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Fortune-teller  作者: marimo
価値観の違い
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131/266

価値観の違い4

「誕生日か?」と聞かれて、

「そういうようなものだから」とごまかしたら、

「俺もお祝いしてくれ」と言ったので、

「あなたも誕生日なの?」と聞いたら、いつの間にか顔が近くにあって、すばやくキスされてしまい、

「きゃあ」と慌てて突き飛ばそうとして、無理やり抱きしめてきて、意外と強い力で、離してくれなくて、離れたときに、

「嫌」と、にらんだ。

「ごめん」東条さんが謝ったけれど、

「許せない」ファーストキスだって奪われて、何でこんなやつに。と思った。

「ごめん」と言った顔が寂しそうで意外だった。

「どうかしたの? そんな顔をして」と言ったら、

「お前の言うとおりだよ。俺は本当の恋愛なんてできないのかもな」

「どういう意味?」

「母親は男を作って、家を出て行った。あのビルは母親の持ち物だ。親父には金なんてなかった。母の人脈で今の地位に上り詰めた。あのビルは母親所有のままだけど、二人は俺が小さいころに離婚したからな」

「え、あ、ごめん」

「お前の言うとおり、女性不審なところがある。どこかで恋愛を馬鹿にしてる。俺の占いを聞きに来て、相手が満足しそうな言葉を並べていただけだったかも。軽い恋愛相談ばかりだからじっくり占ったことなんてないよ。この間が初めてかもな」

「この間?」

「お前を占ったときだよ」

「え、だって、初恋は実らないと」

「そう出たんだよ。お前の初恋は実らないってね」そんな……うつむいていたら、

「言わないほうが良かったようだな。じゃあ、信じなくてもいい」

「占いに頼る気持ちがあるからいけないと、男子に言われたことがあったけれど、恋愛に悩むとそういう部分も依存したくなると思う。ファッション感覚で気軽に楽しむ人もいるかもしれないけど、でも、私は」

「俺はそれも分かってなかった。行列で並ぶ、その後やっと占ってもらえる。値段が高かったり、行列が長かったりすると期待感が違う。そして、それほどでもなくても、自分でよかったと思いたい心理が生まれるからな。だから、俺の占いには苦情が少なかったのかもな。たまに、変な人が来ても、おかしな客だと相手のせいにしてた。お前の言うとおりだよ。他のライバルができたら、そちらに行ってしまう」

「どうかしたの?」

「雑誌に取り上げられた占い師がいて、そっちに流れたよ。ちょっとショックだったからな」

「え、そうなの?」

「疎いな。それぐらい把握しておけよ」

「だって」

「お前の言うとおりだ。同性がいないってことに危機感を感じてなかった。親父のやり方を見てきたからな。今じゃ、金持ちしか占ってない。しかも、女性が多くて。若い子は自分の弟子に占わせて、その弟子も気に入らなければ首にして終わり。ネームバリューがあるから弟子にしてほしいって人はいくらでも来るから」

「そう」

「お前のところにさえ、負けてるのかもな」

「上から目線だね、そういう言い方はやめてよ」

「俺はこうやって生きてきたからな」

「価値観を変えたらいいだけでしょ。今日からね」

「そこまで切り替えが早くないさ」

「そう?」

「お前はあっけらかんとしてるな。価値観が出来上がってないから言える言葉だ」

「どうせ、子供だって言うんでしょ」

「子供にキスするかよ」

「おふざけの癖に」

「この間のはそうだ。今日は違う」

「あなたの場合は分かりづらい」

「あの人のことをうれしそうにするから、面白くなくてね」

「だからって、しないでよ」

「したかったから」

「したかったからって、するものなの? 相手の同意も得ずに」

「女って結構、強引なのに弱いだろ。お前のように突き飛ばす女は少ないし」

「はいはい。いったい、何人に同じ手を使ってきたの?」

「それなりしかいない。それほどじゃない子はキスは別の場所にするし」

「呆れるなあ。完全にホストじゃない」

「違うよ。そうすると喜ぶ子が多いからね。食事のお礼」

「嘘ばっかり」

「信じてくれよ」

「いや、絶対に信じられない」

「どうしたら、信じてくれる」

「とりあえず、買い物があるから、これで」

「あの人のプレゼントを選ぶのか?」

「合格祝い」

「なんだよ、それ」

「どうでもいいでしょ。さようなら」

「やめてくれ」と東条さんが慌てて言ったので、車から降りようとしてやめて、東条さんを見た。

「何で、そんな慌てるのよ」

「それを言うのはやめてくれ。胸が痛くなる」

「はあ?」

「二度と言わないでくれ。なんだか、こう、グサっと来るんだよ。お前に言われると」

「何か言ったっけ?」

「『さようなら』って言葉」

「挨拶でしょ」

「お前に言われると堪えるんだよ。二度と会えなくなりそうで怖くて」

「はあ?」と東条さんを見てしまった。

「じゃあ、なんて言えばいいの?」

「今日は楽しかったわ、また、誘ってね」

「ない」と即答したら東条さんににらまれてしまった。

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