11
試験が終わって、三日が経った。コランとの約束の日だ。
「ウラド、準備はいいか?」
「ああ。」
今日は完全装備だ。魔法薬も持っている。おそらくは使うことはないと思うが、念のためだ。
「兄様、気をつけてくださいね?」
「ああ。」
「ウラド君、怪我をしないでね。」
「はい。気をつけます。」
「じゃあ、行って来る。」
今回の見送りはルナとアイリスさんのみだ。他のメンバーは用事があるらしく、来ていない。アイリスも本来は来ない予定だったが、ジェシカさんが無理やり、空けたそうだ。
「ウラド、どっちの子が本命なんだ?」
「まだ、決めてない。」
「あんな可愛い子がいるのに決めてないのか?」
「他にもいるから、決めきれないんだよ。それに学校を卒業してから考えるからまったく考えていない。」
「贅沢な悩み事だな。」
「そうかもな。」
「重婚はするのか?貴族の中にはたまにいるが、周りの貴族から責められるぞ。」
「それは最悪だな。重婚はするつもりがない。俺はしっかりと最後は決める。それに貴族だから恋愛結婚は本来はほぼ、出来ないからな。」
「そうだったな。政略結婚がほとんどだもんな。そう思うと私みたいな貴族の分家の最後の方の人間は気が楽だな。」
「ああ。少し、羨ましくも思うよ。」
「お前もほとんど、同じような感じじゃないか。」
「それでも、その親との関係があるんだよ。例えば、セレナだったら王様をなんとかしないとダメだからな。」
「それは確かに面倒だな。」
「セレナは本来なら政略結婚になるはずだったからな。他の王族に出される予定があったが、何かが起きてあっちから断ってきたらしいぞ。」
「それは奇妙な話だな。ウラノス以外の国は暗黙の了解が存在しないから属性は関係がないはずなんだが…」
「ああ。」
「それと奇妙な話といえば、こんな話を聞いたことがあるか?」
「なんだ?」
「固有属性持ちの魔法師が次々と消えていくそうだ。」
「なんだと?」
「実は世界中を旅してるんだが、他の国で起きているらしいぞ。やはり、固有属性持ちは珍しいからすぐに噂になるんだ。既に十名近く行方不明なんだ。」
「俺にも関係がある話だな。」
「ああ…この国も固有属性持ちが数人しかいないからな。だから気をつけろよ。」
「ああ。だが、今はどうしようもない。だからひとまず置いておくぞ。」
「よし、龍九の谷が見えてきたから行くぞ。」
「了解」
「雷よ、我が剣となれ…ライトニングソード!!!」
フルメタルドラゴンの所までにいる強い固体はコランが対処をしている。俺はフルメタルドラゴンを倒さなければならないため、魔力を温存しなければならないのだ。たまに俺に攻撃してくる奴を倒したりするが、ほとんど何もしていない。
「しかし、数が多いな…」
「しょうがないだろ。ここは弱肉強食の世界なんだから。」
「そういえば、そうだな。」
今もそこら中で魔物同士が戦っている。
「そろそろ着くぞ…あそこだ。」
「確かにフルメタルドラゴンがいるな。だが、大きさが違い過ぎないか?」
「ああ。普通の個体の二倍近くあるな。おそらくは魔力の摂取量が多いからあの大きさになったのだろう。」
「なるほどな。それほどまでにオールフィールはすごいんだな。」
「そうだな。オールフィールの影響によるものだと考えて間違いないな。」
「とりあえず、どうするんだ?」
「私がまず、攻撃をして相手を引きつけて、ウラドは最大火力を叩き込め。」
「了解」
「行くぞ!雷よ、全ての大地に天からの裁きを…ライトニングジャッチメント!!!」
空に雷雲が出てきて、そこから大量の雷がフルメタルドラゴンに直撃した。雷の最上級魔法だ。
ガァァァァァァァァ
フルメタルドラゴンが苦しんで咆哮したように聞こえるが、攻撃がまったく効いていない。おそらくは全て、防がれたのだろう。フルメタルドラゴンは回避能力は皆無だが、防御力は異常なので、この程度の攻撃では効かない。
ドゴゴゴゴゴコゴッ
フルメタルドラゴンのブレスだ。ライトニングジャッチメントの魔力を吸収してさらに自分の魔力を上乗せしてブレスを放った。コランがどうなったかは知らないが心配をしてる余裕がない。
「メネシス、第二形態変化。混沌の地獄の炎よ、敵を燃やし尽くせ…カオスフレア」
フルメタルドラゴンに黒炎が向かっていく。固有属性を重ねてるので、音がまったくしない。フルメタルドラゴンは回避能力がないのもあるが、身動き一つしない。余程、防御力に自信があるのだろう。だが、俺の攻撃には意味がない。黒炎がフルメタルドラゴンに直撃すると、フルメタルドラゴンは倒れた。
ドッンンン
数十メートル離れているが、こちらまで地響きが伝わってくる。かなりの重さがあるのだろう。
「なんとか、なったな。」
「相変わらず、お前の固有属性はすごいな。」
「生きてたか。」
「なんとかな。私が雷の魔法師じゃなかったら死んでたな。」
おそらくは体に雷を纏って、回避したのだろう。
「あのブレスは凶悪だったな。」
「ああ…できれば、一人では戦いたくはないな。」
ブレスの飛んだ方を見るとその先に森があり、そこが半壊していた。直撃したら、間違いなく死んでいただろう。
「それより、早くしないと起きてしまうから早くするぞ。」
「ああ。」
フルメタルドラゴンの横を通り過ぎ、その後ろにある洞窟に入った。すると、そこにはキラキラと輝いている木がたくさんあった。
「これがオールフィールか…」
「初めて見るな。」
「早く仕事を終わらせてしまおう。」
二人で、オールフィールの葉を取って行く。すると、少し、違和感を感じた。
「おい、コラン。」
「ああ…わかってる。」
「これはどういうことだ?」
「いや、わからない。」
「なんで、人に取られた跡があるんだよ。」
「誰かがやったとしか思えない。だが、どうやってフルメタルドラゴンを…」
「俺達と同じく気絶させたか、他の方法でここまでたどり着いたかの、どちらかだよな。」
「ああ…だが、気絶させるのはほぼ不可能だぞ?」
「なら、どうにかしてたどり着いたということか…」
二人は葉を取って、フルメタルドラゴンが起きないうちに洞窟の探索を始めた。
「何処かに抜け道があるとしか、考えられないんだが…」
「でも、ないよな。」
「ああ。ほぼ100%ないな。」
「魔法で調べているが全くないからな。」
「しょうがない。とりあえず、ここを去るぞ。そろそろ、起きる。」
「わかった。」
二人は急いでここから去った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いや〜焦りましたね〜」
「ほんとに…」
「まさか、こんな所に人が来るなんて思いませんでした〜」
「ほんとに…」
コランとウラドが去った五分後に二人の人物が現れた。二人とも黒いローブを被っていた。
「タイミングが悪かったら、間違いなく、鉢合わせてましたよ〜」
「ほんとに…」
「そろそろ、違うことを言ってくれませんか〜?」
「ほんとに…」
「真面目な話、あの男の方は固有属性持ちでしたね。」
「うん。」
「なら、いつか、我々と接触することになりますね。」
「うん。」
「それにしても精神攻撃とはすごいですね。」
「うん。とても厄介。」
「でも、仲間に出来たら戦力ですよ?」
「うん。そこは団長と相談。」
「判断はアルバートさんにお願いしましょう。」
「うん。」
「さて、そろそろ帰りますか。」
「うん。」
その瞬間、二人が洞窟から消えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいま…」
「兄様、おかえりなさい!」
「ああ。」
「お疲れのようですね。」
「まぁな。流石に疲れた。」
「依頼の方はどうなったんですか?」
「一応、成功したよ。」
「流石、兄様です。」
「ただ、俺の手にオールフィールが来るのは少し後になるけどな。」
「それは残念でしたね。けど、あと少しの我慢です。」
「そうだな。アイリスさんは帰ったのか?」
「はい。」
「なら、二人でゆっくりするか…」
「はい!」
二人でお茶を飲みながら、話をしていた。オールフィールに人の形跡があったのはコランと話し合って、周りには話さないことにした。




