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実は俺  作者: ぱてぃる
2/7

クリスマスイブ PM4:30

俺は無事に敵の排除を終え、腕時計を確認すると時刻はまだPM4:30を指していた。


『戻ってもいいかもなぁ』


まだ、居酒屋『源』での飲み会は続いているだろう、月に1度くらいの頻度でこの町には『敵』が現れるも、今月は既に二度目だ、正月もゆっくりできるだろう。


俺は周りのカップルだらけの町を駆ける、も再び胸元のデバイスからアラート音が鳴り響く。


『またかよ、やけに多いな』


再び『エネミー』の文字を確認すると、位置情報を確認する。


『やべぇ、ちょっと遠いじゃねぇか』


俺は先ほど来た道を回れ右して、再び走った。


デバイスの力は強力だが、現場に辿り着かなければ意味をなさないのが欠点である。勿論、現場へ行くには自力しかない訳で、必死に走り続ける。


遅れる訳にはいかないのだ、1秒遅れるだけで生死が分かれる場合が多いのである。


『くそう、カップル邪魔すぎぃ』


俺は駆ける、ひたすら駆ける。少し気持ち悪い、先ほどの戦闘で精神力が既に削れているのに、この町を駆けて更に精神力が削られていく。


『あそこかっ』


10分程冬の町中を走り続け、俺は工事中のビルの中へと足を踏み入れる。


「きゃぁっ」


そこには女性が女性を押し倒し、首を絞めようとしている現場だった。


『チィッ』


俺はデバイスの画面にそっと手を当てる。その瞬間、俺の存在は世界から消失する。



『なっ』


よりによってこの時期に女神様が降臨とは、恐れ入る。

首を絞めようとしていた女性の背後には、白い召し物を着た女神が降臨している、一体なんでこんな強敵がいるんだよ。


「着装っ!」


俺はデバイスを天に掲げると同時に体に黄金を纏い、カチカチカチという機械音が鳴り止むと同時にシュウッと蒸気音を発する。


『さて、どうすっかな』


女神が相手だと、正直カース・インパクトでは火力が足りない。

と、なると今の削りに削られている精神力を全て込めた本気の一撃で勝負をつけるのがいいだろう。


「さて、さくっと終わらせますかっっ!」


裏の世界の大地を駆ける、その際に手の甲にあるGのマーク部分に埋め込まれているもう一つのデバイスに手を当て、そこからロングソードを生成させる。


カチカチカチっという機械音と共に黄金のロングソードの構成を終え、そのまま女神相手に斬りかかる。


「   」


声は無い、ただの縦斬りである。しかし、これこそが俺の隠し玉の一つ、本気の一撃。必殺技名なんて叫ぶ暇もない、ただ、俺の意識には必殺の言葉と意志が込められている。


ありったりの力で、デバイス1つを丸ごと費やした俺の全力を叩き込む。

基本的に敵は表の世界へ憑依しているので、こちら側(裏の世界)での出来事には気が付いていない。問題は、一撃で仕留めれなかった場合である。敵対した時は本当に最悪である。なにせ、自身に憑りつきにかかるのだから。


『ジュワッ』


蒸発音と共に女神は一輝きを放ちながら真っ二つへ割け、断末魔をあげることもなく裏の世界から消滅した。


「だぁぁぁ」


俺は現実へ戻ると同時に、その場へ尻餅をついていた。

走り回り、カップルの群を避け続け、連戦して、全力の一撃を放って、もお限界である。


正面にいた女性二人は、喧嘩を始めているがすぐに飽きたのかバチンッというビンタの音と共に襲っていた側の女性はその場を去っていった。


『なんで襲っときながら逆切れしてんだあの女、マジこえぇわ』


押し倒され衣服が若干乱れている、頬を真っ赤に染めた女性がこちらへと歩みよってくる。


「あの、もしかして私を助けてくれたんでしょうか?」


思いがけない一言に俺の心はドクンと強い鼓動を打つ。


「え、いや、なんでそう思うの?」


質問に質問を返してみる。そうである、裏の世界の時間は表の世界とは別であり、認識できるもので決してない。だからといって、こちら側の人間という線もないだろう。襲われていたくらいだし。


「いえ、何となく、本当に何となく。貴方が来なかったら、あの人が更に暴れて私……その、殺されちゃうのかな、と思ったの。だから、あのタイミングで貴方がこんな場所に来たって事に、何か意味があるんじゃないかって。助けてくれたんじゃないかな、て。ごめんね、初対面の貴方にこんな事言って」


「え、いや俺がここに来たのは偶然だし、俺こそなんか変な場面に出くわしちゃって、そのごめんな」


俺はキョドっている、クリスマスイブの夜にこんな出会いがあれば、それはとてもとても素敵な事なんじゃないかと。


「あの、この後時間ありますか?助けてもらった、と思ってるので食事でも……」


「あ、、、はい」


俺は尻餅をついたまま、前かがみに覗き込んでくるその女性の誘いにのるのであった。


「私、この先にあるガレットのお店好きなんですよ、そこでいいです?」


「あ、いや、、、はい」


手を差し伸べられ、俺は立ち上がる。ガレット?はて、どんな食べ物なんだ。

野郎共と過ごした記憶の中にはそんな単語は覚えがない。


「いや、何かこっちこそ起こしてもらってサンキュな」


見ず知らずの女性ではあるが、すっと身長は高く、たぶん175cmくらいだろうか、

スタイルもよくクリスマスのあわせてか白いコートを羽織り、寒いのに赤色のミニスカートに黒のタイツ、茶色のロングブーツで決めている。


顔も美人顔、ではないが目がクリっとしており薄化粧なのがとても好感を持てる。


「さぁ、いきましょ。私がおごってあげるわ」


「お、応」


為すがまま、という感じに俺は自分よりも背の高い女性の後を手を引かれ追うのであった。


歩いて5分程したところにある、駅のすぐ近くにある建物へと入っていく。


『なんなんだ、ガレット?て何なんだ……』


しっかりと俺の手を握って離さず、会話も無く黙々とカップル達を避け歩みを進めた先は、普段入らないような建物の2Fへと続く階段があった。


「ここよ、お待たせ」


「いや、なんか俺こそすまねぇ」


「なんで謝るのよ?私こそ、感謝してるんだから。ありがと」


なんでそうなる?頭の中では急展開に思考が追いつかない。しかし、しかしこれはチャンスなのではなかろうか、そう、これを機にこの女性と仲良くなって……


「ところで、君は一体何者なの?」


「いや、だからただの通りすがりで」


「いいえ、あのタイミングで私を助けてくれたのは、その、やっぱり、ヒー……」


最後の言葉が小さくなり、聞こえなくなる。


「ん、偶然だってば。ところで、これがガレット?」


俺は黒板に描かれているメニューと、貼り付けられた写真からガレットなるものの正体を確認する。


『さっぱり何かわからん』


「そうそう、美味しいのよここのは」


先ほど頬を赤くはれ上がらせていた逆側の頬も、赤く染まっているように俺の目には映った。


「あ、おう、楽しみだわ」


再び心拍音が跳ね上がる。これは非常にやばい、緊張してきたのだろうか。


「それで、ね、やっぱり、貴方は正義のヒーロー、とかなのかな」


俺の顔を正面に捕え、女性は前かがみに俺の顔を覗き込んでくる。


「いや、、、」


「口ごもるってことは、やっぱり何かあるんだ」


俺の心拍音は限界に達してしまった。その気の緩みが始まりであった。


「実は俺……」



その時、時刻はPM5:00を指していた。夕食には少し早く、イブにかかわらずまだ客も少ない頃であった。

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