第48話 打ち上げ!!
いただきまーす!
オーブンから取り出したて、あつあつのリンゴタルト。
ツヤツヤのリンゴの上にちょっぴり色付いたローズマリーと、真っさらなチャービルがちょこんと乗っていてすごくかわいい!
「映えだね〜!!!」
パシャパシャと写真を撮って、少し愛でたあと、熱いうちに食べちゃいましょうよー!と、我慢できないぼたんが食器を用意してくれた。
「タルトは熱いうちに食え!です!」
「そんなことわざないよ」
包丁を入れた瞬間、タルト生地の心地よい手応えとともに、閉じ込められていた香りが一気に立ちのぼる。
焼き上げられたりんごの甘く重厚な香りに、まず重なるのはローズマリーの凛としたウッディな香りが立ち上がる。
そして、切り口からフワッと広がる爽やかなレモンバームの風。
もう我慢できない!取り分けてすぐそう感じた。
4人は同時にフォークを差し込み、生地とりんご、ハーブを一斉に頬張る。
口に入れた瞬間、リンゴの濃厚な甘みと、甘酸っぱい果汁がジュワッと広がる。
タルト生地のバターの香ばしさとリッチなコクが、全体をどっしりと受け止める。
ローズマリーの深みのある甘いスパイシーな香り、レモンバームの軽やかなシトラスの風味が重なる。重たいタルトの甘さのはずなのに、すごく軽く感じる。
サクサク食べていくごとに、チャービルのマイルドでほのかに甘い繊細なグリーン香が、りんごの酸味を優しく調和させてくれる。
「高級店の味ですね…!」
「感想毎回それだな!?でもほんとに高い店の味がする…!」
「香りがいくつかランクを上げてくれるよねぇ…!」
「ほら!レモンバームもチャービルも入れて良かったでしょー!」
ドヤァ!と自信満々に胸を張る。
「ほんとぉ、ハーブに関してはなんでこんなに嗅覚が鋭いんだろうねぇ?」
「まさか…!カモミールにハーブの知識を蓄えさせる効果が…!?」
「不思議効果すぎますって」
「ホントダヨッ!」
「カモミールが喋った…!?」
みくるが居た位置にはいつの間にかカモミールの花が置かれていて、みくるがいなくなっていた。
今収穫時期じゃないだろ。
「せんせー!これ食べてー!」
いつの間にか消えたみくるが行ったのは、大畑先生の部屋。
「文化祭打ち上げのスイーツだよ!美味しいよ!」
「おぉ!ありがとうございます!でもなんで私に?」
学生からのスイーツ、もちろん嬉しい。フォークを手渡され、口に入れる。
一口で美味しいと分かる。リンゴのジューシーさが口の中で弾ける。
「先生のおかげでハーブ育てられたから、先生もサークルの一員みたいなものでしょー!」
「なるほど!私もハーブの育て方を調べるのは楽しいので助かってますよ!」
それなら良かった!と言わんばかりの笑顔を見せて、上山先生にもあげなきゃ!と駆け出していく。
ムードメーカーでみんなを引っ張っていく、元気な子だな。
農業のリーダーはああいう子がなるべきなのかもしれない。
「まあ、サポートは必要なんだろうけど…。」
そういえばこのお皿とフォークどこに返せばいいか聞けてないし言われてないなと思い出す。お互いちょっと抜けてるな…。
まあ多分調理室から借りてきたものだろうし、今度返しに行けばいいか。
「上山先生ー!!!」
今度は上山先生の部屋。今日の活動では珍しく、先に部屋に戻ってしまった。
コンコンとノックすると、少し遅れて、どうぞ〜という声が聞こえてきた。
開けてみると、先生はパソコンにイヤホンを挿して何かを聞いている…?
「ごめんなさい!ちょっとオンライン説明会があって、それを聞いてたのよ〜!」
「オンライン説明会?邪魔しちゃってごめんなさい…」
「大体内容分かってるし、もうほぼ終わっちゃったから大丈夫よ!」
みくるはほっとして、手に持ったローズマリーアップルタルトを手渡した。
「打ち上げで作ったタルト!」
「あらありがとう!…美味しい!すごいわ〜!!」
本当に美味しいタルト。ハーブにこだわってるからこそ出せる味な気がする。
「これ、もしかしてレモンバームも入っているの?」
「え!先生すごい!気付けるの!?」
「前に香りを嗅がせてもらったから偶然覚えてたわ!」
ほほほ!と笑う先生に流石だなーと羨望の眼差しを向ける。
「あ、そーいえば!パソコンで何聞いてたんですかー?」
「あー!説明会ね!害獣駆除についてのお話を聞いてたの!」
「害獣駆除?イノシシとかシカみたいな?」
ジビエの先生だし、そういうのも聞いてるんだろうな。もしかしたら、上山先生も狩猟免許を持ってて、かおりちゃんみたいに狩猟をしてるのかもしれない!
「いえ、ヌートリアって言う外来種の害獣についての説明会よ。」
「……ヌートリア?」
初めて聞く動物の名前にみくるが戸惑う。
「ふふ、やっぱり初めて聞くわよね。川とかの水辺に住む大きなネズミみたいな動物なんだけど、最近浜松の辺りで増えていて、年々北上が進んできてて大変なのよ…。」
「えぇ…それは大変そう…」
「しかもね、繁殖力が旺盛な上に人間が育ててる野菜も大好き。どんどん食べちゃうの。」
「ひぃ…!絶対倒さなきゃじゃん…!」
「それに野菜だけじゃなくて、果樹の樹を食べて枯らしちゃったり、田んぼの中の畦道を壊しちゃって、すぐ隣の畑を水浸しにしちゃったり…」
「えぇ…好き放題だ…」
絶望した顔のみくるに、先生が続ける。
「そんな困ったさんのヌートリア、私たちが対処するならハーブとジビエでちょっと減らせないかなって思っているのだけど」
ニコッと微笑み、サークル活動にしたらいいんじゃない?と促す上山先生。
「そうだね!!ヌートリアを減らそー!!」
みくるは楽しそうなことに率先して首を突っ込んでいった。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
いいねやフォロー、コメントで応援お願いします!




