宝葉祭
宝陽の学園祭、「宝葉祭」が行われていて、着替える前にあちこち見学していた。お守りは割りとすぐに完売になったそうで、時間つぶしをしていて、
「緊張する」と言ったら、怜奈ちゃんが笑っていた。
「後で彼氏と合流なんだけど」
「彼氏が途切れないのがうらやましすぎる」
「だって、順番待ちしてるから」と平然と言われてしまった。怜奈ちゃんの彼氏候補はいくらでもいるから、それで、彼氏が途切れたことがないようで、
「いいなあ」とぼやいた。
「楽しそうではあるね」
「そうだけど。何だか緊張してきて」
「大丈夫だって。こういうのって、失敗のほうが盛り上がるよ」
「暗示に掛かる」と耳をふさいだ。
「お祭り騒ぎならクラスで慣れているでしょ」と言われて、確かに行事ごとにうるさい男子が多い。
「あいつらと一緒。失敗するとそこをつつく。それで盛り上げる。どっちにしても楽しければいいってことでしょ」
「簡単に言わないで」
「任せればいいよ。その場の雰囲気に合わせて行動すれば。楽しめばいいって」
「そう言われても、人が多すぎて、ちょっと」
「東条さんに負けてもいいの」
「そういうのがどうでも良くなってきた」
「負けたくないんじゃないの? ライバルでしょ」
「駄目、緊張しすぎる」
「自信満々の人に負けるよ、それじゃあ」
「何だか、こういう雰囲気に慣れなくて」
「面白そうではあるね」と言って、怜奈ちゃんが声を掛けられていた。まただ。
「待ち合わせなの」と軽く断っていた。
「慣れてるね。さすが」
「真珠の場合は無理よ。普通にしておいたほうがいいよ。声が掛けやすい雰囲気って言うのもあるし」
「隙を作る余裕がない」
「相手によっては笑いかけてもいいんじゃないの。好きな人だけね。クラスの女子で突っかかって、素直になれない子もいるけど、あれじゃあ、ずっと喧嘩して終わりそうだしね」
「愛想のよさってこと?」
「そういうこと」
「男なら見た目が良くて冷めた雰囲気でも人気が出るけど、女の子は愛想がいいほうがモテる。振られるのが嫌だって言う男子が多いからね。だから、断るときもにっこりと」
「それができないよ。相手によって不機嫌になるし」
「それより、何か食べようよ。お腹空いちゃった」と怜奈ちゃんが見回していた。




