敵の本拠地1
誰かが抱きかかえて運んでくれているときに、目を覚まして、
「あれ?」と言っていたら、
「もう少し寝ていろ」と優しい声がした。
「ありがと」と言ってまた、寝てしまった。
「いい気分」
「お前はそうだろうけど、俺は重い」東条さんが言っているのは気づかなかった。
車に着いて、東条さんがシートに運んでくれて、
「重かった」と言われても、気づかずに、
「痛い」と言ったら、
「運んでやって、文句を言うな」と小言を言われても気づかずに、
「うーん」と言って、うとうとしていた。
「少し飲んでもジュースと間違えて飲み干すところが、子供だな、お前」と言われても、寝ていて、
「せっかくかわいい顔になっても、中身はやっぱり子供だよな」と言いながら運転席に座って、車をスタートさせてから、
「お前、お母さんに似てるよな」東条さんが独り言を言った。しばらくラジオが小さく掛かった状態で運転を続けていて、
「お父さん、……帰ってきて」と寝言を言ったら、東条さんがこちらを見た。
「ごめんね、お父さん」
「お前……」
「あれ、ここ?」と聞いた。目を覚まして、知らない場所にいたので、何が起こったんだろうと思いながら、
「俺の家だよ」と東条さんに言われて辺りを見回した。
「げ、敵の本拠地」
「すごい言い方だな」
「か、帰る。襲われたら困る」
「襲うかよ。本命にはしない」
「意味不明」
「さすがに本命には簡単にしないよ、俺は」
「ふーん、今までも散々遊んできたから、無理でしょ」
「説明しただろ、それより、お前」と私を見ていて、
「なに?」と聞いた。
「お前のち」と言いかけてから、
「お酒は抜けたのか?」と聞かれて、
「お酒?」と驚いた。
「お前の飲んだのはジュースじゃなくて、お酒が入ったジュース。しかも女子学生に飲ませていたずらしようとしたやつらが用意したものを間違って飲んだんだよ」
「呆れる。何で、そんな変なことをしてるのよ」(*未成年は間違っても飲まないでね)
「そういうやつらもいるよ。一部だけ悪乗りしすぎる連中もいるさ。自分たちもお酒をかなり飲んだ後にやったみたいだよ。お酒が入ると理性がぶっ飛ぶから。後で清水がすごく怒ってた。でも、懲りてないけどな。あれはまたやるな」
「はあ」と息を吐いて確かめた。
「お酒臭いかも。どうしよう、親に怒られちゃう」
「厳しいんだな」
「未成年なら当たり前」
「そう思ってこっちに連れてきた。さすがにそのまま帰すわけに行かないからな」
「困った。どうしよう。連絡しないと」
「連絡しておいた。さすがに高校生が遅くなるとうるさいと困るからな」
「あなたのことは毛嫌いしてるから、怒らなかった?」
「怒ってたよ。親父と区別してくれたらいいのに。元カノだというのに。いい加減忘れたらいいのにな」
「それって、決定?」
「お前もそう思ってるだろ」と聞かれて黙った。




