第66話 これからのこと。みくるとマリー
1月。入学から8ヶ月が経過して、年が明けた。最初はあんなに暖かくて、暑かった日が続いたけど、今はすごく寒い。
空気が澄んで、とっても気持ちがいい…けど、ちょっと風が暴風すぎる…!
「早く中入ろー!寒いよ…!!」
「そんなんで長野行った時大丈夫かー?」
「雪があれば寒くないもん!」
「子供ですか!?」
「そうだよぉ」
「大学生だもん!」
「そういうとこだよぉ」
けらけらと笑いながら教室に向かう4人。今日は、コースを決めるための大事な面談だ。
「面談なのに1人って、なんか大人になった感じがするよね!」
「確かに!今までは三者面談が普通でしたもんね!」
「うちは両親とも来て4者面談になった事もあったなぁ…」
「愛されてますね〜!子供の進路を真剣に考えてくれるだなんて!」
ぼたんが感動。それをいや…と否定して、マリーが話す。
「いやぁ、仕事を継いで欲しい親二人と、大学行きたい私の勝負だったんだよぉ」
「それは壮絶だったな…」
「よく勝ちましたね…」
ふっふっふー!と、みくるが何故か自慢気。
「その時助けてくれたのがみくるなんだよねぇ」
「どういうことだ…?」
あの時、高校2年生。お店に来てくれたみくると仲良くなって、ハーブを育てて、何回も会う仲になっていた。
そんな中、マリーに誘われて、本気で目指し始めたみくる。
「マリーちゃんと大学に行って勉強したい!って、いっぱい頼み込んだんだよー!」
「へぇ、そんな過去があったのか!」
「それは良い友達でしたね!」
さらに鼻高々になるみくる。それを、いやいやぁと半笑いで否定してマリーが被せる。
「みくるはお店でじたばた暴れたんじゃん、うちの親が折れるまでぇ」
2人が、あぁ…あれか。と納得。確かにあんなの店先でやられたら認めるしかない。しかも多分こいつは何回もやる。
「マリーさん大変でしたね…!」
「お疲れ!なんか嫌なことがあったら言うんだぞ!」
「あれ?私は?ねー私は!?」
わちゃわちゃ話していると、
「加茂さーん!次ですよ〜!」
と、先生に呼ばれてしまった。いってくるー!と3人を残し、面談室に入る。中には大畑先生と柿本先生。
まずは柿本先生の質問タイムみたい。
「加茂さん、大学生活はどうですか?」
「楽しいです!ハーブ育てられるし、みんなと色々できるし!」
完全な本音。というかみくるは嘘がつけない。真っ直ぐに自分の思ったことを話す。
「それは良かったです。授業とか寮での生活で困ってることとかはないですか?」
「んー…特にない…かな?です!」
大学生活は超順調!そんな雰囲気に2人の先生はほっとする。
「さて、じゃあ本題に入りますね。2年生からのコースで、心に決めているものはありますか?」
「私は栽培コースがいいです!」
栽培コース。露地野菜やイチゴ、メロン、トマト。そして果樹やお茶、花きなど色々な選択肢があるコースだ。
「なるほど、やっぱり露地野菜を育てたいんですか?それとも、他のでも良いって感じなんでしょうか?」
「んー…露地野菜にこだわるつもりはあんまりなくて、でも植物は、ハーブは育てたいです!」
露地野菜は確かに今家でハーブを育てている環境に近い。
でも、特に今困ってることもないし…でも、もっと良くハーブを育てる方法があれば知りたい!だから栽培コース。
「とにかくハーブ、ハーブなんです!大好きなカモミールの香りを、味を、もっと良くしてみたいんです!」
ハーブに対する強い思いを主張した。それを聞いて大畑先生が聞く。
「じゃあイチゴコースでも良かったりする?」
大畑先生はイチゴの担当をしているから、イチゴコースに引き込みたいのかもしれない。
「え…うーん…えーと…」
みくるはイチゴの収穫はすごく楽しかったけど、パック詰めがすごく苦手。
「パック詰め苦手です…!」
「そんなっ…」
あーあ…明らかに悲しそうな顔をしちゃってる。
「じゃあ果樹はどうですか?」
今度は柿本先生の番。果樹ならパック詰めはないよ〜!と誘っている。けど、
「でも木のハーブって少ないじゃないですか!」
「んー…でも柿の葉は昔から、日本のハーブティーって感じで飲まれていますよ」
「えっそうなの!?ハーブティー!?」
みくるの目の色が変わった。しかしここでタイムキーパーの大畑先生が口を出す。
「残念ながら面談の時間終了です。他になにか言っておきたいことはありますか?」
「大丈夫です!ありがとうございました!」
柿本先生がしょぼんとしてた。
マリーの場合
「加茂さんは大学生活楽しめてますか?」
「んー、はい、思ってたより楽しめてます」
「お!それは良かったです!ちなみにどんなところが?」
「もっとなんというか…人が多くて積極的に周りと話さないと仲良くなれないってイメージだったんですけどぉ…今はなんか、寮で誰かと話せるし、授業も同じメンバーだから楽だし…楽しいなぁって思ってます!」
人数が少ないことが特徴の大学だけど、それがメリットになってて良かった。そう感じた。
「じゃあ逆になにか困っていることはありますか?」
「あー…みくるですねぇ…。」
「加茂さんがなにか…?」
「いやぁ…悪いって訳じゃないんですけど…たまにハーブ愛が溢れちゃって…とんでもないことにぃ…」
あー…確かに…と、ちょっと納得したけど、特段大きな被害が無さそうだし、大変だけど苦痛ではないとしっかり聞き取って本題に入る。
「芦頭さんはこれから何をしたいですか?」
「私は農業の経営を学びたいと思ってこの大学に入ったので、それは変わらず。農業コースに進みたいです。」
「なるほど、確か親御さんは農業資材屋さんでしたもんね。納得です。」
大畑先生がメモを取ってから質問を始める。
「じゃあ、どこのコースに行きたいとかはありますか?」
「んんとぉ…特に強くこれってやつはないんですけど、資材がよく売れるのは野菜系なので、露地野菜か施設野菜系に行けたらいいなぁと思ってます」
柿本先生がしょんぼり、大畑先生がちょっとガッツポーズした。
「ところで、どうしてそんなに農業経営にこだわりを持ってるんですか?」
「私の両親が資材屋なので、農家さんのサポートをするのなら農業経営から学びたいなぁと思ったので」
「なるほど!頑張ってくださいね!」
ピピピと時間終了のタイマーが鳴り、マリーの番が終了した。
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