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薪と、ハーブと、ジビエご飯!  作者: 不月風音
大学2年生編!前期!
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第98話 春のハーブ2年生!


「季節の変わり目はハーブ選びだよぉ」


 1年で恒例となった、ハーブ選びの季節だ。


「大将!おすすめはなにかあるかい?」

「へいらっしゃーい、今年はねぇ、木のハーブが熱いよぉ」

「木のハーブ!?前に言ってたローリエみたいな!?」

「おー、そうそう、1個正解だよぉ」

「へー!見せて見せて!」


 わさわさと取り出して、ローリエを見せてくれる。

 

「あれ?どっかで見たことあるかも…?うーん…でも普通の葉っぱだからそんな気がするだけかな…?」

「いや、その感覚間違ってないかもよぉ」

「え?そーなの?」


 みくるの言葉にうんうんと頷き続けて説明してくれる。


「ローリエ、月桂樹とも呼ばれてるんだけど、オリンピックの象徴の木になってるんだよぉ」

「オリンピックかー!!確かに見たことあるかも!でもなんでローリエなの?」

「神話の話なんだけどねぇ、酷い由来があるんだよぉ」


 どゆこと?と興味津々に耳を傾ける。マリーがニヤッと笑いながら話を続ける。


「昔々あるところに、アポロン、エロス、ダフネという神々がおりましたぁ」

「和風な始まり方だね!?」

「アポロンはエロスを煽り散らかしました。子供の癖にキューピットの弓矢なんて使ってんじゃねーよwと」


 口をとんがらせて謎の声真似をするマリーにちょっと吹き出す。


「エロスは激怒したぁ」

「メロスー!!」

「エロスは恋に狂う金色の矢をアポロンに、求愛を絶対拒絶する鉛の矢をダフネに打ち込みましたぁ」

「わっ!?ダフネ可哀想!?」

「その矢のせいでダフネ大好きになったアポロンは、超絶ストーキングを繰り返して、ついにダフネを追い詰めるんだよねぇ。物理的にも精神的にも」

「ダフネ…可哀想すぎじゃない…?」


 ノってきたマリーは更に演技口調を強めて話す。


「お父様!私は木になってもいいので逃がしてください…!って、ダフネは懇願するのぉ」

「そこまで大嫌いなのね…」

「それでダフネは月桂樹の木になるのぉ」

「あらら…でもアポロンからは逃げられたんだ…よかった…」


 大変だよねぇと視線を落とすマリー。


「でもねぇ」

「まだ続くの!?」 


 間が空いたから、終わり♪ちゃんちゃん♪だと思ったらまだ続く。予想通りの反応で満足したのか、ヘッと笑いながら続ける。

 

「でもねぇ、アポロンは木になったダフネのことも大好きだったのぉ」

「金の矢の力恐るべし…だね…!」

「だねぇ。でもその矢の力のせいで大好きになったアポロンは、その木の…ダフネの葉をむしって頭に巻き付けたんだよぉ。これぞ勝者の証ー!って」

「…!?」


 マリーのニヤニヤが最高潮に達する。


「…でも、オリンピックとどう繋がるの…?」

「ダフネは月桂樹になったんだよぉ」


 …みくるがすごく嫌なことを察した。 


「勝者の証ー!って、オリンピックの勝者の証にもなったんだねぇ」

「えー…ダフネが…ダフネが可哀想だよ…」

「それもこれもアポロンがエロスを煽り散らかしたからだねぇ」

「アポカスめ!!最悪だー!!!」

「アポカスぅ…?」


 ダフネが可哀想すぎて、せめてこの月桂樹は大切に扱ってあげようと抱き抱える。すると、


「お買上げありがとうございまぁす」

「はっ!?おいくらですか!!?」


 今まで苗で買ったものはローズマリーしかない。しかもローズマリーちょっと高かった。恐る恐る聞いてみる。


「2000円になりまぁす」

「えっ…!?」

「返品不可でぇす」

「悪徳商法めっ!!」


 まあ買うつもりだったしそのまま矛を収める。


「ねーねー!じゃあもう1つは?もう1つはなにー?」

「気になるぅ?次はねぇ、これぇ」


 取り出したのは、1mmくらいの小さな可愛い葉が大量に着いた木の苗。 


「え!なにこれかわいい!!」

「ふふ、これはねぇ、マヌカってお名前なの」

「マヌカって神様が木になったの…!?」

「大丈夫、ここに神はいないよぉ」


 アポカスから抜け出せていないみくる。宥めてマヌカの話を進める。


「マヌカはねぇ、マオリ族っていう民族の言葉から由来が来てるんだってぇ」

「マオリ族がエロスを煽ったの…?」

「そこから離れてぇ…!?」


 まあいいや、いつか離れて戻ってくるだろう。そう判断して話を続ける。


「そこでは、癒しの木とか、復活の木って意味で、ヌカって呼ばれてたらしいんだよぉ。そこからマヌカに訛ったのかなんなのか、よく分かんないけどマヌカって呼ばれるようになったみたいだよぉ」

「月桂樹につければダフネが復活…!?」

「アポカス来るからやめてぇ?」


 みくるに神話は早かったかな。いや神話が早いってなんだよ。


「でもねぇ、お茶にして風邪薬にしたり、樹液をキズぐすりに使ったりして、癒しの木って名前の通りの利用をされてたんだよぉ」

「へー!すごいね!!」

「あとはねぇ、ティーツリーって呼ばれたりもしてるよぉ」

「え!もしかしてあれ?化粧水とか美容液でよくある…!」


 もしかしてハーブで美容ができる…!?夢みたいな話にみくるが目を輝かせる。


「残念ながら違うらしいよぉ。私も気になって調べたんだけどぉ、美容の方はメラルーカって植物みたい」

「あらら…そっかー…」


 ガクッと肩を落とすみくる。でも、と補足してあげる。


「でも、ハーブで美容、面白そうかもねぇ」 

「やっぱり!?いい匂いになりそうだよね!」

「前に言われたもんねぇ」


 もしかしたら美容グッズを作る時が来るかもしれないな。そう思いながら、最後の売り文句を飛ばす。


「ちなみにぃ、マヌカって多分聞いた事あるはずなんだよねぇ」

「え?初めて聞いたよ?」

「いや、絶対聞いたことある…というか私はみくるの口から聞いたことあるよぉ」

「絶対そんなことないよ!?」

「じゃあ思い当たったら買ってねぇ」

「絶対ないのでタダで貰っていきます!!!」

 

 とんでもねぇ値切り方しやがって…。でも、絶対に言っていた。確信を持って追撃だ。


「だってぇ、みくる風邪気味の時何舐めるのぉ?」

「のど飴!」

「なんのぉ?」

「マヌカハニー!!」


 マリーがほれ見ろという顔で笑う。


「あっ!マヌカ!!!」

「まいどありぃ」

「くっそー!!!!!!」


 ローリエの苗とマヌカの苗。合わせて5000円を支払ってお店を後にした。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

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