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薪と、ハーブと、ジビエご飯!  作者: 不月風音
大学1年生編!後期!
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第58話 遠州のからっ風


 12月上旬。

 肌に当たる風が澄んで、冷たい風が吹き始めた頃。



「ねーねー!雪降るのかなー?」

「静岡だし降らないよぉ」


 部屋で二人話していた。


「えー?でもこんな寒いよー?」

「いやいやぁ、気温的には8℃だし、まだまだだよぉ」

「えー…そっかー」


「雪でも見たかったのぉ?」

「そー!冬となったら雪じゃん!」

「風花ですら最近見なくなったのにぃ…?」

「それは…確かに…」


 うーん…でも雪が!雪!雪ー!と、生き別れの雪ちゃんを探すかのように声をあげる。


「雪降るようにお願いしに行こうよ!」

「どこにぃ…!?」

「んー神社!」

「あぁ、お散歩でよく行くって言うあそこぉ?」


 寒いから行きたくないなぁ…。でも…多分行かないって言ったらヤダヤダするぞぉ…。


「ひのきちゃんとぼたんちゃんもいいよって言ったらいいよぉ」



 

「いいなー!」

「行きましょー!」


 ドヤ!誘ってきたぜ!そんな表情でニコニコ自慢する。

 くっそぉ…なんでそんなみんな雪好きなんだよぉ…。



「しゅっぱーつ!!」


 モコモコ暖かい服をいっぱい着込んで、仕方ないついて行く。


 寮の玄関を押し開けようとすると、普段とは違う、強い手応えに押し返される。


「あれ…?開かない…!?」

「え…?なんでですか…!?」


 ぼたんも一緒に手伝い、ぐっと力を込めて開くと、一気に冷たい風が吹き込んできた。


 さむっ!!??


 一旦玄関を閉めて作戦会議。


「えーと…?寒すぎますね…!?」

「なんでなんで!?なんでこんな寒いの!?」

「雪でも降るんじゃないかなぁ…」

「さっきあんなに降らないって…!!」

「遠州のからっ風ってやつかもな…」


 遠州のからっ風…?みんながひのきを覗き込む。


「冬の時期はこの辺り、すごく冷たくて強い風が吹くから気を付けろって言われてたんだよ」

「それが今日…」

「しかも冬の間長く続くらしいぞ」

「地獄じゃないですか…!!」

「でもこんな寒いなら雪くらい見せてくれないと…ね…!」

「えぇ…お部屋戻ろうよぉ…」


 決行。



 目的の神社までは徒歩30分くらい。

 遠いからバスで行こうよぉと言うマリーには、待ってる時間の方が寒いでしょ!と諦めさせた。


「それにしても風が強いな…」

「標識とか吹っ飛びそうな勢いで揺れてて怖いです…」

「ふとんが吹っ飛んじゃうね…!」

「これ以上寒くしてどうするのぉ…?」

「でもなんでこんな寒いんだろー?」


 出た、みくるのなんで攻撃。と思ったけど、実はひのきが調べてたみたい。


「なんか、日本海側から吹く風が関係してるらしいよ」

「ん…?でも日本海側から吹く風って雪降らせるやつですよね?」


 小学校の時とか、日本海側に雪がよく降ることを思い出してぼたんが返す。


「いや、長野とか岐阜の山脈を超えてくる間に冷たい空気から雪が抜けてくんだよ」

「え!?じゃあ雪が降らないただ冷たいだけの風ってこと!?」

「まあ、雪だけで見たら出涸らしを押し付けられてるようなもんだしな…」

 

 なにそれ最悪じゃん!!雪連れてこいやー!!!とみくるが天を脅迫する。


「あぁそっかぁ、寒い日にエアコンで除湿つけてるようなもんかぁ」

「この寒さで除湿で扇風機…正気じゃないですね…」


 雪ー!雪を見せろー!雪雪雪雪!!とみくるが大暴走していたら、目的地に着いた。案外早かった。



 毎回バスに乗って帰る時は見る道に見えていた神社。普段は一瞬で通り過ぎていたから知らなかったけど、思っていたよりも大きい神社みたいだ。


「さあさあ!すぐにお参りするよ!!」


 みくるがはよ雪を!!とおねだりしようとしている中、ぼたんが周りを眺めていた。


「ん?どしたのぉ?」

「あ、いや、國府宮ってすごいなって思ってただけです!」

「すごい…?どゆこと??」


 ぼたんの目から見える面白いこと、それを聞けるチャンスだと思って、ひのきは聞いてみる。


 

「えーと…簡単に言うと、首都を護る最高位の神様がいる神社って感じですかね…」

「え!?強そう!!」


 みくるが飛びついた…けど、最強に雪を叶えてもらいたいだけだろぉ…。


「一宮って言う、さらに上の…天皇様みたいな立ち位置の超偉い神様もいるんですけど、府八幡宮は総理大臣的な、人間の多い大事なところを専門に守ってくれる神様…って感じ…です!」


 おぉ…、ほんとにすごそうだ…!


「よく知ってるねぇ、そういうの好きなのぉ?」

「いやー、昔からなんか好きなんですよね!…まあ、多少知ってるくらいなんですけど!!」


 だからあんま頼りにしないでくださいね…!とは言ってるものの、説明できて少し嬉しそう。


「色んなところの神社も行ってみたいな」

「そうだね!ぼたんちゃんの解説があったらもっと楽しそう!!」

「だから頼りにしないでくださいって!?」

「頼りにしてるぜぇ」

「やめてください!!?」


 そんなこんなで、総理大臣のような偉い護り神様に、雪を見たいですとお願いをして帰ってきた。


 長く歩いたからなのか、それとも沢山話したからなのか、寮に着いた時、身体は思っていたより冷えなかった。むしろちょっと暑いくらい。


 風のせいで扉は全然開かなかった。


  


「必勝祈願、開運勝利、事業反映、厄除け、災難除け、国家安泰、安産満足、子育、子孫繁栄、家内安全、交通安全…だってぇ」

「雪降らせてくれそうなご利益ないね…」

「むしろ静岡だと雪って災難側じゃね?」


 雪…降らないかも…。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

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