19
「今のところ、こっちのクラスの方が優勢か…」
「そうですね。今のところ10勝5敗なので、勝ち越していますね。」
「それに、こっちにはまだ、ミリーさん、ウィラード様、ミハイルさん、セレナ様、リュウカさん、兄様と私がいますから、大丈夫でしょう。それに他にも強者がいるので、余程のことがない限り勝ちますね。」
「そうだな…」
今は両隣にセレナとルナが座っている。周りからはかなり注目を集めている。次々と話しかけてくるので、休まる暇がない。
「今年のA組は優秀な方ばかりなので、いろいろと助かります。」
「そういえば、なんであんなに先生は盛り上がってるんだ?」
「実は対抗戦と学園祭のトーナメントの結果次第で給料が変わるみたいです。だから、担任は生徒を死ぬ気で教えて、勝たせるらしいです。それが魔法師のレベル向上に役立っているので、いいとは思いますけど…どうなんでしょうか…」
学園祭では、外からも客が来るので、そこでトーナメントをして良い結果を収めれば、貴族や国から声がかかることがあるのだ。特に上級生は本気だ。学園祭のトーナメントで自分の就職先が決まるようなものだ。
「別に良いだろ。それは使えるな…」
「兄様、また悪巧みをしてますね?」
「まぁな…よくわかったな?」
「前にも言ったとおり、兄様の考えてることは大体わかります。」
「本当に怖いぞ?」
「そんなことないですよ。それでどんなことを思いついたのですか?」
「内緒だ。」
「そうですか…」
ルナは少し、残念そうな表情をしていた。
「おっ…ミハイルが出るらしいな。あいつが戦うみたいだな」
「次期当主なんですから、弱いわけがないですね。」
「そうだな。少し魔法を使ってるところを見たが、かなり洗練されていた。」
「そうなんですか?ウラド様がそう仰るなら、そうなんでしょうね。」
セレナは話しかけるタイミングを測っていたようだ。どちらかと話せば、話していない方が話に加わって来て、主導権を握ろうとしている。ウラドが知らない間に女の駆け引きが始まっていた。
「そこまでの観察眼があるわけじゃないけどな…風属性だから、展開速度と見えにくい攻撃で戦うんだろうな。」
風属性の特徴は展開速度の速さと視認しにくい攻撃で相手を翻弄するのがセオリーだ。とにかく、相手には展開速度の速さで上回り、相手に何もさせないようにして、視認しにくい攻撃で相手を潰す。これが一番、多い戦い方だろう。例外もあるが…
相手は雷属性のようだ。相性は変わらないが、術師に差があるので、結果は見えている。
まず、ミハイルは風を使って、相手の目を潰しにいった。土埃が相手に迫っていく。
相手は雷属性のようで、雷を纏って、避けた。その隙にミハイルは詠唱を完了させていた。そして、詠唱が終わると大量の風が相手に向かって行く。相手は雷属性の防御魔法でなんとか凌いだが、ミハイルは無詠唱で、風の刃を手を捻るだけで三発、出した。相手は既にボロボロだったので、攻撃を防ぐことができずに、やられてしまった。
「流石ですね…」
「ああ…」
「相性はどちらも変わらないので、魔法師としての差が出ましたね。」
ルナが言うように、相手はミハイルの相手には完全に、力不足だった。相手も決して弱くはないが、ミハイルが上手だった。他の生徒とは魔法の練度が明らかに違った。次期当主としての義務なのか、知らないが、かなり訓練をしているように見える。
「全然、本気じゃないな…」
「はい。おそらくは半分くらいですね。下手すると、三割くらいですね。」
「ウラド様から見て、どうですか?」
「そうだな…おそらくは二割くらいだな。相手が弱すぎて、よくわからなかったが。」
「そこまで、弱かったわけではないと思うのですけど…」
「平均と比べるとな。だけど、俺から見ると、弱すぎる。」
「それは、ほとんどの人がそうなってしまいますよ。」
「そうか?」
「はい。」
「せめて、ドイルと戦ったやつくらい強かったら、わかったんだがな。」
「あのクラスにはほとんどいませんよ。」
「いや、さっき話していたレイナ・フォーリアっていう子がいただろ?」
「ああ…あの子ですか。」
「できれば、ミハイルと戦って欲しかったんだけどな。そうすれば、二人の大体の実力がわかったんだが…残念だな。」
「それは仕方がありません。」
「そうだな…」
しばらくして、噂をしていたレイナが出てきた。
「どの程度、強いのでしょうか?」
「俺の予想だと、あのクラスで一番強いな。おそらくはドイルよりも強いはずだ。」
「そんなにですか?」
流石にドイルよりも強いと言うと、ルナとセレナはびっくりしていた。ドイルはアレでも次期当主だ。レイナは八族でしかも、次期当主ですらないのだ。
「俺の勘ではな…」
(あの目には何か、秘密があるはずだ。精霊と契約した時に変化したということは、精霊が関係してるはずだ。だが、あの目の色は氷属性に関係していないことは確かだ…)
「始まりますね。」
レイナの相手をするのは、確か、アインだった筈だ。アインは雷の八家の分家にあたる人物だ。腕は間違いなく、クラスで上位に入る筈だ。
「はじめ!」
「サンダーボール」
初めにアインがサンダーボールを放った。詠唱破棄をしてるので、当たってもダメージを与えることはできない。だが、当たると、雷によって痺れることがある。だから、雷の魔法はできる限り、回避をしなければ、ならないのだ。レイナは余裕で回避をした。それもほとんど、動かずに、最小限の動きで避けた。
「氷よ、敵を射る…アイスアロー」
性格からなのか、ほとんど声が聞こえなかった。だが、声の大きさとは違い、桁違いに大きい矢が出てきた。
「なっ⁉︎」
流石にアインも動揺を隠せないようだ。見ているこっちはまだ、いいが、それを向けられている本人にして見たら、たまったもんじゃない。アインは雷を纏って、回避した。
「雷よ、俺に力を…サンダーフォース!」
アインは雷を纏ったまま、レイナを攻撃しに行った。アインは魔法の撃ち合いでは勝てないと思い、速さで勝負するようだ。さらに、アインは第一形態変化も行い、手にナイフのようなものも出している。この状況では、正しい判断だ。だが、不確定要素があるのなら、もう少し様子を見るべきだった。レイナは魔力強化を使って、アイン攻撃を避けていた。本来は雷属性の魔法師は最速であるから、避けることは不可能な筈なのだ。しかし、レイナは回避をし続けている。
「格が違うな…」
「そうですね。レイナさんはとても回避が上手のようですね。あれでは攻撃を当てるのは難しいです。」
「はぁ…アレを回避が上手の一言で終わらせるとは…ルナもまだまだだな。」
「どういうことでしょうか…」
ルナは少し、不機嫌になった。さらに、俺の言葉に疑問を持ったらしい。
「少しは自分で考えてみな。」
「わかりません。」
「早いな…まだ確証がないから、家に帰ったら、教えるよ。」
「では、私もウラド様の家にお邪魔させてもらいます。」
「セレナ様は来なくても大丈夫ですよ。」
「いえ、気になるので、行かせてもらいます。」
セレナとルナは口論を始めたが、試合は終わりを迎えていた。サンダーフォースは自分の身体能力をギリギリまで引き出す技だ。だが、それは雷によって、自分の体を刺激して、誤魔化しているだけに過ぎない。なので、肉体的に限界が来ると、動けなくなってしまう。なので、長時間は使用できない。サンダーフォースは諸刃の剣なのだ。圧倒的な身体能力で敵を短時間で倒さなければならないのだ。倒せなければ、動けなくなり、的になるだけだ。アインは、動けないらしく、膝をついている。対して、レイナはほぼ無傷だ。レイナは止めを刺す気がないようで、アインが降参をして、終わった。
(後で、確認をしに行くか…)




