第29話 山の歩き方
「元気に行こー!!頑張ろー!!」
山の…道?かどうか分からない…分からないけどなんとか木にしがみついて抱き寄せて、道無き坂を登り続ける。
ひのきのバイクは薮一さんが、俺に任しとき!クマが来ても触れさせんわ!と意気揚々と言ってくれたので、とっても不安に感じながら預けてきた。
あ、そういえば、私のバイク撃ったら…って話してたな。バイク乗ってるのかな。バイク仲間が出来るかもしれない!と、話しかけてみよう。
上を見上げると…あれ?居ない。え、見失った…?山の中で…1人…?ヒィ…!!
と思ったら50mくらい先にいた。
「なんでもうそんなに進んでるんですかー!?」
「ぬっはっはー!みんな遅いと置いてっちゃうぞ〜!」
頑張って食らいつこうと、4人で目を合わせて進んでいく。
木を掴む。木の根とかのでっぱりに足をかける。ぐっと力を入れて、両方とも体重を支えられると確認したら体重をかける。
それを一歩一歩、進む度に力を入れて安全確認。踏み外さないように登っていく。
4人とも話す余裕はなかった。1番前をひのき。その後ろに、マリー、みくる、ぼたんの順番で進んでいく。
ひのきはとにかく安全なところを。山には一応慣れてるつもりだから、最前列で安全確認。
その後ろを、あまり自信の無いマリーがついていく。ひのきが足をかけた一番安全なところを踏んで、前に進む。
その後ろではみくるがサポート。無限の体力があるんじゃないか…?ってことで、万が一マリーが体力切れしても支える役目。後ろから押したり、何気に1番体力を使うところ。
1番後ろはぼたんが歩く。かおりが行きたい場所はなんとなくわかる、また、後ろからみんなを観察して危ないところに行きそうになったら声をかける役目だ。
それぞれ4人とも別の役割、体力や性格にあった場所で協力し合って登っていく。森の静けさの中、4人の息遣いと葉が擦れる音だけが聞こえた。
「おー!みんなお疲れ!一旦休憩しよかー!」
かなり進んだところで、かおりが待ってくれていた。3人はもう無理…と言った感じで声なく座り込んだ。みくるは休憩の言葉にはーい!と元気に返していて超元気。すげーな…。
「あれー?もしかして疲れちゃった?もみじー、山で一緒に遊んでた頃忘れちゃったかー?」
「それでも………、疲れます…ってぇ…」
「そっかそっか!すまん!」
パンッ!と手を合わせて謝るかおり。悪気は本当にないんだろうな…と感じる。
「あ…あとどれくらい登るのぉ…?」
マリーが聞く。もう限界。降りるのも無理。そんな体力のなさを露呈していた。
「んー、本当はまだ折り返し地点ってとこだけど…夏だし無理せず降りよっか!」
まだ…半分…!?その言葉に絶望を感じたけど、とりあえず許して返してもららえそうだ。…でも、ここから降りるの…?
「休憩…というか、帰りに見に行こうとしてた場所があるから、そこ通って帰ってもいいかい?ちょっと降りたところにあるんだけど…」
降りれるならそれでお願いします…!息も切れ切れにみんなが話す。、
降りていくことに決まった。
こっちだよ、と案内されて、坂道を下っていく。本当に立っているのか不安になるくらい山の斜面と自分の向きが垂直じゃない。もうそろそろ並行になるんじゃないか?と思うくらいには横向きだ。
今度は木の根元に足をかけて降りていく。
少し降りたところで、何かが動く気配を感じた。
「ヒィ…!?なにかいる!?」
しー…。とかおりが静止。心を落ち着かせる。見てみ?と無言で指で合図するので、茂みからチラチラと覗いてみる。
そこには、見たことない動物。コーギーより少し大きいくらいの、謎の生き物がいた。
「あれ…なんの動物…?」
声を抑えてひのきが聞く。
「あれはねー、アナグマってやつだよ。見るの初めて?」
4人がコクリと頷く。
「かわいーよねー、でも、害獣だから今日は殺さなきゃいけない。」
え!?野生動物と戦うの…!?と、皆の気持ちを察したのか、もう少し説明するね。と続けてくれる。
「近くの木からワイヤーが出てるの、見える?」
コクリと頷く。
「あれ、括り罠ってやつ。アナグマの…右後ろ足に引っかかってるね。」
確かにワイヤーがくくりついている。
「今から殺す。もし見たくなかったら目をつぶったり、音聞かないようにしてね。」
殺す。悪口や嫌がらせ、ゲームで言ってる人は見たことがある。でも、初めて本当の意味での殺すって言葉を聞いた気がする。
よっしょいこと置いた背負子の中から長い棒の先にワイヤーが着いた道具。そして、長いバールのようなものを取り出した。
準備が整ったらすぐに飛び出して、ワイヤーが着いた道具。保定具のワイヤーを首にかけていく。
かおりが飛び出した瞬間アナグマは暴れ回る。攻撃してやる。殺してやる。そんな暴れ方。飛びかかり方だ。
まんまとワイヤーが首にかかり、締め付けられる。絞殺…ではなく、一定の距離を取るため、アナグマの間合いに入らないようにするための道具みたいだ。
保定が完了したことが分かると、すぐにバールを取り出し、振りかぶる。
「ごめんよ」
と1発。静かな森の中に、ゴッパァンというような、破裂音、聞いた事のない甲高い音が響く。
残響がなくなったあと、アナグマは地に伏していた。
「これが狩猟…か…」
「すごかったですね…」
「息するの忘れちゃってたよ…」
「怖かったぁ…。」
お疲れ様でした!と近付こうとすると、真剣な怖い顔で止められる。
「まだ近付いちゃダメ、ごめんね」
と、保定具で一定の距離を保ちながら背負子からナイフを取り出す。
喉元を一突き。頸動脈を掻っ切り、放血。最後に苦しんだような、抵抗するかのようなアナグマの断末魔が聞こえた。
「こいつら死んだフリするんだよー、待たせちゃってごめんよ!」
かおりの真剣な顔は、さっきまでの明るい笑顔に戻っていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
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ちょっと怖いお話でしたね。




