雪人さんの許嫁2
「真珠は?」姉が帰ってきてから聞いて。
「部屋に篭ってるわ」と母が答えた。夕食用のおかずが少なかったので、
「ご飯、これだけなの?」と姉が怒っていて、
「しょうがないでしょ。あの子、夕方からケーキを作って、遅くなって、ケーキを届けてから残りを作る予定だったみたいだけど……」と言って母が困っていた。
「嫌だあ。言ってくれたら、外で誰か捕まえて奢らせたのに。もう」
「輝子、たまには自分で作りなさい」
「嫌よ。手が汚れるし、面倒だもの」
「いったい、誰に似たのかしらね。わがままで家事はしないし」
「いいじゃない。友達は誰もやってないわよ。普通は親がするものでしょ」
「他の家は、他の家でしょう。我が家はこういう事情なんだし、姉なんだから、たまにはやりなさいよ。結婚するつもりなら、特に」
「お金持ちと結婚するから、必要ないでしょ。覚えてもしょうがないし」
「真珠にばかりやらせているから、お嫁に行けそうもないわね」
「それはあの子でしょ。もっと、綺麗にしたらいいのにね。あの子、ちっともかわいくないから、そばにいたくないし」
「輝子」母が怒ったら、
「友達に恥ずかしくて見せられないよ、この家は。あーあ、もっと、いい家の子供に生まれたかった。真珠も何年も同じような服を着て、髪型も気を使わないしねえ。私に似れば綺麗だったのに。恥ずかしくてお母さん以外は紹介もできないわ」
「輝子、妹なのよ。家事もやってもらって、そういう言い方は」と母が怒っても、姉はさっさと行ってしまった。
熱が出て、母がおかゆを作ってくれた。
「熱を出すほどなのね」と母が心配してくれたけれど、
「前も出たから、一緒だね」とぼんやりしていた。
「一度、おじさんのところに遊びに行きなさい。気分転換したほうがいいわ」
「お店の手伝いや家事は?」
「しばらくはそれなりで」
「お姉ちゃんは絶対にやらないだろうね。手が汚れるって人だものね」
「あの子の場合は諦めたほうがいいわ。妹に対しても、優しさが足りないわね。甘やかしすぎたからいけないのかしらね」
「父親が強く言えていたら違うって、近所のおばさんに何度も怒られた。お姉ちゃんの評判、この辺りではいまいちだからかなあ」と、熱にうなあされながら、ゆっくりと言った。
「そうねえ、何しろ、お見合いの話もあなたにばかりで」
「はあ?」と母が言っている意味を考えた。熱でぼんやりしていた。
「お見合いって?」
「真珠にどうかと話を持ってくる人がいるのよ。お客さんも、近所の人も。真珠は家事をやってくれて、やりくりもしてるのはみんな薄々気づいているから、それででしょうね。でも、年上だと言うのに輝子にはないのよ」
「綺麗なのに?」
「そういう話を持ってくる年配の人は、美人かどうかより気立てなのよ。家事をやらないような美人より、明るくて気立てのいい女性のほうがお嫁さんとしては安心でしょ。年配の人はそういうところをちゃんと見ているものよ」
「はあ」とぼんやりしていた。親が薦める相手、綺麗な人、かわいらしくて、雪人さんにお似合いでと考えて、涙がちょっと出てしまい、
「少し寝る。ごめん」と謝った。
「体質は私に似ているわね。真珠はお父さんに似て優しい子なのにね。大丈夫よ。たまにはゆっくりと休みなさい」と言われて目を閉じた。




