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彩眼の次男〜感情が色で見える次男副団長が、恋も政変も全部見えてしまって巻き込まれる〜  作者: まるちーるだ
番外編 娘の春と父の地獄 ~娘の春より先に父の胃が死ぬ~

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五節 父の独り言


昌澄くんには悪かったが、泡を吹いて気絶し、初対面は終わった。


慌てた昌澄くんが私に治癒魔法を掛けてくれたらしいが、精神的ダメージに『朝比奈の水』は効かないらしい。

おかげで、今はすこぶる身体が軽いが。


アレが婿に来る?

娘よ、正気か?


聞き忘れたが、婿入りする気満々らしい。


もう諦めた。

……いや、諦めるしかなかった。


その夜、私は妻の墓前で一人酒を飲んでいた。


妻の墓は見晴らしのいいところにした。

空が似合う妻だったから、王都を見渡せるこの墓地を選んだ。

刻まれた名前は、二十四年の月日でだいぶ丸くなったように思える。


妻は、娘を産んだことにより、魔力欠乏症となって、亡くなった。


私の『血統魔法』にそんな危険があるなど知らなかった。

あの時、もっと早く気づいていれば、助けられたかもしれないと何度も悔やんだ。


「よお、時壱」


ドスッと、妻の墓前に酒瓶を置いたのは懐かしい人だった。


「春野団長……」


「あら、今は朝比奈よ?」


「ふふっ、失礼、日葵さん」


朝比奈 日葵。

元第三騎士団の団長で、妻の上司。

そして昌澄くんの母。


「昌澄の話で気絶したって?」


「破天荒すぎるでしょう、お宅の次男」


「あれは完全に旦那の血だ」


「ええ、顔は日葵さんそっくりでしたがね」


「よく言われる」


そう言いながら、日葵さんは酒瓶を開けてグラスを手渡してきた。

注がれた酒は、妻が好きだったロゼワイン。


「言いたくないけどね、千歳ちゃんが昌澄と結ばれるのは、将来子どもを産むことまで考えれば、相性はいいと思う」


「……妻のことですね?」


「事故と言えば事故。でも防げたかもしれない事故」


「……ええ」


「だから、同じことを起こさせないためにも、昌澄に話をして欲しい。あの子は研究肌だ。時壱が話せば、原因を徹底的に調べて、千歳ちゃんに同じ思いをさせないはずだ。うちの息子と腹を割ってくれ」


そう言った日葵さんは立ち上がった。

残ったロゼのワインの瓶を傾けて、妻の墓石を濡らす。


「時壱、私の息子とお前たちの娘が結ばれるの、実は嬉しいからな」


ニッと笑いながら帰っていく日葵さんに思わず笑った。


「やっぱり格好いいな、春野団長。……お前が憧れていた人の息子と、私たちの娘が結ばれるのか」


ぐいと、注がれたロゼワインを飲み干した。

甘さのあるその味は、あまり好きではない。

でも妻はこの味が好きだった。


――そして千歳も。


「最高の縁だな」


ただ、そう言った瞬間に思ってしまった。

私が振り回された大厄災の息子でもあるんだった、と。


……それでもまあ、悪くない相手だとは思う。


思う、のだが。


――やはり、悪夢だ。




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