やっぱりそっち2
「面白かったね」おもちゃ屋から出たら、
「ほらな、そうだろ。絶対に喜ぶと思ったんだ」とうれしそうだった。
「あなたも子供みたいだね。意外とああいうのが好きなんだ? 小さいころから山ほど買ってもらったんでしょ」
「それなりにね」
「あなたは恵まれて育ったように見える。性格も明るくて、ああいうおもちゃもいっぱい買ってもらって、女性などにちやほやされて大きくなって」といったら黙ってしまった。
「どうかしたの?」と聞いた。
「ちやほやされてって、どうして思う?」
「だって、プロキオンの女性にかわいがられたんじゃないの? 上の階に住居があるから、遊びに行けるし」
「遊びに行けるわけないだろ。子供の行けるところじゃないから、親から禁止されていたから」
「仲良くしてなかったの?」
「いや、時々、話し相手はしてくれる人はいたけれど。でも、下の階では遊んでないよ。あそこは仕事場だし。それに、恵まれてなんていないかもしれない」
「なんで? あれだけ豪華な家具に囲まれて育って、洋服だっておもちゃだって高級なものだったんじゃないの?」と聞いたら、
「それなりだよ」
「贅沢だよ、それ。やっぱり合わないね。お金持ちの人はお金がない人の気持ちって分からないって、母が言っていたの。一日の食費にも事欠くような人を占うことになったら、どうするの?」
「そういう人は、まず自費で占いは来ないだろ。食費に回すから」と言われて、そう言われたら、そうだなと考えていた。
「それに物質的に恵まれていたからといって、楽しいとは限らないだろ」
「学校は宝陽だから、お金持ちの友達がいっぱいいるんでしょ」
「お前は誤解してるな。宝陽にも色々いるぞ。大学からは奨学金制度を利用して、それほど金持ちじゃないやつがいるよ。友達だけど」
「友達?」
「若田と言って、大学から宝陽だよ。成績は優秀だけどのんびりしてるやつで本ばかり読んでる。星の話で盛り上がるけどね」
「星?」
「プロキオンの由来を調べただけ。あいつも似たような本を読んでいて、それで仲良くなっただけだよ」
「ふーん、そうなんだ。意外。遊び人の友達ってどんな人かと思ってたの。みんな、合コン、飲み会、デートしかしてないと思ってた」
「そういうやつもいるけどな。バイトしてるやつも混じるぞ。俺だってしてるし」
「でも、お小遣いもたっぷりなんでしょ。洋服だって親が買ってくれる。私とは違うから」
「お前の親は、……ごめん」と謝ってくれて、
「父がいたときは余裕があったの。母も仕事がいっぱいあって、おじさんだって病気になる前だったし、お店はそれなりにお客さんが来てくれていたから。父はコーヒーを入れるのも上手で料理も上手だったの」
「ふーん、珍しいタイプの父親だな。おじさんって、誰だよ?」
「ああ、今は東北に住んでる。知り合いと農業をしてるの」
「病気してから東北に行ったのか? 身体は大丈夫だったのか?」
「それがあったから、自分の夢を叶えたいって。それで向こうに行ったの。自分の食べる野菜を作り、自分の最後を綴りたいって」
「何を綴るんだ?」
「詩。それから自分史を書くって言ってた。奥さんと一緒に住んでる」
「奥さん?」
「籍は入れてないみたい。相手が色々あるみたいで、お母さんからそう聞いた」
「ふーん。お前の家は色々あるんだな」
「親戚づきあいがそれだけだから、楽ではあるけど」
「それだけ? 他にはいないのか?」
「父の親戚は付き合ってない。理由は聞いたけれど、教えてくれなかった。母の両親は事故で亡くなっていて、おじさんに育てられた。だから、私にとっては大おじさんだけど」
「そうか、苦労をしてるんだな。お前の母親も」
「だから、お姉ちゃんはお金持ちと結婚して家を出て、いい暮らしを夢見てる」
「無理だろうな」
「決め付けないでよ。がんばってるよ。ものすごく努力してるって、母が言ってたし」
「ああ、それは雑誌の情報だろうな。でも、それだけだと無理だよ」
「また、決め付ける。だって、あれだけ美人だから」
「うーん、確かに美人だけど。男も女も敬遠するタイプだろうな。性格が顔に出てしまっている。だから、彼女が望んでいる人には相手にされないタイプだろうな」
「え、どういうこと?」




