↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薪と、ハーブと、ジビエご飯!  作者: 不月風音
大学2年生編!前期!
PR
121/129

第95話 命の軽さ


  月曜日、朝の見回り。


「んー…今日もかかってませんね…」

「やっぱり遠くから眺めるだけじゃだめなのか…?」

「そんなんで変わるわけないじゃないですか〜」


 笑い合いながら、毎日の見回りスポットから罠を眺める。


「あ、でも餌のチェックをしに行くのはアリかもしれませんね!」

「そっか、腐ってたら来ないもんな」


 バイクのサイドスタンドを立てて、バイクから降りる。

 スタンドを立てるまでは自転車とそっくりだけど、降りた瞬間グググッと車体が沈み込むのにぼたんはまだ慣れない。


 ひょいひょいと慣れた様子でスタンドを立てて駆け出していくひのきに少し尊敬も感じる。


 バイクと一体に!って早く感じてみたいです!



「早く来なよー!」

「はーい!」


 キャベツの残渣。箱罠に仕掛ける餌。それを持ってひのきの後を追う。


「この3日間でキャベツが溶けちゃってるみたいなんだよ」

「あらら、本当ですね…そりゃ入らないわけです…」

「腐ったキャベツも食べるくらい悪食ならな〜」


 んー…ぼたんなら食べるのか…?

 

「そ…それは流石に私でも食べませんよ…?!」

「だよなー!安心した!」 


 ちょっと不安な反応だった気がするけどまあいっか…。多分食べないんだろう…。


 キャベツを設置し直した。ついでにちょっとだけ周辺にキャベツを撒いておいてみた。


「お腹いっぱいになっちゃうかな?」

「私なら大丈夫ですよ!」

「地面に落ちたもん食うなよ?」

「はい…」


 ぼたんが食べ始める前に、人間の匂いをなるべく残さないように、急いで立ち去った。




 その日の夕方。


「ごめんねぇ、私たちの罠設置に着いてきてもらっちゃってぇ…」

「いいよいいよ!私達も見回りを兼ねてだし!」

「ひのきさんはバイクに乗れる理由があるならなんでもいいんですよね〜!」

「違うわい!見回りだもん!!」


 インカムで聞こえてくるわちゃわちゃもいつものBGM。

 よく聞こえるのは…ひのきちゃんが高いやつを買ってくれたからなのかな…!?

 恐れ多くてまだ誰も値段を調べていない。


 

 そろそろだよ〜とひのきの声。周りの風景を見れば、というか、もう地図なしでも辿り着けるくらいに道を覚えられた。


「あそこの罠…閉まってる!?」

「ほんとだ!?なんか捕れたのか!?」

「枝が引っかかってるだけかも知れないよぉ」


 とりあえず近付いてみる。箱罠の位置が、昨日までよりも少し沈み込んでいて中が良く見えない。


「確かあれは…私の箱罠です…!」


 初の自分たちでの捕獲。その第一人者になれたかもしれない。ぼたんの胸が高鳴る。


 近付いてみると、茶色い何かがガタガタっと動いた。



「これ…ヌートリアだ!!!」

「おぉー!一番乗りだねぇ!」

「わーい!!やりました!!」

「今夜はヌートリア鍋だな!!」

「あんま美味しそうに聞こえないねぇ」


 初の捕獲に喜ぶ4人。


「よーし、じゃあ持って帰ろー!」


 みくるがそう言った瞬間、みんなの頭に疑問が浮かぶ。


 どうやって?


 答えはみんな知っている。でも、やるのは初めて。


「誰が殺す…?」


 ひのきが聞く。聞くと言うより、ボソッと呟いた程度だったけど。他の3人の耳には十分届いた。


「殺したことは…なかったねぇ…」

「かおりちゃんに任せっぱなしだったもんね…」


 普段の狩猟。基本的に罠の設置者本人以外が、狩猟免許未保有者が殺すことはご法度だ。

 だからいつも見ていただけで、命を奪ったことは未だ、ない。


「自分たちがやるってなると…怖いものですね…」


 かおりが罠にかかった獣を殺す。その記憶を思い出す。

 どうしてたっけ、どうやってたっけ。

 どんな気持ちでやってたんだろう。


 ぼたんの手は自然とスマホに、かおりに電話をする画面に辿り着いていた。


「聞いてみよっか」

「…そう…ですよね」


 電話をかける。発信音。5コールくらいすると、かおりが出た。


「—もーしもしもし!今度はどしたのー?」

「ヌートリアを捕獲しました」

「—おー!おめっとー!!ようやったね!!」


 ここでかおりが違和感に気付く。

 

 あー…この子達、喜ぶ雰囲気じゃないな。まあ、そうだよね。


「—殺すの、怖いでしょ?」


 言い当てられて、少し言い淀む。かおりと一緒の時は、ただ楽しんでいただけだったから。


「ごめんなさい…」

「—なーに謝ってんのみくるちゃん!?大丈夫大丈夫!」


 かおりが明るく元気付けようとしてくれてる。頑張って話そうとしてくれてる。でも、命を奪うってことの責任感が大きすぎて、瞳が潤む。


「—どうした?あの子ら泣かせてんのか?」

「—違うわ!慰めてんのー!!」


 電話口で言い争う声が聞こえてくる。かおりさんと、薮一さんだ。殺すのが怖いんだってさ。と、ここまでの流れをサラッと説明。すると、電話代われと、半ば無理矢理スマホを取り上げた。


「—殺すのが怖いか?」

「はい…」


 誰の返事が届いたか分からない。でも、そうかそうかと言葉を返して続ける。


「—俺が思うに最近の子らは…命を大事なもんだと、重く捉えすぎてんだよな」

「重く…捉えすぎてる…って?」


 辛うじてひのきが聞けた。

 意外な言葉に4人とも固まる。軽くじゃないの?

 一呼吸置いて続ける。


「—その言葉の通りだ。最近の子はいい子ちゃんばっかりになっちまったからな。」


「—お前らは、もっと命を軽く考えた方がいい。」

ここまで読んでくれてありがとうございます!

いいねやフォロー、コメントで応援お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。