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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
三章 探し求める者
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飛来する者

第三章スタート!

──人間界、エデン王国──


 天使と悪魔のハーフであるヨシュアを王に掲げ、建国された新興国エデン。人が住む大陸の最西端である広大な荒れ果てた地に存在するその国。


 荒れ果てた地と言っても──開拓とどこぞの女神様のお陰で、国周辺は緑豊かで土地も肥えた穏やかな地。人も徐々に増え、これからの国と言えるだろう。

 

 しかし、人間界で魔族が作りし国。


 そう聞くと不気味であり、いつ戦争を起こすのかと戦々恐々だが、実際の所は全くもって平和的な『戦争反対! 平和にのんびり暮らそうよ』という、指針の元に作られた国である。


 そんな国の王座に座り、ボケッと天井を眺める王──ヨシュア。一国の主としては、頼りがいが無さそうに見えるその王の元に、隣国アベルからの使者がやって来た。


「──ヨシュア王。ご建国、誠におめでとうございます。大変めでたいですな!」


 そう言って深々とお辞儀をするのは、隣国アベル王国からの使者、エノク市長だ。


「ねえレメク……話が違う気がするんだけど?」

「何がでしょうか? ヨシュア王」


 他人行儀な態度ですっとぼけるレメク。


 大臣になって難しい事はやってやる、と言っていた筈なのに、何故か使者として目の前に立っている親友。第一、「俺達で国を作ろう」と、持ち掛けて来たのはレメクだったのだ。


 そんな親友を訝しげにヨシュアは睨んだ。


「そ、そんな睨むなよ……悪かったよ! だけど、しょうがねえだろ──エノクを頼むって、アベル王に頼まれちまったんだからよ」

「それはそうだけどさ……でも、あの将軍だけは何とかしてくれないかな? 毎日辛い……」


 ヨシュアの視線の先、王の間に並ぶのは、国の運営管理を担う者達。そしてその中でも、一際存在感を放つ人物が威風堂々と、仁王立ちしていた。


『ラウル将軍』いぶし銀な雰囲気と強者を思わせる風格を漂わせる──元、魔界将軍。人間界では闇の仕事を担う闇ギルドのマスターとして君臨していた、変態だ。


 彼はヨシュアが王になったと聞き付け、「是非将軍の経験がある俺を!」と、ごり押しで将軍職についた変態。


 そこまではまだ良い。ヨシュアも将軍の経験のあるラウルなら安心だと任せたのだが……問題だったのは彼の性格、戦闘狂にあった。


 ラウルは日に三度、朝昼晩必ずヨシュアに戦闘を仕掛けてくるのだ「いつ裏切り者が王の寝首を狙ってくるか分からないので訓練です」と、訳が分からない名目をつけて。


 そしてさらに厄介なのが、ラウルの戦闘力が上がっている事だった。


 最初こそ、ヨシュアの殺気だけで降参していたのだが、回数を重ねる事に耐性をつけ──殺気を耐える様になり、遂にはヨシュアと組み手が出来るまでに成長してしまったラウル。まるでゴキブリのような人物だ。


「あれは俺には荷が重い。すまねえ!」


 ラウルの変態ぶりに、清々しく責任を放棄したレメク。その無責任な答えに、ヨシュアは思わず溜め息を吐き、他の家臣達を見回すのだが──


「僕は無理です」と、『外務兼法務兼財務大臣』のアダムが早々に匙を投げる。問題がある人には関わらない!! と、固く誓っての即答だ。


 一時期、開拓に伴う問題(ララ)で頭を悩ませ、ビックリするほど老け込んでいたアダムだが、今では凛々しい顔付きに戻っていた。


 そして、そんなアダムに追従するように『農林兼環境大臣』のララ、『経済産業大臣兼諜報長官』のメーサが「無理!」と、言い切る。


 ならば! と、メイド長と執事長に視線を向けるが「「ヨシュア様次第です」」と、意味深な笑みを浮かべ、ヨシュアの息子を凝視する二人。


「…………」


 こいつらも『変態』だったと、思いだしたヨシュア。

 変態を何とかしてくれる救世主が欲しいと、両手を握り合わせ、切に願いを込めた。


 そんな殺伐とした空気の中、王の間に騒々しく飛び込んで来る者がいた。


「──ヨシュア王大変です!! 女性と思わしき者が、エデン王国上空で、此方を怪しげに伺っています!! 先日の化け(スネーク)の件もあり、新たな化け物が出たのかと、国民は恐怖しております……」


(新手の天使かな? それとも魔族か? ……どちらにしても、悪い知らせだ)


 嫌な予感がするも、早く対処しなければと、家臣達やレメクを引き連れ城を出た。


 そして、エデン騎士団員が指で示す先を見上げたヨシュア。そこには、ヨシュアが思案していた通り、大きな問題を持ち込んでくる人物だった──


「──見付けたぞヨシュアー!!」


 そんな叫びを上げ、ヨシュア目掛けて急降下してくる謎の人物。バサバサと翼を羽ばたかせ、地上へと降り立ったその者こそ──魔界の王、『魔王リリン』であった──


「ヨシュア!! ようやっと見付けた……何故……我を置いていなくなったのだ!! この、うつけが!」


 そんな言葉を叫びつつ、リリンはヨシュアの胸へと飛び込むと、せきをきった様に泣きだしてしまった。


「り、リリン!? 一体どうしてこんな所に?!」

「うぅ、ぞれはごっちのセリフじゃ~!」


 確かに、リリンとしては婚約破棄も同然の行いをされた立場なのだ。責める事は有っても、責められる訳などない。


「その女性は誰なのですかヨシュア様? 最近、女性の影が多いような気がしますわ。一体何人のお方に唾をつけてらっしゃるのでしょうか?」

「ヨシュアから早く離れろ魔王。ヨシュアも何とか言ってやんなよ!」

「メイド長の立場として、その方とどういった関係か聞いておかなければなりません」


「…………」


 女性陣の口撃に黙りこみ、遠くを見つめるヨシュア。

 ここで下手な事を言えば、さらなる口撃が待っていると思うと、口を開くことなど出来なかった。


「ヨシュア! 何故魔界を出て行ったのだ!? 納得出来る理由でなければ分かっておるな!!」


 リリンは怒鳴り声を上げ、ヨシュアの大切な何かを握り、脅しをかける。


 そんなリリンの行動に、冷や汗が止まらないヨシュア。ここで納得いく答えを導き出さなければ、大切なものが失われてしまうのだ。


「ひっ! そ、それは……」


 そんな状況の中、ヨシュアに天の助けが訪れる。


『グゥ~』


 と、ピリピリとした空気を気散させるような、腑抜けた音が場に響く。


「ダメじゃ……腹が減って、力が──」


◆◆◆◆◆◆


 腹が減って立てなくなってしまったリリンをおぶり、食堂まで運ぶヨシュア。丁度お昼時だったのか、食堂のテーブルには暖かい食事が並べられていた。


「──ほら、食べな」

「かたじけない……馳走になろう」


 テーブルに並べられた、ご馳走。


 リリンはナイフとフォークではなく、お箸と呼ばれる道具を器用に使って、ご馳走を端から頬張り始めた。


「──それで、どうして此処に? 魔界で何か有った?」

「うむ、それなんじゃが……」


 言い淀むリリンの雰囲気に、魔界で良くない事が起こった気配を察したヨシュア。聞かなければ良かった、と後悔するも後の祭り。口を開いたリリンは、悔しそうな表情で人間界に来た訳を話だした。


「実は……魔王をクビになった」

「えっ!? どういう事!?」


 ビックリしたのはヨシュアだけではない。一人冷静な変態将軍を除いて、魔族であるレメクやメーサも、驚いた表情をしていた。


「イフリート将軍が裏切りおったのだ!! 魔界の端で不味い飯を食っていたのを、将軍にまで取り立ててやったと言うのに!」


 鬼の如く激怒し、テーブルを力一杯叩くリリン──口の周りを食べカスだらけにして。 

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