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Fortune-teller  作者: marimo
価値観の違い
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価値観の違い5

「挨拶って、したらいけないのかなあ」ケーキを作りながら、母に聞いた。母はお客さんが帰ったのでキッチンでコーヒーを飲んでいた。

「挨拶ぐらい、誰でもするでしょ」

「『さようなら』と言ったら、東条さんに怒られた」

「嫌かもしれないわね。好きな相手に言われたら」

「グサっと来るものなの? 大体、あの男はいくらでも振られそうなのに、今まで言われてないからかな?」

「ああ、違うわよ。きっと、今まで好きになったことがないのかもね。時々いるわよ。そういう人」

「どういう人?」

「付き合った数が多いからと言って、相手のことを思っているかどうかは別ってことよ。その時間を楽しむためにデートする場合もあるの。デートが終わったら、それで相手のことなんて考えもしないタイプ」

「え、どうして?」

「気分転換に付き合うだけよ。楽しい時間を過ごすためにデートに誘う。でも、一番大事なのは自分ってことよ。プライベートをデート相手に踏み込ませない人もいるからね。割り切ってるのよ」

「それって嫌だね?」

「あら、いるわよ。仕事ができる男性で何人かそういう人がいた。デート相手はいくらでもいて、電話を掛けて、すぐに来てくれる人と会うのよ。一緒に食事をしたりしてね」

「友達でいいじゃない」

「女性と会うのは好きなのよ。ただ、束縛されるのは嫌がるのよね。自分のペースは保ちたいから」

「はあ、何だか良く分からない付き合いだね」

「そういう人のほうが女性はのめり込むものなのよ。いつか、振り向かせて自分だけのものにしたいって思えてね。もちろん、社会的立場も良くて、お給料もいいし、そういう人だから、いくらでも女性が寄ってくるわけだしね」

「ふーん、東条さんも同じなのかな?」

「そうかもしれないわね。あの父親がそうだったから」

「お母さん、その人とどうだった?」と聞いたら、怒った顔をしたので聞くんじゃなかったと思った。

「ごめん」

「あの男はね。有名になりたくて仕方なかったのよ。占い師として認めてもらいたいと大義名分を掲げていたけれど、その手段として、色々やっていたわよ。周りを傷つけても平気でね。だから、近づいてはいけないわ」

「東条さんもそうなのかな?」

「違うでしょうね。少なくともあなたに対しては心配してるみたいだしね。ただ、私は勧められないけれど」

「どうして?」

「いつか傷つく気がしてね。住む世界も考え方も違いすぎる。彼はお金に苦労をしたことがないわけだから。ただ、そういう人もいるということは話には聞いていても、自分が実際にモヤシしか食べられないとか、狭いアパートに住むとか、一日、パン一個で過ごし、バイト先でまかないを食べるとか経験してないだろうし」

「やけにリアルだね」

「知り合いの話よ。いたのよね。地方から来てね。バイト先で知り合った人よ。役者を目指しているとか言って、色々な人に助けてもらってた。あちこち泊まり歩いて、お風呂を貸してもらって、そういう人の経験を彼は想像はできるかもしれない。でも、実際、真珠のようにやりくりしたこともないだろうから、共感はできないと思うのよ。だから、真珠には薦められない」

「薦められても困るけど」

「気分転換に付き合う程度にしておきなさい。手玉に取れとは言わないから」

「お姉ちゃんとは違う」と慌てて言った。

「あなたがそうしてくれたら、あの男の鼻を明かせてすっきりするんだけど。カロンさん、私とデートを希望するなら遊んであげるのに」

「ははは」と笑うしかなかった。相当、恨んでいるよ。


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