第52話 違法罠
「なんでこんなものがあるんですか!?」
「薮一さんは違法ハンターだった…!?」
とりあえずスマホを持ち通報の構えをするマリー。それを待て待て!?と慌てて静止する。
「持つだけならセーフセーフ!持つだけなら!!」
「そうそう!使ってないから大丈夫だ!!真っ白!!」
一旦落ち着いて話を聞くことにした。
「むかしむかし、俺のじいちゃんだかが使ってた猟具を引っ張り出してきたんだ」
「おぉ…確かに年代物ですね…。」
「でもなんで禁止猟具なんてもの持ってるんですかぁ…?」
ご先祖さまが悪い人…!?と疑いの目を向ける。もしかしたら代々の悪者ハンターだったかもしれない…。
「禁止されてなかったんだ、昔はな。」
禁止されてなかった…?じゃあなんで今は禁止に…?そう言いかけると、薮一さんが続けてくれた。
「昔の罠ってもんはな、生きるための道具だった。楽に動物を殺して、畑の農作物を守るもの。楽に動物を狩って、明日の食料にするものだった。」
4人だけでなく、かおりも真剣に話を聞いている。
「つまりは人間が生きるために殺すためのものだったってわけだ。でもな、殺すためのもんをほいほい山に置いといたらどうなる?」
「あ…ハイキングに来た人が罠に引っかかっちゃうかも…」
「そうだな。くくり罠だったらちっと痛ってぇとかで済むが、トラバサミはそうはいかねぇ。イノシシの足でもぐっと抑えとくんだ。人間の足なんてさっくりいっちまう。」
目の前にあるのはそういう道具なんだ…怖い。
「しかもな、こいつでもしカモシカの足でも傷つけてみろ。警察やら県の職員やらが大量に押しかけて、捕まるのはこっちになっちまう。」
ほえぇ…と圧倒される4人。確かにそれはとんでもなさそうだ…。
「でも、昔はなんでそういう道具の方が使われてたんだー?」
「さっきも言ったろ、殺すためだ」
「いや違う違う。殺すだけなら檻とかの方が獲物を選んで殺せる分楽じゃね?って思って。」
ああそういうことか、と少し考え、答える。
「ほんとに殺すためなんだろうな。足が痛くても無理矢理抜け出せる動物は中々いない。作りの悪いくくり罠よりよっぽど抜けらんねぇよ。」
「なるほど…でも檻なら…」
「檻は運ぶのに手間がかかんだろ?でもこの片手サイズなら女子供でも道具さえあればかけ放題だ。」
「いいか?こいつは、動物を殺さなきゃ飯が足りなくて死んじまうって時代に、無差別に効率的に殺すための道具だ。絶対使うんじゃねぇぞ。」
命のやり取り。本当の意味での命のやり取りをする道具なんだ。そう感じた。
「でも…今はもう手に入らないだろうし…きった安全ですよねぇ…?」
「そうだろうな。こんなもん作ってたら警察にでもしょっぴかれるんじゃねぇか?」
大丈夫だ!安心しろ!と大層に笑う薮一さん。
「あ、あった」
そう話すかおりさんの方を見ると、スマホが握られていた。
「多分これ、トラバサミだよね?」
そう見せてくるスマホの画面は、よく見るネットの検索画面。トラバサミ 3980円と書かれていた。
「え…!?だめじゃん…!?」
どうにかしなきゃ。そう思った時、薮一さんがそういうことか…口を開く。
「所持だけならなにも問題にはならねぇ。実際狩猟免許試験の時もトラバサミの実物が出てくるしな。だから、買えるには買える。だが、使ったらしょっぴかれるってことじゃねぇか?」
なるほど…。人間って、法律って難しいな…。
「ま!そんな訳で罠についての実践終わり!お疲れ様〜!」
「突然だったのにありがとうございました!」
「ほんとに突然…何かお手伝いしてお返ししたいくらいだねぇ」
「だな、前の体験会ももしてもらってばっかりだし…」
「え!まじ!じゃあ頼みたいことあんだけど!!!」
と、ガチャンガチャンと音を立てて用意されたのは、長いワイヤーやらなんやら色々な工具。
「一緒に罠作ってよー!!最近壊れて使えないのが増えてきちゃってさー!」
罠作り!楽しそう!ということで、罠作りのお手伝いが始まった。
準備するもの(材料や工具)
・ワイヤーロープ: 直径 4.0mm〜5.0mm 程度(ステンレス製、7×19構造などの柔軟性があるもの)
・作動機構(仕掛け部): パイプ(塩ビ管など)、押しバネまたは引きバネ、ワイヤー固定用金具
・締結金具: オーバルスリーブ(かしめ用金具)、くくり金具(一方向のみにワイヤーが絞まる金具)
・より戻し(サルカン): ワイヤーのねじれによる切断を防ぐ金具
・アタッチメント: 締め付け防止金具(特定外来生物等以外の誤捕獲・特定動物への配慮および法令適合用)
・工具: ワイヤカッター、アームスエージャー(かしめ工具)
「なんか料理のテンションで始まったけど材料の難易度高くないかなぁ…?」
「狩猟は敷居が高いのですよ…。」
①締付け防止金具の装着
ワイヤーの先端近くに、ワイヤーが一定以上(ワイヤー輪の直径が12cm未満等、捕獲対象や法令指定に応じる)小さく絞まりきらないようにするためのストッパー金具を取り付けます。
②くくり輪の作成
ワイヤーの先端にくくり金具を通し、末端をスリーブでかしめて固定します。これにより、動物の足が入った際に一方向にのみ締まるループ構造を作ります。
動作バネおよびパイプの組み込み
ワイヤーの中央部に押しバネを通し、塩ビ管等のパイプに収納します。踏み板が作動した際、圧縮されたバネが解放されてワイヤーを一気に引き上げる構造にします。
③より戻しの接続
バネの反対側のワイヤー末端に「より戻し(サルカン)」をスリーブで確実に接続します。これにより、捕獲された動物が暴れた際にワイヤーが捻じれて破断するリスクを軽減します。
④アンカー部(保全用ワイヤー)の作成
より戻しの反対側に、立木やアンカー杭に固定するための十分な強度を持ったアンカーワイヤーを接続します。
「うーん…?なんか難しいぞ…?」
「この辺は実際見た方が分かりやすいからねー!さ!作ってみよー!」
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