんでいた川尻さんが私を見た後、東条さんを見て、舌打ちしてから店を出て行った。
「塩」と母に言われて、
「はいはい」と動いた。




