練習2
学園祭の前に東条さんが家に来た。母はちょっと嫌がっていたけれど、練習が必要だからと東条さんに説得されて、お店の奥で練習していた。お客さんは来ていたけれど、母と秋さんのスペースは囲いが作ってあり、声が聞こえにくくなっている。私たちはカフェスペースだったところで、練習をしていた。実際に相談相手と内容を東条さんが設定して、それに合わせて占いをして、言葉遣いや言い回しなどかなり注意されてしまった。
「そこは、こう言い換えたほうがいいだろう。それだと、相手が落ち込んだままになる。相手が気分良く元気になって、もしくはがんばろうと言う気持ちになって終わるのがいいから、変えるんだ」
「わかった」
「それから、相手によっては見る回数を減らせ。おとなしいタイプの女性は恥ずかしいし緊張しやすい。相手に合わせるんだ。元気が良くて質問が多いタイプなら、何度見ても大丈夫だと思うけど、人によっては何度も見られると嫌がる人もいるからな」
「分かった」
「服装のチェックは最初のほうだけにして、あとは相手の表情を観察すること」
「最初のほう?」
「相手が入り口に入ってきた時点でチェックしておく程度に留めろってこと。あまり、見られると嫌がる人も多いからな。相手が気づかない程度にしたほうがいいだろ。お前だって、目の前で服装チェックされて面白いか?」
「嫌かも」
「そうだろ。たとえ、表情に出ていなくても相手は気にするからな。それから、相手が怖がりの人の場合は、いい情報じゃない場合は、2段階で教えたほうがいいかもな」
「え、どういうこと?」
「ワンクッションおくんだよ。最初に前置きしておいて、相手に心の準備をしてもらって、その後本題を告げる。ただし、相手が怖がらせるような言い方はできるだけ避ける」
「分かった」
「また、ちょっと不安だよな」と東条さんが私を見ていて、
「疲れたね。飲み物持って来るね」
「コーヒーで」
「了解」と席を立った。秋さんがその間に東条さんのそばに座った。
「ここはお客が少ないんですね。美人が二人もいるのに」東条さんがお世辞を言ったら、
「そうね、大きく宣伝するっていうわけにいかないから、口コミ、紹介が多いの」
「あなたのことは何度か聞いてますよ。美人の占い師がいるって」秋さんが、東条さんを見て、
「プロキオンで働けるくらい?」と笑った。
「あなたなら、大丈夫でしょうね。美人は大歓迎だ」
「真珠ちゃんと一緒に出ても、大丈夫そうね」
「え、どうして?」
「ちょっと心配していたの。彼女のことをどう思っているのか分からなかったし。でも、なんとなく分かった」
「なにが?」東条さんが笑いながら秋さんを見た。
「かわいくてしょうがないって感じかな」東条さんはそれに答えずに、
「この店は、もっと、若い女性向けに改装したほうが流行りますよ。若い女性はそういうところも見ているし」
「そうね。真珠ちゃんのお客さんが増えたら考えないといけないわね。でも、今は、色々なお客さんが来るから」
飲み物を持って戻ってきたら、秋さんがいたので、
「あれ、秋さん、どうかした?」と聞いた。彼女は忙しいと本業のほうを優先して、こちらには来れなくなる。秋さんのお客は予約で来るのがほとんどだから、それでも何とかやっていける。最近はずっと来ていなかったので、今日は割りと予約が入っていて、
「次のお客様が遅れるから、それで待ってるの。真珠ちゃんのことよろしくね」東条さんにそう言って、
「わかりました」と東条さんが答えていて、秋さんは戻っていた。東条さんにコーヒーを出したら、東条さんが飲んでいて、
「へえ、インスタントじゃないんだな」と言ったので、
「お客様用。年配の男性と女性が何人か来るから、占いの後にここで飲んでもらうことも多くて」
「そういうサービスはしてるんだな。そのほうがいいだろうな。こっちのスペースがもったいない」と店の半分を見回していた。今は私が使っているので、綺麗にしたけれど、それでも塗装などは、はげている部分もあって、
「卒業したら、色々直さないといけないかもね」と言ってジュースを飲んだ。
「俺も卒業したらがんばらないといけないからな」
「がんばらなくても、あなたの場合はすぐに看板になれるんじゃないの?」と聞いたら黙った。




