10
「ただいま…何が起きた?」
王城と変わらないくらい綺麗な部屋がボロボロになっていた。机は割れていて、椅子は壊れていて、壁も壊れて、かなり悲惨なことになっていた。
そこには二人の女性が息を切らせながら立っていた。一人は義母さんで、もう一人は青い髪をした女性だ。魔法を相当使ったとしか、思えない程だ。
「お母様、何をしてるんですか⁉︎」
ルナが義母さんにキレた。まぁ、気持ちがわからないでもない。
「ちょっと、待ってなさい。そこにいる女を倒したら話すから。」
「ふふふ…そんなあり得ないことが起きるわけがないじゃないですか。」
「あいかわらず、ムカつくわね。」
「あなたが勝手に私にムカついてるだけですよ?私はこんなにあなたのことを愛してるのに…」
青い髪の女性が残念そうな顔をして悲しんでいた。
「黙りなさい、猫かぶり。」
「残念美人のあなたに言われたくないです。」
「本当にキレた。手加減をしないから。」
「ええ。私も本気で行きます。」
完全に収集がつかなくなってる。
「ジャドウバインド」
一旦、二人を止めた。
「ウラド、ちょっと邪魔をしないで、今、良い所なんだから。」
「周りを見てから考えた方が良いですよ。俺としては好きなだけ、暴れてもらって構わないのですが、家がどんどん壊れていってますよ?」
二人は家の状態を改めて見て、青ざめていた。
「私はこれで失礼します。婚約話はまた今度に。」
青い髪の女性が逃走を図った。だが、既にバインドをしてるので、逃げることが出来ない。
「二人にはまずはここを片付けてもらいます。使用人には頼んではダメです。」
「ルナ、嘘でしょ?」
「ルナちゃん、それは勘弁してくれない?」
「ダメです。お二人とも、少しは反省をしてください。話はそれからです。」
結局、二人は自分達だけで片付けを始めた。だが、一行に終わる気配がないので数時間後には使用人が総出で片付けをした。二人とも、普段、しないことをしたせいか、かなり疲労をしていた。
それから、話し合いが始まった。
「初めまして、私はアイリスの母親のジェシカ・ミュートスよ。よろしくね。」
「こちらこそ、初めまして。ウラド・ニュクシオンです。」
「簡単に言うと、アイリスと結婚してくれない?」
その瞬間、二人から視線がジェシカさんにデュエットしたが、気にしない方向で行くようだ。
「なんで、俺なんですか?」
「あなたは噂ではすごく不真面目らしいけど、本当は優秀みたいだから。あなたになら、アイリスを任せられると思ってね。」
「俺よりも優秀な奴はいますよ。」
「そうかしら?」
「おそらくは…」
「あなたはまだ、婚約者が決まってないんでしょ?」
「まぁ…そうですね。」
「うちの家としては、私も夫も賛成だから、あなたとミレイが了承をしてくれれば、成り立つのよ。」
「俺のことを過大評価し過ぎですよ。」
「でも、あなたは次期当主じゃなくなったみたいだから、相手の属性は関係がないでしょ?それに親から見てもアイリスは良い子だと思うんだけど…」
「そうですね。でも、今すぐに決めるつもりはないですよ。」
「あら、思ったよりも脈ありのようね。」
「とりあえず、まずは義母さんを説得してからにしてください。」
埒が明かないので、義母さんに丸投げした。
「早く、オッケーしてくれない?」
「いやよ。もしかしたら、ルナと結婚させるかもしれないから。」
その瞬間、ルナは喜び、セレナはすごい形相になった。
「できれば、前向きに考えてくれると助かるわ。」
「一応、考えとくわ。」
「じゃあ、私はこれで失礼するわね。ウラド君、アイリスのことよろしくね。」
そんなことを言い残して去っていった。
「義母さん、あの人はいつもあんな感じなんですか?」
「そうよ。でも、何も考えてないように見えて、実は計算高いから気をつけてね。」
「それにしても、お母様と互角なんてすごいですね。」
実際、義母さんは当主だからそれなりに腕がなければなることすら出来ない。それに、今代は過去最強と言われる程、強いはずなのだ。それと互角とはジェシカさんは相当、強いということだ。
「あの子とは同級生で何回も戦ったことがあるんだけど、今のところ、56勝56敗で引き分けなのよ。」
「そ、そうなんですか…」
56勝56敗で引き分けということは今までに112回戦ったということだ。何回、やれば気が済むんだと聞きたいくらいだ。
「あの子は水と雷のダブルだから正直、辛くてね。」
「それはすごいですね。」
ダブルとは二体の精霊と契約するということだ。それにより、使える属性が増え、有利に戦いをすることができる。それに、水と雷は相性が良いのでできれば、敵にしたくない類だ。闇属性は敵の属性に弱い系統で倒すのがセオリーだ。だから、ダブルとは相性があまり良くないのだ。やはり、雷属性と闇属性の雷系統では雷属性の方が威力が高いので、有利に戦いを出来ないのだ。さらに、闇属性は魔力の消費量が多いので、キツイのだ。
例えば、相手が水を使って来て、こっちが雷か風系統で攻撃すれば、相手が雷で返して来て、それでこっちが火か土系統で攻撃すれば、水が来る。その繰り返しのため、こっちの方が魔力消費量が多いだけで、攻めきれないのだ。
だが、ダブルは器用貧乏になりやすいため、どちらも磨くのは大変だ。だが、ジェシカさんは義母さんと互角に戦う程なのだ。普通は一つの属性を磨けば良いので一つで済むが、ダブルはその人の二倍は努力をしなければならない。だから相当、努力をしたのだろう。
「ええ。あまり怒らせたらダメよ?」
「そうします。アイリスさんはどうしたんですか?」
「喧嘩になったら、すぐに帰っちゃったわ。」
「それは残念ですね。私はいろいろと聞きたいことがあったんですけど…」
セレナが怖いことを言っている。
「それより、テストはどうだったのかしら?」
「みんな、大丈夫そうです。」
「それならよかったわ。」
「けど、ドレッド家に喧嘩を売られました。」
「へぇ〜…それでどうしたの?」
「返り討ちにしました。」
「それなら構わないわ。どうせ、あっちから絡んで来たんだろうし…」
「義母さんの言う通りですね。」
「それで、これからあなた達はどうするの?アイリスに会いたかったみたいだけど、本人はいないし。」
「適当に話したりしながら解散します。」
「そう…あまり、遅くなったらダメよ?」
「はい。」
義母さんは仕事に戻るのか、部屋を出て行った。
「まさかの強敵が現れました。よりにも寄って、お母様と同じくらい強い人がいるとは…」
「はい。アイリスさんのお母様はアイリスさんのことを応援すると言っていたので、厄介ですね。それにお父様も賛成のようですし…私はお父様が反対してるので、まずはお父様をなんとかしなければ…お兄様も手伝ってくださいね?」
「うん、良いよ。知らない奴にセレナを任せるより、ウラドの方が良いからね。」
「私の両親が賛成してるので、一歩リードしてますね。それに、あとは兄様を渡さなければ大丈夫ですね。」
「ダメですよ。これは王女命令です。」
「王命じゃないのならば、無視ですね。」
「くっ…ならば、お兄様に命令してもらいましょう。」
「その前に私が兄様と結婚してるので意味がないですね。」
「そんなに甘くはないと思いますよ。」
「私は一緒の家に暮らしてるのですから、セレナ様よりもはるかにチャンスがあるのです。」
「なら、私も一緒の家に暮らします。」
「そんなことをしたら、王様に手紙を書きます。」
「なっ…卑怯ですよ⁉︎」
「どんな手だろうと使わせてもらいます。」
「ぐっ…ここまでお父様が邪魔だとは思いませんでした。」
(王様を邪魔とか、言ってもいいのか?)
「残念でしたね?」
「お兄様、これから説得に行きますよ?」
「これから?流石に一緒の家に暮らすのは許可してくれないと思うけど…」
「大丈夫です。私に手があります。それにお母様にも協力してもらいます。」
「それならなんとかなるかもね。」
「では、早速許可をもらいにいって来ますので、少し待っていてください。」
「あ、ああ…」
流石に圧倒されてそれ以上話すことが出来なかった。
二人はそう言って王城に戻って行った。
「本当に説得して来れるでしょうか?」
「流石に無理だとは思うが…あの二人ならなんとかしてくるような気がするな。」
「はい。ですが、お母様が反対するので大丈夫ですね。」
「そういえば、明日から何をするんだ?」
「そうですね…やっとテストが終わったので、何処かに遊びに行きたいですね。」
「そうだな。」
「私と何処かに行きませんか?」
「別に良いが、準備もしてないからエスコートは出来ないぞ?」
「それでも良いです。ですから、私と何処かに行きませんか?」
「わかった。ルナの好きな所に行こう。」
「本当ですか⁉︎」
「ああ。」
「これで私もセレナ様に並びました。」
おそらく、俺が前にセレナとデートに行ったことが相当悔しかったようだ。
「そんなに行きたかったのか?」
「はい!それはもちろんです。私がどれだけ我慢したのか、わかりますか?」
「い、いや…」
「兄様がこの家に来た日からずっと行きたかったのですが、なかなか機会がなく、チャンスが来るのをずっと待ってたんですから。」
「そ、そうか…すまなかったな。」
「いえ、行ってくれるのならば、それで良いです。」
「じゃあ、いつにする?」
「そうですね。私が決めても宜しいですか?」
「ああ。」
「それでは決まりましたら連絡させていただきます。」
「わかった。」
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それから四日後
「今日は楽しみですね〜」
ルナは機嫌が良さそうだ。今日はデートの日だ。正直、こんなに早く行くとは思えなかった。
「今日はどこに行くつもりなんだ?」
「今日は買い物をたくさんします。」
「服とか靴を買うということか?」
「はい!」
「そうか…」
その瞬間、今日は疲れると覚悟をした。女の子の買い物は長くて大変なのだ。
「まずはこの店です。」
その店はセレナと行った場所だった。
「なんで、ここなんだ?」
「セレナ様と一緒に行った記憶を塗り替えます。」
「そ、そうか…」
「この店に一緒に行ったのは私です。いいですね?」
「は、はい。」
ルナの勢いがすごくて周りの店員や客が引いてる。
「では、ワンピースを選びましょう。」
そこからルナのお着替え人形が始まった。セレナの時は俺が良さそうのを何着か、選んでその中から決めたが、ルナは実際に片っ端から着て、その中から良いと思ったのを買うそうだ。本当にセレナと一緒に行った記憶を塗り替えられそうだ。だが、人間はそう簡単には忘れられないのだ。
「これはどうですか?」
今は赤いワンピースを着ている。個人的には良いと思うんだが、少し大人っぽい気がする。髪の色と合って良いんだが、まだ年齢的に早い気がする。
「とても似合ってるよ。でも、個人的にはもう少し、可愛い方が良いよ?それだと少し妖艶ぽく見える。」
「そうですか?では、数年後にまた、来ましょう。その時に買います。」
「ああ。」
この時、こっそりとデートの約束をしたことに気がつかなかった。
「では、次はこのワンピースを試着しますね?」
「ああ…」
ルナは白いワンピースを持って試着室に入って行った。
(これは本当に大変だな。椅子を探して少し、座るか…)
「大変ですね?」
話しかけて来たのは前回の時にお世話になった店員だった。
「まぁ…そうですね。」
「前回とは違う子なんですね。」
「はい。」
「前回は金髪で可愛い子で今回は黒髪で綺麗な子ですね。二股はダメですよ?」
「二股なんか、してませんよ。」
「そうなんですか?」
「前回のは友達付き合いで行って、今回は妹のお願いです。」
「なるほど…でも、どちらの子も好意を寄せてますよね?」
「そうですね…でも、そんな簡単に決めれるものではないですよ。」
「そうですね。まぁ…がんばってください。」
「はい。」
すると、タイミングよく、ルナが出てきた。
「兄様、これはどうですか?」
「普段、着ない色だから違和感があるけど、よく似合ってる。すごく良いよ。」
「そうですか?ではキープしておきましょう。では、次はこのワンピースを試着しますね。」
そう言って試着室に入って行った。
(本当に、何着着るつもりなんだ…)
結局、ルナの試着が終わるのに三時間半かかった。それから、ブラブラして帰った。




