練習1
久しぶりに橋添先生のところに遊びに行った。
「いらっしゃい」と知り合いの女性が来ていて、そのうち帰っていった。
「先生のところはあいかわらずですね。お客さんが少なくてもやっていけるのがうらやましい」
「何人かに言われるけどね、月に何度か顔を出さないといけない場所もあるしね」
「先生って、不思議ですね。それより、相談があって」と東条さんとのことを相談した。
「インスピレーションか。確かに占い師でそういうものが強い人はいるね。真珠ちゃんは強いほうなのかもしれないな」
「全然、強くないですよ」
「それはまだ、子供だからだよ。これから変わってくると思うから」
「そうですか?」
「安定した心になっていけば、安定して出てくるかもしれないね。君はまだ、高校生だから、色々言われて悩んでしまうだろう? それに恋愛をしたら変わってくるし、その辺で違いが出てくるかもしれないね」
「心の安定感ってことですか?」
「そうだね。色々傷ついた人のほうが打たれ強くなれるからね」
「いや、打たれ弱くなりそうで」
「そうでもないよ。自分なりに答えを見つけていけば強くなれる。答えを出すことから逃げ出すと、また、同じところでつまずくだろう」と格言めいたことを言われて、考えてしまった。
「インスピレーションが強いかどうかは別にして、利用されていた気がして、面白くないんです」
「そうだね、そういうことはあるかもしれないな。それはこちらが勝手に思い込んでしまったり、相手に期待していたりすることと違えば、面白くないかもしれない。ただ、利用されたとしても、相手が心を入れ替えると言っているのなら、考えてあげてもいいかもしれないね」
「そう言われても」
「相手が作為的に真珠ちゃんを傷つけているのなら、離れたほうがいいと思うけれど、相手が悪意があったわけじゃなくて、真珠ちゃんが傷つくかもしれないことに気づいてない場合があるだろう。未熟なだけで、周りが傷つくかもしれないとは考えずにしてしまった場合。悪気がない場合は、許してあげた方が真珠ちゃんにも相手にもいいかもしれないね」
「悪意があったと思う」
「そう?」と改めて聞かれて、そう言われたら、あいつに怒ったあとは、確かに済まなさそうな顔をしていたなと思った。
「相手が反省して、そこを直したりしてくれる、もしくはそういう努力をしてくれると言うのなら、もう一度信じてあげてもいいかもしれない。相手に更にだまされても、そこで相手から離れてもいいわけだからね。もう二度とそばに寄りたくないと思えるほど傷ついているのなら、しばらく距離をおいたほうがいいかもしれないね。どちらにしろ、許せるかどうかは自分の心に聞いてみるしかない。自分の心に正直に」と言われて、考えていた。確かに相手がこっちが傷つくことが分かっていてしていたのなら、どうしようもないけど、そうじゃなくてそこまで想像もしていなくて、更に反省して直すとまで言っているのだから、許してあげないといけないのかなと思った。でも、面白くないけど。
「『その罪を憎んでその人を憎まず』という言葉があるだろう? 中国の昔の人の言葉だと言われているけれど」
「聞いたことはあります」
「相手が悪気があったわけじゃない場合は、その行為は嫌だと思っても、その人自身のことは憎んではいけないってことなのかもしれないね。僕も昔、この言葉の意味を考えさせられた」と言ったので先生を見た。
「そうして、自分なりに結論を出したんだよ。答えはその人の中にある。時と状況と人によって違ってくるものだと思うから、他の人は結論は出せないんだよ。自分で出すものなんだ」
「そう、……かもしれません」
「状況が全く同じと言うことはほとんどないからね。当事者じゃないとその状況は詳しくは分からない。その人たちの心の中までは分からない。アドバイスはしてあげられても、結論は真珠ちゃんが自分で考えて出せばいいんだよ。ただ、結論が後から違ってくることもいくらでもあるだろうね。見えていなかったことが見えてきたら違ってくるものだからね。だから、その結論が全てじゃないからね。後でいくらでも変更は可能だと思う」と優しく言われて考えていた。




