それぞれの育ち方1
カラオケを東条さんに無理やり誘われて一緒にいた。ずっと彼が歌っていて、デュエットも断った。
「あなたのキャラと合ってないよ。それにまだ?」カラオケのアニメソングについていけなくて、終わるのを待っていた。
「お前の世代の歌だと言うのに、疎いやつ」
「無理。男の好みのアニメを選択されても」
「女の子にも人気が高いと言うのに。お前、アニメーターになりたい、声優になりたいって相談受けたら、どうするんだよ?」と言われて、
「それは、適当に膨らまして、世間一般的なことで話す」
「無理だな、それは。アニメーターって、どれぐらいの給料か知ってるか? 声優はオーディションを受けないといけないしね」
「はあ」
「ほらな。世間知らず」
「どうやって調べたらいいの?」
「本は?」
「本を読むのは眠くなっちゃうんだよね。興味がないと」
「お前、数学とかの教科書を読んで、『眠くなるから、勉強できない』と言い訳するタイプか?」
「なに、それ?」
「女子中高生からの相談を受けて話しているときに、そういう言い訳していた子が何人かいたんんだよ」
「なんとなくは、分かる」
「教科書が漫画なら読んであげてもいいってさ」
「それは共感できるかも」
「でも、それすら読まない子もいるみたいだけど」
「へえ、そうなの?」
「漢字が読めない子がたまーに来るぞ」
「まさかあ」
「時々、いるよ。そっち方面に興味がない子。おしゃれと芸能人の話題になると他の追随を許さないぐらい博学なのに、勉強方面は興味がない子」
「やる気がないなら、仕方ないじゃない。勉強が必要じゃない仕事を選択すれば」
「そうか? 物覚えが悪いと大変だと思うからなあ。どう、アドバイスしていいか分からないんだよ。俺、小さいときから勉強は割とできたから」
「高飛車だなあ。私はごく普通」
「一夜漬けか?」
「いや、もう少しはする」
「家庭教師が必要なら教えてやるよ。その分だと危ないな」
「いや、あなたが家庭教師というのが一番危ない」
「誤解してるだろ」
「あなたの場合はいまいち信用ができないままなの」
「親子そろって、意外と頑固だな。お母さんは俺のことを気に入ってくれていると思うけど」態度に出さないだけで、そこまで信用してない気がするなと考えていたら、
「ふーん、意外とお母さんって、お姉さんと似てるタイプか? お金持ちや力を持っている人と仲良くしたいタイプ」
「そうでもないよ。お母さんは割り切りはあるけれど、姉のようじゃないからね。お父さんはそういう部分で分け隔てなかった。優しくて海のようで、穏やかで」
「お前の父親」と言われて顔を背けた。
「ごめん」
「いいの、そっちも言われたくないことはあるでしょ」
「母親のことはトラウマだからな。女性不審もそこからだ」
「お仕事が忙しかったからでしょう」と聞いたら黙っていた。
「ごめん。お互い触れないほうがいいね」
「いや、俺の中で諦めはついてる。と言うか考えたくもないんだろうな。自分優先の女性は苦手だから、そこから来ていると思うし。それより、何か歌えよ」
「ちょっとなあ、苦手だから」




