宝葉祭7
「どういうことだよ」東条さんが準備している場所に移動してから、原西さんに問いただして怒り出した。
「おい、何だよ」イベントの手伝いをしていた人たちが驚いていたけれど、
「観客に仕込んであったんだろ」東条さんが怒鳴ったら、原西さんが笑った。
「やっぱり」
「そのほうが盛り上がるじゃないか」
「だったら、正々堂々と」
「尚毅は学校でも有名だからさあ。あのほうがいいじゃないか」とそばにいた人がなだめていて、
「良くない。やらせはバレるぞ。前だって、そういうのはバレそうになってただろ」
「お客だって、その辺、分かっていながら、楽しんでるさ」
「良くないよ。客をだますのか?」
「だって、真珠ちゃんは確かにかわいかったけれど、でも、ちょっと、なあ。内容が」と言われてしまった。
「もっと明るい前向きな結果にしてもらわないと、盛り上がらないし、困るよ」と言われて、
「すみません」と言った後、
「嘘はつけなくて」と言ったら、その人が黙った。そこにいた人たちが、一瞬、手が止まっていた。
「あ、えっと」と困って何人かが逃げていって、その隙に原西さんがいなくなっていた。
「東条。ちょっと」と誰かが寄ってきて、奥に行ってしまった」着替えようかどうしようか迷っていたら、さっきの相談者の女性が寄って来た。
「ありがとうございました」と言ってくれたので、驚いた。
「え、あ、でも、私は」
「本当の言葉を言ってもらえてうれしかったから。嘘やごまかしであの場に合わせた結果を言われると思ってたから、正直驚きました。でも、段々とイベントだってことも忘れてしまうぐらい、続きが聞きたくて」と言ったので、
「え?」と驚いた。
「だから、ありがとうございました。がんばります」目上の人に言われて戸惑ったけれど、
「がんばってください。あの、間違ってたらごめんなさい。人前に立つような仕事を目指していませんか?」と聞いたら、
「そこまで分かるんですか?」と驚いていた。
「いや、そういう感じかなと、カードを見て思ったから、華やかな仕事にあこがれてますよね」と言ったらうなずいていた。
「できればアナウンサーを目指したいと思ってます。報道関係を」それはハードルが高い。高すぎる。確かに大変だ。
「だから、驚いて。すごいですね。ちょっとびっくりした。恋愛している場合じゃないって言われたのはかなり驚いたから。でも、がんばります。元気が出たから。あなたもがんばってね。私は本当はあなたに入れたかった」と言ってくれたので、何だかうれしかった。たとえやらせでも、相談者が喜んでくれることが一番だなと思った。
「どうかしたのか?」東条さんが戻ってきて、相談者と話していたのを見ていたらしく聞いてきた。
「お客さんにああやって言ってもらうのが一番うれしい」とだけ言ったら、
「何か言われたのか?」と聞かれて、
「お礼を言われたの」と言ったら、
「あっちで話そう」と言われて、着替えるところに移動した。
東条さんがさっきの人から教えてもらったことは、やらせがあって、それを原西さんと司会者の人が打ち合わせ済みだったらしく、清水さんは、それを知らなかったらしい。
「多分、あいつらだ」と東条さんが言ったので、
「誰?」と聞いた。
「ここでは言えない。お前の家で説明するよ」と言われて、
「嘘つき男は家に入れない」
「まだ、怒ってるのか?」と聞かれて、
「それはいいよ。気分が良くなったから」
「なんでだよ」
「さっきの彼女。やっぱり、たとえ、その場がしらけても、本当のことを言ってよかったと思う」と言ったら、
「お前」と言った後、東条さんがじっと見ていて、
「あなたのほうが優れているのかもしれないけど、私はもっとがんばろう」
「嫌味かよ。やらせで勝ってもうれしくもなんともない」
「だって、お客さんは」
「お前の友達は拍手してただろ。それ以外は怪しいからな。事前に知り合いに頼んであったらしいぞ。もちろん、盛り上げるためと言う大義名分に変えてあったらしいけど」
「どういう意味よ」と聞いたけれど、何だか嫌そうだったので聞きづらかった。




