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薪と、ハーブと、ジビエご飯!  作者: 不月風音
大学1年生編!後期!
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第45話 交渉


「820円って言っても、多分この価格で買ってもらうのは無理なんだけどねぇ」

「最低時給以下で働けってこと…!?」

「労基だ!!労基を呼べー!!!」

「違うよぅ、さっき企業努力って言ったでしょ?他の生産者は、安く育てる技術を持ってるのぉ」


 なるほど…確かに初心者の自分たちがあの環境で追いつくのは無理だ…。納得した。


「でもどうするの…?やっぱり無料?」

「極端だなぁ!?販売の基本、習ったでしょー?」

「あー!あれですね!ブランド化のやつ!」

「まず差別化を考えろってやつか」


 販売管理の基礎基本、ブランド化の最初の段階は、他の既存商品とどう差別化していくかを考える。

 カレールゥの市場に、普通のカレールゥを持ち込んでも注目を引く要素はない。

 そのため、思いっきり価格を安くしたり、○○調理師監修、タンパク質○g取れる!グルテン不使用!とか書いたりする。

 そうすると、それに惹かれた人が案外ファンになってくれるらしい。


「んー…でも、私たち何か特別なブランドでもなんでもないよ?」

「強いて言うならオーガニック…か?」

「そうですけど…ハーブのオーガニックって他にもやってるとこ多い気が…。一応無農薬でもないですし…」


 悩んでいると、マリーちゃんがふっふっふと笑う。なにか秘策があるみたい。


 皆でマリーちゃんの秘策を聞いて、翌週のバジル販売交渉に挑んだ。




「それじゃあピザにトッピングするバジル、価格交渉スタートよ!」


 今回はバジルの価格交渉。安く買いたい相手サークル、石窯サークル側と、なるべく高く売りたいハーフ&ハーブ側。


 まずは石窯サークルの人が話し始めた。


「来てくれてありがとう。でも、君たちの提示してくれた1株1000円はハーブにしては高すぎると思うよ。」


 今回の交渉では、キリよく1株1000円。ということで交渉をスタートしていくことにした。


「同じ大学内だし、700円くらいでもいいんじゃないかな?まあもちろん何もなしでってわけじゃないよ。ピザの試食を頼んだり、当日余ったらお昼ご飯として少しプレゼント!多少美味しい思いができると思うよ」


 えっ!ピザ食べれるんですか!?ぼたんが反応しそうになったところを睨みつけて静止。

 でも700円か。いいとこ突いてきてるな。普通ならそこまで下げられないから800円とゴネて手を打てる値段。

 しかし今回の目標は1000円を下げないこと。それを目標にマリーが話し始める。


「私たちとして提示させていただいた1株1000円は、安くないと思ってます。そもそも、今回のピザ作りに必要なバジルは多くても500g。スーパーで買ったら1万円くらいのはずです。」


 追って話していく。


「バジル10株から限界まで取ったら500gは確実に取れます。むしろ、足りなくなったらその場で途中で買い増せるんですから当日のメリットは大きいはずですよ」


 相手サークルが少し考える。確かに買い増せるメリットは大きい。軽量はどうせミスが起こるし、足りなくなる可能性を考慮したらこのサークルのバジルを買っておくべきかもしれない。


「とは言っても、味に大きな差がないっていうのはこちらとしても受け入れ難いな。初心者が作ったもの、を、プロが作ったものと同等以上の価格で買うのは難しい。800円だ。」


 マリーがニヤリ、みくるが煽る。その隙にぼたんが準備を始めるために一旦部屋の外に出る。


「じゃあ、一口で味の違いが分かったら1000円でも買ってくれますかー?」

「そこまで自信があるのなら良いよ。でも、大差なかったら800円で貰うね。」


 よし、味の勝負になった。マリーたちは勝ちを確信した。


 戻ってきたぼたんが相手の前に広げたのは、バジルの束を2つ。試食してみてくださいと促す。いただきます。と石窯サークルの面々が観察する。

 

「もちろん、先輩方なら見ただけでも違いが分かりますよね?」


 ひのきが更に煽る。それを聞いてムッとして食べ始める。


「んー…こっちのほうが萎れや褐変を起こしてないし、香りも強いね。食感も良い。」


 勝った。


「それ、うちで育てたハーブなんですよぉ」


 石窯サークルがザワつく。確かに私達も実験で食べた時は驚いた。何せ、プロが作ったバジルよりも圧倒的に、自分たちで育てたハーブの方が圧倒的に美味しく感じ。


「調べてみたんですけどねぇ、バジルの香りってとっても飛びやすいんですよぉ。褐変…黒ずんだら香りが弱くなるだけじゃなく、苦味も出てしまう。きっと前日にスーパーで買ってたら、最後にはどれも褐変しちゃってますよぉ」


 完全にこっちのペースだ。続けて話す。


「すぐに買い足せて、食味が良く、大学で育てたハーブだって宣伝もできる。1株1000円。どうですかぁ?」

「…わかった、その価格で買おう。」


 完敗。そんな雰囲気だった。


「でも、1株っていうのは少し反対させて欲しい。g単位での販売を希望したい。」

「…もちろん大丈夫ですけど…それはどうしてですかぁ?」

「1株から50gも取ったら、いくらこの時期のバジルでも弱ってしまう。少しでも長く収穫を楽しめるように、500gの葉を1万円でどうだろうか?」


 元々、1株から50g取る見込みで計算していた。だから充分考え通りの価格。


「なんでそこまで考えてくれるんですかぁ…?」

「私達も、というか、私達の方が1年長く植物触ってるんだ。葉を取りすぎたら株が弱ることくらい分かるよ。」


 Win-Winな交渉だったな!と握手を求める先輩方に、喜んで握手を返す。


 あーあ、勝った気でいたけど、先輩たちの方がやっぱ大人だったなぁ。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

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