練習3
「あれ、駄目なの?」
「そうすぐには無理だろうな。固定客が大勢付いている人もいるからね」
「あなただっているでしょ」と聞いたら、何も答えなかった。
「私もできるかなあ。占い内容が今は学生相手だけど、働いている人の相談にのれるかな」
「お前も働くようになったら、見えてくるだろ、それなりに。何も知らずには占えないからな」
「そうだね。未熟だった。タロットのカードの意味は分かっても、解釈をお客様には合わせてなかったかも。散々叱られて、あなたとの差がまだまだだ」
「そうだな。ライバルには当分なれそうもない」
「そうだね」
「恋人にはなれるけど」と言われて、むせそうになった。
「母がいるところで、そういうことは言わないで」
「言っておいたほうがいいだろ。隠したってばれるぞ」
「お父さんにまで言わなくてもいいでしょ」
「宣言しておきたかっただけ」
「どうして?」
「親父とは違うと言っておきたかっただけだよ」
「お父さんって、どういう恋愛してきたの?」
「今までの俺と変わらないかもな。その場が楽しければそれでいい。そこまで深く考えない。相手がお金持ちで美人ならなおさらいいってことだろ」声を潜めて言われてしまい、
「え、でも」と東条さんを見た。
「営業も多いんだろうな。占い雑誌や占いコーナーとか女性関係者が多いから、それで扱いは慣れているかもしれない。でも、親父が本気で愛した女性がいるかどうかは知らない」
「え、だって、結婚して」と言ったら、顔色が変わっていたので、
「ごめん」と謝った。
「それより、明日、大丈夫か? ちょっと心配になってきた」
「相談内容って事前に教えてもらえないんでしょ」
「それをしたら、やらせになるだろ。ぶっつけ本番。だから、日頃の自分が全部出てしまう。お前の場合は、その場がしらけるような言葉は使わないようにすること」
「何度も言わないで、緊張してきた」
「お前の友達は来るのか?」
「何人か遊びに来るって行ってた」
「神宮寺は?」
「あいつは勉強が忙しいよ。テストがあるみたいだから来れないんじゃないかな」
「ふーん、真面目」
「私も勉強を教えてもらってるし」
「俺が教えてやろうか」
「いいよ」
「お前よりはできると思うから」
「自信満々だね。復活してるじゃない」
「当然」
「何だか緊張してきたな」
「自力でがんばれよ。俺はフォローはできないから」
「冷たいなあ」
「ライバルだから当然だろ」と笑っていた。
東条さんが帰ってから、家事などを終えて、お店に顔を出したら、母が休憩中で、
「疲れたわ」と伸びをしていた。
「お疲れ」
「真珠、いつも悪いわね」
「いいよ。気分転換してるし、こうでもしてないと落ち着かなくて」
「それで大丈夫なの?」
「お店の顔はつぶせないものね。がんばる」
「そうね、がんばって宣伝して」
「お母さんもね」とにらんだ。
「私も応援に行こうかしら」
「お客さんが来るでしょ」
「そうだけどね。でも、意外ね」
「なにが?」
「あの男、父親には似てないのかもね」
「東条さん?」
「そうね。真珠のことは心配してるみたいね。それは意外だった」
「そうかなあ? 失敗したら推薦した自分の責任になるから」
「それもあるけれど、あなたのことも心配していると思うわよ」
「そう?」
「確かに言い方は気に入らない部分があるけれど、父親とは違うかもしれないわね」
「お母さん、この間、東条さんのお父さんに会ったよ」
「ふーん、そう。あまり近づいては駄目よ」
「分かってる。ただ、最初に私を見たとき、お母さんと私を間違えて、お母さんの名前を呼んでいたの」
「そう」母が考え込んでいて、
「あの人」と言いかけたら、
「いいから、がんばりなさいよ」と母が戻ってしまった。




