気分転換2
「真珠ちゃんは、その人たちが反省することを期待するのは諦めたほうがいいかもしれないな。それより真珠ちゃんが幸せになることが、その人たちへの復讐になるだろうね。その人たちにとって、一番面白くない状態がそれだから。自分のそばの人が幸せになる。自分以外の人が幸せになる。自分の嫌いな人が幸せそうだと妬む人もいるからね」と言われて考えていた。
「その人たちのことを考えるのは一旦やめるんだ。それはかなり難しいことだと思う。何度も怖い夢を見たりする人もいるそうだから。でも、真珠ちゃんの呪文を唱えて、無理にでも切り替えたほうがいい」先生には、掃除するときに私の口癖を聞かれたことがある。「がんばろう」「元気を出そう」と言いながら掃除をしていて、どうしてそう言うのか聞かれたときに、「呪文です。暗示効果があるから」と答えた。
「別の幸せな経験を増やして、そのことの記憶を薄れさせるのもいい方法だね」
「どうやって?」
「食べるのが好きな子はいっぱい食べたり、友達といるのが好きな子はいっぱい遊んだり、遊園地でジェットコースターに乗って思いっきり叫んだりしたみたいだよ」
「なるほど。ケーキバイキングで晴らしていた子がいたし、カラオケで絶叫していた子がいました」と言ったら、優しく微笑んでくれた。
「その人たちには二度と近づかないこと」
「私はそう決めていますが、向こうが何か言ってきたら」
「そうだね。誰か、大人に相談すること。私でよかったら、いつでも相談に乗るから」と言ってくれたので、
「ありがとうございます。何だか、元気が出てきた」
「その方が、真珠ちゃんだ」と言ってくれたのでうなずいた。
東条さんが家にやってきて、
「一緒に出かけよう」と言われてしまった。電話では一度断ったけれど、直接来てしまい、
「嫌」とまた、断ったけれど、意外にも母が、
「行ってらっしゃい」と、と言ったので驚いた。
「え、でも」
「休日にお出かけしてもいいでしょう。今日は家事は私がやるから」
「えー、だって、お母さんに任せても、後で直さないといけないし」と正直に言ったら、
「真珠、そういうことは言わないでよ」と怒っていて、東条さんが笑っていた。
東条さんに連れられて入ったお店はそれなりに高級そうな洋服が飾られていた。
「連れてきたよ」東条さんが誰かに笑いかけてきて、
「ああ、来たんだ?」と相手がうれしそうだった。結構、年齢が上に見える。彼女ではなさそうだなと思ったら、
「知り合いなんだよ。それで安くしてもらっているからね」
「ふーん」いったい、何人連れてきたんだろうなと見回していた。洋服をいくつかあてがわれて、良く分からなくて、
「かわいらしい人だから、デザインもそれなりにかわいいものが似合いそうだね。これが良さそうね。顔が小さいから、似合いそうよ」と薦められて、着替えるように言われた。フィッティングルームの中で値段を見て、「げ?」と、言いそうになった。高い。
「早くしろよ」と東条さんの声が聞こえて、
「入ったばかりでしょ」と怒った。何とか着替えて、外に出たら、
「まあ、かわいらしいわねえ。似合うわ」と言われて東条さんを見た。
「そうだな、じゃあ、それにするか」と言われて、
「無理」といったら、東条さんが、
「俺からのプレゼント」
「いらないわよ。あなたからは受け取れない」
「傷つけたからね。そのお詫び」
「絶対にいらない」
「ここまで来てそれはないだろ。俺に恥をかかせるなよ」
「無理よ。好きでも恋人でもない人からプレゼントはもらえない」
「これぐらいはさせてくれよ。それに別のもので返してくれればいいから」
「は?」
「これでお願いします」東条さんがお店の人に頼んでいて、
「ちょっと、別のものって何よ?」と聞いたけれど、お店の人がニコニコして待っていたので、仕方なくフィッティングルームに戻った。




