価値観の違い3
雪人さんに、会ったときに明るかったので、大学院のことをそれとなく聞いてみたら、
「ああ、おかげさまでね。行けることになったよ」と言ったので、
「おめでとうございます。あ、合格祝い、なにがいいですか?」と聞いたら、
「いいよ、気を使わなくても。真珠ちゃんも忙しいだろ」と優しく言ってくれた。二人でしばらく話した後に、そうだ、ケーキがいいかもしれないと思い、
「ケーキ好きですか?」と聞いたら、
「好きだよ」と言ってくれたので、
「じゃあ、それにしますね」と言ったら、笑ってくれて、うれしかった。
学校の帰りにケーキの材料を買おうとして、東条さんの車がいて、クラクションを鳴らしていて、「嫌なやつに会ったな」と思ったけれど、仕方なく近づいた。
「今日は早いな。迎えに行こうと思ったのに」
「忙しいんでしょ。バイトは?」
「この後で行くよ。時間を変更してもらったし」
「なんで?」
「お前と仲直りしてからじゃないと占えない」
「はあ?」と、驚いた。
「お前のせいだからな」と言われて、お礼を言うのをやめようかと思ったけれど、
「車に乗せて、話したいことがあるの」と言ったら、
「乗れよ」とそっけなかった。
「どこか、お茶の飲めるとこに入ればいいだろ」車を人通りが少ないところに止めてもらったら、そう言われて、
「ちょっと人に聞かれたくない話」
「愛の告白なら、どこでも受け付けるけど」呆れるほど立ち直りが早いらしい。喧嘩したのに、何事もなかったような態度だった。仕方なく、元木さんの代理人の弁護士が来て、お金を置いていったことを話した。
「ふーん、意外と遅かったな」
「あなたが注意してくれたんでしょ」と聞いたら、しばらく考えた後、
「俺じゃないかもしれないな、それ」と言ったので驚いた。
「え、だって、母がそう言っていたよ」と母が教えてくれたことを説明したら、
「確かに圧力か何か掛かってるかもしれないけど、噂をやめたり。嫌がらせを止めたのはあいつらのほうが訳アリかもな」
「なに?」と聞いたら、黙っていて。しばらくしてから、
「占いの内容を気にしてるのかもしれないぞ」東条さんには占いの内容のことは教えてあった。
「アウトドアだと馬鹿にしてたよ」
「ああいうやつらは意外と迷信とか気にしやすいし、験かつぎなどもするぞ。親父に頼んでくる人も何人かそういうことを気にする。方角や日にちにもこだわる人がいるし」
「それだけで、おとなしくなるのかな」
「いいさ。しばらく様子を見ろ。こちらから動くのも良くないからな。相手がお金を持ってきている以上、口止め料ってことなんだろうし。向こうから嫌がらせしてくることはないかもな。自分の会社に何かあったら困るだろうし」
「え、どういう意味?」
「お前の占い内容を気にしてるから、お前に手出しする可能性が低いって話」
「そういうことを気にするような人かな?」
「占った相手は川尻だけど、元木も怖いのかもよ。意外とね。虚勢張ってるところがあるかもしれないし」
「ふーん、あなたはあれから、何か言われたの?」
「口止めされただけ。占いを頼まれても断るつもりだったけれど、今のところ、あいつは、頼んできてないからね」
「占い?」
「あいつらと付き合っていたのはお店と自分のためだよ。前にあいつらに逆らったやつの家族が大変なめにあっているから、渋々だった。断るのは得策じゃないと考えて、自衛のつもりでね」
「え?」と驚いた。
「友達だったんじゃないの?」
「お前の母親には教えておいたよ。俺に余興をやらせるために、あいつらは俺を呼び出すだけ。一緒に飲んだことはあるけれど、早めに帰ることにしている。これからは、それもやめるよ。あれでは、遅かれ早かれ、俺の店も似たような被害にあってもおかしくないし」
「大丈夫なの?」
「大丈夫かどうかは分からないけど、お前のところよりは手を出しにくいはずだ。親父に力があるうちはね」
「そう」と考えていた。確かにああいう人たちは私の家の近所にあることないこと言いふらしてしまいそうだ。姉の会社で言われたということは、そういうことは簡単に調べることができるのかもしれない。
「困ったね」
「それより、考えてくれたか?」
「なにを?」
「付き合うこと」
「無理」と断った。それで思い出して、
「あ、行かないと。用事があるから」
「用事?」
「そう、雪人さんのお祝い」と言いかけて、しまったと思ったら、にらんでいて、
「ははは」とごまかした。




