やらせの首謀者3
この章は、子供が読むには問題があるシーンが出てきます。あらかじめご了承ください。
「外に聞こえたかもしれないぞ」と言った後に、私の上になっている元木さんの急所を蹴飛ばした。
「イッテー。何するんだ、こいつ」と思いっきり顔を2、3発殴られて気を失いそうになったけれど、負けるもんかと思い、更に向うずねを蹴飛ばして、相手がひるんだ隙に何とか起き上がった。
「おい、捕まえろ」と言っている間に、誰かがやってきて、
「何しているんだ、君たち」と言った人を見て、
「ち、やばいぜ」と言い合っている声が聞こえたけれど、その人のほうに逃げた。
「お前、黙ってろ」とその人に言った。
「お前の父親がどうなってもいいのか」と脅されて、その人がちょっとひるんでいたら、女子学生が入ってきて、私の方を見て、服装が乱れていたので、
「きゃあ、誰か来て」と、言い出して、さすがに一人が逃げ出して、
「覚えてろよ」と捨て台詞を吐いて行ってしまった。私は気が緩んで、その場に座り込んで、
「大丈夫なの?」女の人がそばに寄ってきた。
怪我の手当てが終わってから、職員の人に事情を聞かれて、仕方なく、本当のことを話した。あの状態で嘘をついたら、憶測で変なことを言われる可能性がある。それよりは本当のことを言ったほうがいいだろう。
「うーん」相手が困っていた。そばにいた人たちと小声で言い合っていて、目撃者の話を聞き返していた。浅木さんが誰かから話を聞いたらしく来てくれたので、
「大丈夫よ。東条君も来てくれるから。おうちの方には連絡をしたんでしょう?」と聞かれて、うなずいた。母には一応、遅くなると言ってある。それ以上の話はしたくなかった。そのうち、ドアが開いて、
「真珠」東条さんがやって来たけれど、顔を見たくなくて、
「ごめん」と謝ってくれたけれど、怖くなり顔を背けていた。浅木さんが東条さんに色々小声で報告していて、その後、
「ごめん」と頭を下げてくれたけれど、何も言えなかった。
東条さんが送ってくれたけれど、無言だった。浅木さんも一緒に行こうかと言ってくれたけれど、辞退をした。車の中で、東条さんが、
「お前の言ったとおりだったな。俺は分かってなかったよ。どこか、甘かったんだろうな。俺の彼女にまで手を出すなんて」
「彼女じゃないもの」と言いながら声が弱かった。あの場は興奮していて、あの後、怖くなって泣きたくなったけれど、人前でそれもできずに我慢したのもあって、窓の外を見て泣いてしまった。
「真珠?」東条さんが気づいて驚いていたけれど、
「こっちは見ないで」
「ごめん」
「あなたは恵まれているから分からないんだろうね。人の気持ちが分かったつもりでいるだけ。女の子の気持ちなんて、あの中にいる人は誰一人分からない」
「俺は違うよ。悪かったと思ってるし」
「でも、ずっとあの人たちと友達だったでしょ」
「付き合いを完全にやめる訳にはいかないからな。それで距離を置いていたよ。それが気に入らなかったようだ。お前のことも気に入らないのかもしれないな」
「どうして?」
「自分になびかないからだろ。お前がひれ伏してくると思い込んでるから」
「ひれ伏す?」
「そう自分より強いものはないと、思い込んでる。あいつの親は、よくない噂が多い人だからね。価値観が親と似ているみたいだし」
「あなたと同じだ」
「父は野心家なところがあるのは本当だ。お前の母親と結婚せずに、あの母親と結婚したのはお金のためだろうな。母親は父親の事業を受け継いで、資産も多いしね。離婚したのは良く分からないけど、父の浮気もあったんだろうと思う。何度か喧嘩していたから」
「父親似だ。つくづく」
「もう、しない。お前が嫌がることはしないつもりだ」
「嘘ばっかり」
「決めたんだ。そう、心に決めた。浅木に注意されたしな」
「なにを?」
「本当に好きなのなら、相手と深く関わらないとやっていけないってさ。軽い付き合いでいい女なら、すぐに続かなくなるって。真珠はそういうところで誠実さを求めてるって言ってた。そういうのは頭では分かってたつもりだけど、自分で実行してみたいと思ったこともなかったし」
「呆れるね」としか言えなかった。




